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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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5歳COO、爆誕

## 125話 5歳COO、爆誕


炎の鍋亭2号店。

さっきまで共有会で、みんなの意識はこちらに向いている。


〈……よし、ちゃんと場ができた〉


俺は深く息を吸って、はっきりと声を出した。


「炎の夜明け商会はこれからもどんどん大きくしようとしてる。

 特に人材。エステル学舎で学んできた優秀な人たちを、20人くらい採用したいと思ってるんだ」


俺の声に、店内の空気が少しだけざわめく。


マルタのおっちゃんが豪快にうなずいた。


「おう、そのためにぱんふれっとを作ったんだったな!」


「そう! 本当に助かったよ、おっちゃん」


そこまで言ったところで、胸の奥がちくりとした。


だからこそ――今日、どうしても伝えたいことがある。


「それでね、新人の受け皿を考えてて気づいたんだ。

 今の炎の夜明け商会は、みんなの善意で回ってるところが多すぎるって」


その瞬間、何人かがきょとんとした顔になった。

でもクララは満面の笑みで胸を張る。


「お手伝い、これからもいっぱい頑張るよ!」


サラが鼻で笑う。


「当たり前じゃないの」


〈そういうことじゃないんだよな……〉


俺はゆっくりと言葉を重ねた。


「もちろん、みんなが助けてくれるのはめちゃくちゃうれしい。

 でも、善意に頼るだけじゃ組織は大きくできない。

 それぞれ、やりたい人が責任を持って動ける仕組み――つまり『箱』が必要なんだ」


テトが小さく首をかしげる。


「はこ? ロジスティクス主任みたいな?」


「そう! まさにそれ」


ここからが本題だ。


「これから役割の箱を説明するから、興味がある人はぜひ手を挙げてほしい。

 ちょっとイメージしにくいと思うから、順番に説明するね」


---


俺は黒板に大きく書いた。


『役員候補』


「まずは、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)。

 会社のトップで、方向性と理念を決める役割。これは代表人の俺がやる」


組合長が腕を組んだ。


「しーいーおー……まあトップならライム君で間違いないだろうな」


「次に、COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)。

 CEOの決めたことを実行に落とし込む、現場の総責任者」


「次に、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)。

 数字を握って、投資やお金の流れを判断する人」


「次は、CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)。

 新しい装置、工法、機械……そういう技術面の責任者」


「CPO(Chief Product Officer:最高製品責任者)。

 リバーシやランチボックス、酒造……炎の夜明けの製品を、どんな形で世に出すかをデザインする」


「CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)。

 宣伝や販売戦略のトップ」


「CHRO(Chief Human Resources Officer:最高人事責任者)。

 人の採用、育成、給与を扱う、人の責任者」


「CLO(Chief Legal Officer:最高法務責任者)。

 契約やリスク、法務全般を見る役割」


「CAO(Chief Administrative Officer:最高管理責任者)。

 組織運営の仕組みづくりの総責任者」


そこで一度区切って、みんなの顔を見渡す。


「ここの役に名乗り出てくれる人には、基本の給金として金貨3枚を考えてる。

 それに加えて、売上に応じて分配もする予定だ」


「次に、事業ごとの責任者も置きたい。これはこれからどんどん増えていく箱だね」


俺は黒板に、もう一列書き足す。


「今は、物流事業、ランチボックス事業、リバーシ事業、酒造事業。

 この4つの事業責任者を、それぞれ金貨2枚で考えてる。

 組織的には、さっきのCOOの下にぶら下がる感じだね」


「この役は、数字や現場の動きの顔になる人。

 やってみたいとか、興味があるところがあれば手を挙げてほしい。

 その上で、一人一人とちゃんと面談して決めたいと思ってる」


ここまで一気に言い切ったところで、みんなの顔がぽかんと固まっている。


〈……だよな〉


レノが小さく笑った。


「そこまで考えていたんですね。でも、ライムさんが割り当てるのでは?」


