第19話 妹が危険に晒される
夕暮れの光が、街を赤く染める。
俺は妹と一緒に帰る道を歩いていた。
でも、胸の奥がざわつく。
――今日、何かが違う。
◆
角を曲がった瞬間、視界の端に黒い影。
一瞬、妹の存在が揺らいだ。
「え……?」
妹が立ち止まり、足元を見下ろす。
世界が“干渉”している。
空気が歪み、風の流れが異常に重い。
――俺が前に出なければ、妹は確実に危険にさらされる。
咄嗟に手を伸ばす。
だが、体が重く、動きが鈍い。
――0.02%の未来で踏み込む代償が、今、形を変えて現れた。
「お兄!」
妹の声に反応し、やっと腕を掴む。
世界が応答し、空気が歪む音が耳を打つ。
まるで、世界そのものが俺たちを押し戻そうとしている。
◆
その瞬間、胸の奥に鋭い痛み。
手足の感覚が薄れ、視界がわずかに揺れる。
――代償だ。
世界の修正が、俺の存在を削りに来た。
妹を守るために踏み込むたび、確実に何かが失われる。
昨日までは漠然としていた“代償”が、今は鮮明に感じられた。
「大丈夫……?」
妹の声が、いつもより少し不安げに震えている。
「……ああ、大丈夫」
声を強くして答える。
本当は、体も意識も限界ギリギリだ。
でも、守るために踏み込むしかない。
◆
帰宅後、ベッドに座り込み、頭を抱える。
ペンを握る手も、呼吸も、すべてが微かに震えている。
昨日までは戦略を考える余裕があった。
今日は、それすらままならない。
だが、妹は目の前で笑っている。
生きている。
守れたのだ。
――0.02%の未来を生きるということは、
小さな勝利すら、命を削る重さを伴う。
その夜、夢の中で、世界が囁いた。
「君が踏み込むたび、代償は増える」
瞼を閉じ、俺は誓う。
どんなに削られようと、どんなに痛もうと、
妹を守るために、前に進むと。
0.02%。
その数字は、希望であり、罰でもある。
俺は、それを背負いながら、まだ戦い続ける。




