第23話 医師の真意/0.02%の秘密
翌日、大学病院の奥の古い診察室。
扉を開けると、冷たい空気が背中を撫でた。
――世界の意思に踏み込む前に、医師の言葉を聞かなければならない。
「来たね」
医師は椅子に座ったまま、淡々と俺を見る。
「……あの、昨日のこと、見てたんですか?」
問いかけると、医師は軽く微笑んだ。
「君の行動は、全部わかっている。代償も、成功も、すべてだ」
俺は深く息を吐く。
「0.02%……その数字、本当の意味を教えてほしい」
医師は、ゆっくり立ち上がった。
「0.02%は、希望の確率だ。だが、単なる数字ではない」
診察室の薄暗い光の中で、医師は説明を続ける。
「世界は、矛盾を嫌う。だから、君が妹を守ろうとすると、別の形で彼女を死に導く」
「……それって、やっぱり絶望じゃないですか」
「絶望でもある。しかし、君は例外だ」
例外。
その言葉に、俺の胸の奥がざわつく。
「君がいることで、0.02%の奇跡が生まれる。
世界は君を消そうとするが、完全には消せない。
なぜなら、君が“異物”だからだ」
異物。
――俺は世界の規則から外れた存在。
だから、代償を背負いながらも、妹を守ることができる。
医師は続ける。
「ただし、覚えておいてほしい。踏み込めば踏み込むほど、代償は増える。
0.02%は薄く、ゼロに近い数字だ」
俺は黙って頷く。
代償の重さも、世界の意思も、全部知っている。
でも、それでも――
「守る。妹を、絶対に」
医師は何も言わず、ただ静かに俺を見つめる。
その視線には、警告と期待が混ざっていた。
診察室を出ると、空は曇っていた。
昨日までの青空とは違う、重く、低い空気。
0.02%。
希望か、罰か。
答えはまだ出ない。
でも、確かなことが一つある。
――俺が動けば、世界は必ず反応する。
そして、その代償を俺は背負うことになる。
それでも、俺は進む。
妹を救うために。




