25話
ヒビキ:主人公。気分屋。性格がひん曲がってる。かなり斜め上思考。
ユキ:主人公と契約した狐。見た目も性格も天使。
アニエス:白エルフ。主人公が異世界人であることを知っている。
セリア:黒エルフ。美人ではあるし性格もそれほど悪いわけではないけど、扱いが酷い。
ニーナ:宿屋の娘。結構ツンデレ。
室内で犬やら猫やらを飼っている人なら分かってくれると思うが、なぜか動物たちは寝ている主人のそばに寄ってくる。実家で飼っていた猫は寝ている俺の上に乗っかったり、真横を陣取って丸くなっていた。
ユキもそうである。
一緒の布団にもぐりこんではいつだって俺のそばで丸くなって眠る。もちろん以前だったら何ら問題は無い。可愛い狐さんだったのだから。最近はどうだ? いかんせん危ない。色んな意味で危ない。
そう、彼女は既にペットなんていう概念からは既に大きく逸脱して、天使という存在に変わってしまったのだから。だからこそ気を付けてほしい、気が付いてほしい、俺の下半身が悪魔だと言う事を。
「アニエスにおねがいしたい事がある……」
「ふむ、言ってみろ」
「夜にユキを泊めてもらっても良いだろうか……?」
俺がそう言うとユキの目は見開かれ、口がぱっくりと開く。そして両膝が、ひざかっくんを喰らわせたようにガクリと落ちた。
「納得のいく説明が……ほしいです」
ユキは顔に絶望を浮かべ俺に言う。
「ユキが寝ぼけて俺に抱きついてくる度に、俺の心と魂が沸騰して溢れ出そうになるんだ」
ユキは俺の抽象的な説明が分からないようで、首をひねっていた。もちろんだがアニエスは納得顔だ。
「ふむ、ユキ。要するにユキが可愛すぎて眠れないということらしいぞ?」
アニエスは俺のベッドに寝転がったままそういう。彼女は仰向けに寝ながら、枕を両足で挟み、25度くらいの角度で宙へ浮かせていた。
何かのストレッチかな? なんで俺の部屋でやるのかな?
ユキは首を傾けて俺に問う。
「いつだって一緒に寝てくれたのに?」
「うっ」
それを言われるとつらい。
今までは魔力が足りず、よわよわしいユキちゃんだったからこそ、そばに居ても心配になるだけで何ともなかった。だが俺のレベルの上昇によって彼女に供給できる魔力が増え、契約以前と変わらないように動けるようになったユキちゃん。彼女に思い切り抱きつかれでもしてみろ。頭がコンコンしてしまう。
「あ、アニエスー……」
「んー」
俺が話を振ると片足を抱きしめるような恰好で、体を伸ばしているアニエスは間延びした返事をする。
だからなんでお前は俺の部屋でストレッチしてるんですか。
「ふむ。私は構わないが、ユキの事を考えると諦めろと言うほかないな。まぁいいじゃないか。かわいい娘ができたと思えば」
ちょいまて。お前はいつまでそのネタを引きずるんだ。諦めて無かったのか。
「でもさ……そのさ、あのな」
「まあまあ諦めろ。それにそろそろお前は仕事じゃないのか?」
とそこで俺はハッと気が付く。ある程度レベル上がったことで俺は即戦闘を止め、普通の一般事務系のお仕事を紹介してもらってる。戦闘(笑)。なんで命かけて戦ってまで金稼がないといけないんですかね。意味分かんない。
「やばい、そう言えば今日はいつもの商店に行かなきゃいけなかったわ」
俺はアイテムボックスに最低限必要なものが入っているかを確認する。ある事を確認した俺は、ユキに昼食代を渡す為にアイテムボックスからお金を取り出した。
「アニエス、ユキを頼むぞ」
俺はユキにお金を渡すと、ユキは心配そうな表情をしていたので軽く頭を撫でた。
「ああ。まかせておけ。ユキ、今日は一緒に居よう」
そう言ってアニエスはベットの上から降りると、こちらに寄って来た。
「いってくる」
俺はそんな彼女たちをしり目に、部屋から飛び出した。
さあ、いまからは普通に仕事だ。切り替えよう。そしてこの平穏な日常を謳歌するんだ。
