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口調は少しふざけているけど、その笑顔は相変わらず、本当に魅力的な笑顔だった。
……ゆうこ。木花夕子。このはなゆうこちゃん、……か。
この女の子の名前は夕子ちゃんというのか。
ゆうこ。ゆうこちゃん……。
もしかしたらこの女の子の名前を聞けば、この女の子のことを私はなにか思い出すかもしれないと、草子は少しだけそう思って期待していたのだけど、夕子の名前を聞いても、草子はなにも思い出すことはなかった。
そのことが草子は少し、(いや、かなり)残念だった。
それに草子は、(その顔や姿形や声と違って)……その名前にはまったく聞き覚えがなかった。
……やっぱり私の思い違いなのかな? (私と夕子ちゃんは別にどこかで出会ったりしていないのかもしれない)記憶喪失といい、私は今、自分で思っている以上にかなり混乱している状態にあるのかもしれない。
森の中で偶然出会ったすごく綺麗な女の子を見て、その女の子にどこかで出会ったとこのような、あるいは運命のようなものを感じてしまうくらいに……。(あるいは、生まれたばかりの赤ん坊が初めて見る動くものを自分の母親だと勘違いしてしまうみたいに、記憶を失った私は、それから初めて出会った人間である夕子ちゃんに対して、あるいは『運命のような気持ち』を感じているのかもしれない)




