第24話 世界の最終攻撃/主人公の極限
夜の街は、静まり返っていた。
だが、俺の周囲だけは異様に重く、空気がねじれている。
――世界が、本気で妹を消しに来ている。
◆
帰宅途中、目に映る景色がわずかに歪む。
街灯が点滅し、歩道の線が波打つ。
空気の中に、無数の小さな障壁が生まれているようだった。
「……くそ」
声にならない声が漏れる。
足が重く、腕の感覚も鈍い。
――0.02%の未来を守るための代償は、ここで限界に達しつつある。
角を曲がった瞬間、現実が一瞬凍りついた。
妹の前に、大きな障害物が、空間の歪みに浮かんでいた。
――昨日までの小さな干渉とは比べ物にならない。
これは――世界の“本気”。
◆
反応は、身体より先に頭に届く。
「来る!」
足を踏み出すと、空間の歪みが鋭く跳ね返り、胸に痛みが走った。
手を伸ばす。
だが、腕が鉛のように重く、動きがもどかしい。
視界の端で、妹が足を止め、恐怖で固まっている。
「――行け!」
意識を最大まで集中させ、世界の干渉に逆らう。
空気の流れが微かに変わる。
倒れそうな物体は、わずかにずれ、妹の体をかすめることなく通り過ぎた。
その瞬間、胸の奥で何かが弾ける。
痛み、疲労、吐き気――代償が一気に襲う。
だが、俺は立ち上がる。
――倒れるわけにはいかない。
◆
帰宅後、両手を机に置き、全身の震えを感じながら思う。
今日の代償は、昨日の何倍も重い。
世界は、俺たちを諦めてはいない。
それでも、守れた。
妹の寝顔を見つめる。
変わらない、柔らかい呼吸。
――これだけで、今日の戦いは価値があった。
しかし、心の奥底で知っている。
0.02%の未来を掴むには、まだ代償が足りない。
そして、世界の干渉は、ここで終わらない。
夜空に目を向ける。
闇の向こうに、世界がじっとこちらを見据えているようだった。
――限界まで削られても、俺は戦い続ける。
妹が生きている限り、立ち止まることはできない。




