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24話

 

 気の合わない先輩と遊びやら仕事に行くと、普段の倍以上のストレスと疲れがたまってしまうのは必然である。


 しかも今回の場合はあの勇者だぞ? 普段なら体の疲れだけで済んでいたのに、今回の苦行の対話。なるべく会話を受け流していた俺だったが、たまるもんはたまる。


 上昇思考であるのは構わないのだけれど、他人に押し付けるのは嫌われちゃう事を学習した方が良い。もちろん逆に卑屈過ぎる考え方でも嫌われちゃう。


 そう、物事はほどほどが良いのだ。

 

 

「……お疲れのようですね」

 心配そうにのぞきこんでくるセリアさん。俺はそんなに疲れているように見えるのだろうか。ならば……!


「はい。ですので非常に心苦しいし、非常に楽しみではありましたが、残念ですが今日のお食事はキャンセ――」

「あ、見えてきましたよ?」


 俺の言葉はその尖った耳には届いていないのか、彼女は視線を前方に向けひとつの建物を指さした。

 彼女が指さしたのは、大きな木が横に生えている小ぢんまりとした建物だった。


「へぇ、木の建物ですか? ここでは珍しいですね」


 そこは普段見慣れている石レンガ作りの建物ではなく、木造で出来ていてドアの前には暖簾のれんのようなものがかかっている。


「……そうですね。ここではあまりないですが、私の故郷に行けばたくさんの木の家が見られますよ?」


 セリアさんは風になびくその金髪を掻き上げると、ルビーのような赤黒い瞳が顔を出す。彼女は目元を緩め、何かを懐かしむようにその建物を見ていた。


「良いですよね、木造。匂いもいいし、こう落ち着くというか安心で来ると言うか……」

 

「フフ、私も木の香りがする所が好きなので、こう言った場所にはよく来るんです。実家がエルフの森で沢山の木に囲まれて育ったことも、そう感じる要因の一つだけなのかもしれませんが」


「へぇ、やっぱり森に住んでたんですね」


 エルフと言えばイメージは森だ。どの小説だってゲームだって大抵はエルフ=森なイメージがあるのではないだろうか。


「どこぞの白豚もそうですけれど、基本的にはエルフは皆森に住んでいますよ。 実の所、この街のような辺鄙へんぴな場所に来ることは珍しいんです」


「え、そうだったんですか」


「ええ、仕事や冒険の途中でもない限り、ここには寄りませんよ。大きなエルフの里からは結構離れていますしね、さあ、立ち話も何ですし中に入りましょうか」


 そういうと彼女は俺の腕をつかみギュッと引き寄せらる。以前彼女の手に触れた時はとても細く柔らかで冷たかった。だから彼女は力がないのだろう、そう思っていた。


 だけど彼女は貧弱なんかでは無い。引き寄せられるその腕には確かに力があった。多分力を入れても振りはらうことは出来ないだろう。ここまで来てしまったら逃げ出す気はないが。

 

----

 

 俺に言わせればそこはお食事所ではなく、完全に酒飲み用の場所だった。バーに近いと言えばいいのだろうか。カウンターには一人の男性のエルフが立って居て、それを囲むようにカウンター席がある。


 一応普通のテーブル席も存在しているが2席だけで、それも二人しか座れない。カップルで来るならとても雰囲気の良い場所だろう。


「いらっしゃい」

 カウンターのエルフは、男性にしては少し高いテノールの声でそう言った。


「来てやったわよ」

 彼女はそういうと手前のカウンター席に向かう。


 もちろんだが、俺は彼女についていくふりをして、途中で踵を変え彼女と離れた隅っこに行こうとした。しかし、伸びてきたその手に掴まれ彼女の隣に座らせられる。


「珍しいな。お前が男を、それも人間を連れてくるなんて」

「ええ、見たでしょう? 彼ったら面白いの。それに私に一切なびかないし。初めはちょろっと苛立って絶対落としてやるなんて思ったけど、接しているうちに私が彼を気にいっちゃったみたい」


