第20話 世界の攻撃がさらに激化
夜が深まるにつれ、空気が重くなる。
窓の外の街灯の光も、いつもよりぼやけて見える。
息を吸うだけで胸が詰まり、足元が揺れる。
――世界が、全力で俺を押し戻している。
◆
翌朝、妹と一緒に学校に向かう途中、異変はすぐに現れた。
歩道に置かれた自転車が、突然倒れる。
倒れる音が、遠くでなく、まるで俺の耳元で響いたように錯覚する。
妹が躓き、転びそうになった瞬間、咄嗟に手を伸ばす。
だが、体が重い。
腕が思うように動かず、足の感覚も鈍い。
――代償は昨日よりも確実に増している。
「お兄……!」
妹の叫びが、恐怖と困惑を混ぜて響く。
俺はそれを振り切り、手を差し伸べる。
触れた瞬間、胸の奥に鋭い痛みが走る。
全身が熱を帯び、頭の中で何かが弾けた。
――0.02%の未来を守るために、世界は全力で阻止する。
そして、俺の存在そのものを削ろうとしている。
◆
放課後、机に向かってメモを広げる。
今日の出来事を整理し、パターンを分析する。
倒れた自転車、転びかけた瞬間のタイミング、周囲の風の流れ――
すべて、世界が介入した痕跡だ。
「踏み込みすぎると、確実に削られる」
医師の言葉が頭に蘇る。
だが、踏み込まなければ妹は死ぬ。
天秤は完全に崩れている。
希望と代償が、互いに激しくぶつかり合う。
◆
夜、妹が寝室に入る前に、俺は小さく呟いた。
「……大丈夫だよ」
嘘でも、力強く言うしかない。
世界の修正が彼女に触れる前に、俺が盾になる。
ベッドに座り込み、手の震えを抑えながら思う。
今日の代償は、昨日以上だ。
明日はもっと激しいかもしれない。
それでも、俺は前に進むしかない。
0.02%の未来。
希望は薄く、代償は重い。
だが、守るために踏み込むしかない。
――限界まで削られても、まだ戦う。
妹が生きている限り、俺は立ち上がる。