「ううん。やる気のない人が役についても意味がない。

 手を挙げてくれた人の中から決めたいと思ってる」


そう言った瞬間、クララが迷わず手を挙げた。


「ナンバーツーはどれ?」


俺は吹き出しそうになりながら答えた。


「責任の重さに優劣はないけど……まあ、COOかな」


クララは跳ねるように手を挙げた。


「じゃあ私、しーおーおーやる!」


店内が「えっ……!」とどよめく。


ハインズさんが慌てた。


「こ、子どもにできるわけないだろう!」


「そんなことないよ。俺だって5歳だしね。

 それに……俺も、クララはCOOだと思ってた」


「やった! ナンバーツー!」


満面の笑みで飛び跳ねるクララ。

場の空気が一気に明るくなる。


〈……クララなら、現場の空気を読む力も、人を動かす雰囲気もある。適任だ〉


---


クララがその勢いのまま尋ねる。


「じゃあナンバースリーは?」


「数字の観点から決定を下す責任者だから……CFOだね」


クララは迷わずレノの腕をつかんだ。


「レノだね!」


「わ、私が……そんな大役を?」


「レノ、私なんかじゃないよ。というかレノしかできない。

 俺からお願いしたいくらいだよ」


レノは静かに深呼吸した。


「……はい。ナンバースリーとして全力を尽くします」


〈真面目すぎて泣けてくるよ〉


---


ここから、次々に手が挙がった。


ガレンさんがまっすぐ手を挙げる。


「私はサント工場をやらせてください!サントエールの歴史を繋ぎたいです」


「もちろん! 酒造事業の責任者をお願いしたいです!」


エッタさんが続く。


「私はランチボックス事業。やらせてもらいたいわ」


「うん、そのつもりだった!」


サラが勢いよく手を挙げる。


「私はしーえいちあーるおーね。任せてちょうだい!

 ゴードン、あんたはまとめ役やりなさい!」


父さんが腕を組んだままうなずく。


「ああ。大人として責任を取る必要があるな。

 その、しーえーおーとやら、俺がやろう」


「母さんはCHRO,父さんはCAOね。2人ともお願い!」


ミナが、おずおずと手を挙げた。


「あ、あの……私、絵でみんなの役に立ちたい。昔は『絵で食べていけるなんて無理』って言われてた。でもこの前のぱんふれっとでみんなすごいって言ってくれて。

 しーぴーおーって、私にもできるかな」


「もちろんだよ。

 ロゴも、リバーシのPOPも、ミナがいなかったら今の形になってない。

 ぜひお願いしたい!」


ミナの顔がぱっと明るくなる。


---


そして――


「おい、小僧」


重い声が響いた。

カチさんだ。


「俺がお前のところの役職に名を連ねてもいいのか?」


「責任者だから、本当は従業員にお願いしたい形なんだけど……」


カチさんはゆっくりと言った。


「……ワシは、お前に出会って鍛治の楽しさを思い出せた。

 機械も、金型も、プレス機も……どれもワクワクした。

 鍛冶屋はラークや弟子たちでどうにでもなる。

 しーてぃーおー、やらせてくれ」


ラークさんが叫んだ。


「親方!? お、俺、もっと親方から学びたいのに……!」


俺は慌てて二人を見る。


「そこは後でやり方を一緒に考えよう。

 でも、ありがとうカチさん。本当に心強いよ!」


〈王国一の鍛冶師がCTO。これは……反則級だ〉

鍛冶屋をどうするか、ここはしっかり整理しなきゃな。


---


最後に俺はみんなに問いかけた。


「ほかに立候補、興味ある人はいる?」


静かに視線が揺れる中……

テトが、ずっと俯いたままだった。


〈……気づいてるよ、テト。後で必ず話そう〉


---


クララが勢いよく前に飛び出し、ピンと手を挙げた。


「はい! じゃあクララがまとめるね!」


そして指を折りながら読み上げる。


「CEO ライム

 COO クララ

 CFO レノ

 CTO カチさん

 CPO ミナ

 CHRO サラおばさん

 CAO ゴードンおじさん

 酒造事業 ガレンさん

 ランチボックス事業 エッタさん」


「で、まだ決まってないのが……

 CMO、CLO、物流事業、リバーシ事業! だよ!」


ぱちぱちぱちぱち。

店内から自然と拍手が湧く。


俺は胸の奥に熱いものが広がるのを感じながら言った。


「みんな、本当にありがとう。

 今日すぐに決めることじゃないけど……やってみたいとか、もっと聞きたいとかあれば、必ず言ってほしい」


俺はみんなの顔をひとりひとり見渡した。


「炎の夜明け商会は、これから本当に大きくなる。

 そのための最初の一歩として……今日の会議は、絶対に忘れないよ」


拍手と笑い声。

グラスの触れ合う音。


その喧騒の中で――テトだけが、静かに下を向いたままだった。


〈……大丈夫。ちゃんと話すからな〉

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