気が付いていない人が多いけれど、人生と言うものは平穏が一番なのだ。
だから一生町で商店の裏方やって平穏に暮らすわ――――――そう思っていた時期が俺にもありました。
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カァカァと俺を馬鹿にする声が聞こえる。
いや厳密に言えば馬鹿にされてはいないのだろう。毎日この時間になればあの黒い鳥は夕焼けの空を自由に舞って、少し歪んだ歌を歌っているのだから。
「ほう。ずっと仕事貰えるだろうと楽観視してたら首になった、と」
「正式雇用ではなくて日雇いだから、首って言い方は間違いかもしれないが、大体はそんな感じだ……」
いつも働かせてもらっている場所で、正式に一人雇うことになったらしい。それはもちろん俺。ではない。親戚の子供だそうだ。と言うことで、人手が足りるようになったから俺は要らないと。私は遊びだったのね。
「あーやばい。仕方なく行きたくもないギルドに顔出してまで仕事を探しに行ったのに、紹介できるヤツで戦闘系以外のはいま無いらしい」
「ふむ、まぁ稀にそう言った時もあるな。それにしてもギルドに顔を出すのは嫌なのか? 以前までは普通に顔を出していた気がするが?」
たしかに以前は別にギルドに行くことは苦では無かった。ただある日を境に、苦になった。セリアは……まぁ構わない。だが、
「なんかしらないけれど、ギルドに行くと勇者が寄ってくるんだよ……」
勇者は勘弁してほしい。彼は気に行ったのか知らないけれど、俺の姿を見つけると寄ってくるようになった。
「餌付けするからそうなるんだぞ?」
「した覚えがないんだよなぁ」
マジで何もした覚えがない。一度一緒にゴブリン狩ったぐらいだ。それに男を餌付けなんてしたくもないわ。
ユキちゃんだったらいくらでも餌付けするんだけどな。有り金全部はたいても良いわ。
「戦闘系や採集系はあるのだろう? 私も手伝ってやるからそっちで稼いではどうだ?」
「いやだよ。確かにお前とマスターのおかげでゴブリン程度なら問題なくなったさ。だけどな俺が求めているのは町での平穏な生活で、決して危険な外での戦闘ではないんだ」
「ふむ、ならばどうやって稼ぐのだ?」
「それは……」
俺が口ごもると隣に居たユキが俺の肩を叩く。
「ん」
ユキはそう言うと俺に銀貨数枚を差しだしてきた。
「だめだ。それはユキが働いて稼いだお金だろう? 自分でしまっておいて、必要な時に使いなさい。お金の使い方は教えただろう?」
そう、これはユキがニーナとおやっさんの手伝いをして稼いだお金だ。決して俺が使って良いものではない。
「欲しいものないし……ヒビキがこまってるのなら」
俺がそう言っても、ユキは銀貨を渡そうとしてくる。
ああ、もうユキちゃんマジ天使。この時間軸において一番可愛いよ。
「ヒビキはユキに貢がせても良いのか?」
人間はやりたくなくても、やらなければならないときがある。もちろん社会人は当り前だが、学生だってやらなければならないときがある。仕事とか宿題とかな。
ジト目でこちらを見るアニエスに、俺は頷くしかなかった。
「…………お願いしますアニエス様、お仕事を手伝わせてください。それか薬草採取みたいなの手伝ってください」
「無論、かまわない。薬草採取へ行こうじゃないか。ついでに私の調合で必要な物も一緒に取りに行くことにしよう」
そこで俺はふとある考えが浮かぶ。
「行く場所って危険なのか?」
「いや、さほど危険は無い筈だが」
「なら、ユキも行くか?」
ちょっとした思いつきだった。ただ三人でピクニックに行くのも悪くない。そう思っただけだ。
ユキはピンと耳を立てて目を大きく開くと、こくこく頷いた。そのふわふわな尻尾はちぎれんばかりに左右に動いている。KAWAII。
更新してなくてごめんなさい、書いてはいました。まだ1章終わってませんが、3万文字ほど溜まったのでしばらく放出します。




