第18話 世界の攻撃が加速する
朝、カーテン越しの光が淡く差し込む。
だが、昨日までの穏やかな光とは違う。
空気が重く、胸が締め付けられる。
――世界が、昨日よりも本気で攻めてくる。
俺は立ち上がり、机に向かう。
ペンを握る手はまだ震えていたが、昨日の経験が頭に刻まれている。
――動けば代償。動かなければ妹が危険。
踏み込むしか、選択肢はない。
◆
学校に着くと、すぐに違和感が走った。
通学路の空気、友人の視線、すれ違う風の流れ――すべてが微妙に歪んでいる。
「……まただ」
妹が歩く背中に視線を向けると、彼女の影が一瞬だけ、別の動きをした。
まるで、世界が「こっちへ進むな」と警告しているかのように。
俺は咄嗟に反応し、足を止め、距離を空ける。
その瞬間、胸の奥が強く冷えた。
――代償だ。
0.02%の未来を生きる代償が、今、目の前で積み上がった。
◆
放課後、俺は大学病院に向かう。
医師に確認するためではない。
戦略を練るためだ。
どこまで干渉できるのか。どこまで動けば、妹を守れるのか。
診察室に入ると、医師はすぐに視線を向ける。
「踏み込む気だね」
「はい」
短く答える。
言葉以上に、決意を込めた。
「0.02%の未来は、君が試すものだ」
医師は淡々と語る。
「だが注意しろ。世界は容赦なく、君の行動に反応する」
その言葉が、昨日よりも重く響いた。
――俺は今まで、ただ守ろうとするだけだった。
だが、守るだけでは、0.02%の未来を踏み抜くことはできない。
◆
帰り道、頭の中で戦略を組み立てる。
1.妹の行動パターンを把握
2.世界の“修正反応”を予測
3.最小限の干渉で最大の効果
――簡単ではない。
世界は生き物のように動き、俺の一挙手一投足を観察している。
しかし、覚悟はできている。
代償は受け入れる。
消えかける存在も、薄れる意識も、すべては妹を守るため。
◆
その夜、ベッドに横たわると、妹が小さな声で言った。
「お兄、今日は……変だった?」
答える前に、俺は深呼吸する。
「ううん、何も変わってない」
嘘だ。
でも、今はそれでいい。
世界の修正を誘発させないためには、
嘘も、踏み込む力の一部なのだ。
瞼を閉じ、意識を集中する。
明日、どの道を選ぶか。
それが、0.02%の希望を生かす唯一の鍵だ。
――世界の攻撃は止まらない。
だが、俺もまた、戦い始めた。




