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第17話 世界の攻撃、初めての代償

放課後の帰り道、空は異様に低く、灰色に沈んでいた。

風は冷たく、木々の葉を容赦なく揺らす。

――何かが、動き始めている。


俺は無意識に妹の手を握りしめた。

「お兄、どうしたの?」

その小さな声に、心臓が跳ねる。

守らなきゃ。守らなきゃ、絶対に。



最初の“異変”は、駅のホームで起きた。

人混みの中、妹が足を止める。

「……あれ?」

視線の先には、誰もいないはずの黒い影。


一瞬、心臓が止まった。

世界が“そこ”に干渉している。

――俺を、妹を分けようとしている。


「大丈夫?」

声をかけるが、言葉は届かない。

空気が重く、呼吸が浅くなる。

腕が震え、手の感覚が薄れていく。


それが、最初の代償だった。

0.02%の希望を生きる代償。

身体の一部が、確実に“薄れる”。

意識がわずかに霞む。



帰宅後、机に座る。

ペンを握る手が震えている。

紙に文字を書くと、インクが滲む。

書き直そうとしても、文字は勝手に歪む。

――世界が、干渉している証拠だ。


「俺が……何をしても、止まらないのか?」

小さく呟く。

答えは、机の上の時計にも、カーテンの揺れにも、空気の厚みにも、すべてに現れていた。



夜、妹の部屋の前で立ち尽くす。

彼女はまだ笑っている。

無意識の平穏を保とうとしている。

だが、世界はもう、その平穏を脅かしている。


0.02%の未来を生きるためには、

俺は動かなければならない。

でも、動けば動くほど、代償は積み上がる。


――存在感、体力、意識の微細な部分まで。

昨日まで感じなかった、胸の奥の冷たさ。

それは、世界が俺の“踏み込み”に反応している証拠だった。



ベッドに横になる。

手が震え、息が浅い。

文字通り、体の一部が“消えかけている”感覚。

でも、妹は生きている。

生きている限り、俺はまだ戦える。


瞼を閉じると、暗闇の中で声が聞こえる。

「お兄……?」

夢か現か、妹の声。

守らなければ、消えてしまう。


――0.02%の希望は、決して安泰ではない。

踏み込むほど、世界は本気で“削りに来る”。

そして俺は、まだその代償の全てを理解していない。


明日、どこまで踏み込めるのか。

その答えは、明日にならなければ分からない。

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