第26話 0.02%を越えて/世界との共存
あの日以来、妹は無事だ。
だが、0.02%の奇跡を踏み抜いた代償は、体だけでなく心にも残っている。
世界は、俺を無理に消そうとはしないが、常に監視しているかのようだ。
息をするたび、微かに緊張が胸に残る。
◆
朝、キッチンで朝食を取りながら、妹は何気ない会話をしている。
「お兄、昨日の夜、寝れた?」
「……ああ、少し」
本当は、昨日の代償を思い出すと、胸が痛む。
だが、笑顔の妹の前ではそれを見せるわけにはいかない。
◆
通学路。学校の廊下。友達との会話。
すべてが、昨日までの戦いの続きに見える。
だが、俺はもう知っている。
小さな干渉が、積み重なれば世界に影響を与えることを。
そして、その力は恐ろしいほど脆いが、確実に存在することを。
――俺は異物だ。
世界の規則から外れた存在。
だからこそ、妹を守ることができた。
◆
放課後、医師からの連絡はもうない。
あの診察室も、もしかしたらもう存在しないのかもしれない。
それでも、教えられたことは忘れない。
「踏み込めば代償は増える」
「君は例外だ」
例外――それが、俺たちの生きる道の証だ。
◆
夕暮れ、妹と並んで歩く帰り道。
「お兄、なんか元気だね」
「そうかな」
答えは簡単ではない。
だが、心の奥では、確かな自信が芽生えていた。
0.02%の奇跡を越えた者は、もう一歩先へ進むことができる。
――世界と完全に対立することはできない。
しかし、共存することならできる。
俺たちの手で、妹の未来を、確かなものにしていく。
夜空に星が瞬く。
無数の光の中で、0.02%の未来が確かに存在している。
「守る、ずっと――」
小さくつぶやく声が、静かな夜に溶けていく。
妹の笑顔、日常、希望。
それを失わない限り、俺は戦い続ける。
世界の意思と折り合いをつけながらも、俺たちは生きていく。
0.02%を越えた未来。
それは、俺たちのものだった。