 え、この人俺の目の前で何言ってるんですか? 何それ私貴方に気があるアピール? 困るわ、たしかにこんな綺麗な人にそう言われると嬉しいけど、どうせお世辞なんだろ。


「えぇー、そういうのは本人が居ない所で言うもんじゃないですか……」

「とりあえず……そんな感じの人間なのよ、クロード」


 クロードと呼ばれたエルフは小さく笑うと背を向け棚からグラスを取りだした。

 このエルフ白いけれどセリアさんと仲悪くならないのだろうか? 実は色で争ってたりはしないのだろうか? あとでアニエスに聞いてみよう。


「今日は何にする?」

「お腹に溜まるものと……葡萄酒をちょうだい」

「私も同じもので」


 俺は間髪いれずにセリアさんに便乗すると、クロードさんは不思議そうな表情を浮かべた。

「君は好き嫌いは無いのかい?」

「嫌いは特にないので」


 見た目がグロいとか、よっぽどのクセがない限り食べられる。

「へぇ、凄く良いことだよ。君の隣に居るエルフはね、凄く偏食なんだ。君からも何でも食べるように言ってやってくれ」


「いいのよ、食べなくたって今の今まで問題なくて生きてこれたんだから」

 だらしなく椅子に寄り掛かりながら、いつもの丁寧語ではなく砕けた口調で話すセリアさん。クロードさんは苦笑いをすると俺に視線を向けた。


「どうだい、こんな彼女だけど、君は幻滅したかい?」

「あー、今超幻滅しました。そういうことでわたしは帰り――」

「あ゛あ゛ん?」


 いつもの仮面はどこかに置き忘れてしまったのか、まるでやくざのように睨みつけてくる彼女。だけれどいつもの背筋が凍るような不思議な感覚は無かった。


「――いやぁ、実は私すっごく楽しみだったんです、セリアさんと食事に来るの! 今日はセリアさんのいつもと違った姿が目れて幸せだなぁ」


 俺がとりあえずそう言うと、クロードさんは小さく笑った。

「セリア。君は本当に面白い子を見つけたようだね」


 セリアさんは頷きながら、クロードさんが出した葡萄酒を手にもつ。俺も彼女と同じように葡萄酒を手にもつと彼女のグラスに軽く当てた。

 

 


「白いのにはなんて言ってきたの?」

 こいつは思い出したくないことをさらっと聞いてくるな。あれ思い出すからマジでやめてほしい。


「とてもとても嫌そうな顔をして送り出してくれましたよ。ユキちゃん抱きながら。……次はユキだけでも連れてきて良いですか?」

 多分アニエスに負けないぐらい、俺も嫌そうな顔をしていたであろうことは言わないでおこう。


「狐の子? 良いわよ。それにあの白豚も連れてきても良いわよ。貴方があいだをとりもつならね」

「あ、無理です」


 そんなことしたらストレスで禿げる。お前は知らないかもしれないけれど、俺この世界ではフサフサを維持するために影ながら頑張ってるんだぞ?

「ああ、そうそう。あんた隣にこんな美人がいるのに、他の女連れてくるとか他の女褒めたりしちゃダメよ」


「じゃぁユキちゃんの自慢話を…………すいません冗談です。なんでもないです」

「……あんた口調がだんだん砕けてきたわね」

「気のせいじゃないですか?」


 俺がそう言ったとき、目の前に一つの皿が差し出される。俺が前を見るとクロードさんが俺に肉の乗っかった皿を差し出していた。


「ありがとうございます」

 俺が受け取ると今度はセリアさんにその皿を差しだす。

「ありがと」


 俺は食べようと思ったがスプーンやらナイフが見当たらず、俺はちらっとセリアさんを見つめる。あわよくばセリアさんの食べ方を見て、それをまねしようと思ったけれど、彼女も料理に手を付けなかった。


 まさか手づかみで食べるんじゃないよな? いや、でもこの世界に来てから手づかみは結構あったか。いやそれでもナイフは出て来たな。まさかかぶりつけと?


 そう思っていた時にクロードさんは今度はパスタと一緒にナイフとフォークを持ってきた。危なくワイルドな食い方するところだったぜ。俺は受け取ったフォークを見つめる。


「おまたせ、揃ったよ。ああ、食後にデザートも持ってくるから安心してね」

 俺が受け取ったフォークは、日本でよく見かけていた4つまたではなく3つまたで、くぼみがなくストレートなフォークだった。


「いただきます」

 珍しいフォークだななんておもいつつも、俺はそのフォークをナポリタンのようなパスタに刺すと、くるくると巻いて口に入れた。


「……やっぱりね」

 ふと横を見るとそこには俺をじっと見つめるセリアさんの姿があった。

「え、どうかしたんですか?」


 また、何かやらかしてしまったのだろうか? いや、何もしてないよね今日は。

「ばかねぇ。フォークなんて別の地方の人間とか、一部の貴族とかしか使わないのよ?」

「え? は? いや……あーそうそう、アニエスに教えてもらったんです!」


 うぇ。知らないんだけど。何それ? そういうのは先に言ってくれませんかねぇ……。いや無理だけどさ。


「じゃぁそれは嘘だね」

 今度はクロードさんが笑いながら俺にダウトをつきつけてくる。

「え、何でですか?」


「だってこのあたりのお店でフォークを出すのは僕の店だけだから。君このあたりでフォーク見た事ある?」


 ……言われてみれば確かにない。スプーンとナイフと手づかみだったような。

「あ、アニエスが持ってるのを借りたんです……」

「ちなみに彼女もよく僕のお店に来てくれてね、お話した事あるんだけど、彼女自身はフォークを久々に使ったと言ってたよ? 彼女フォークは持ち歩いていないみたい」


 もうやめて、私のライフはゼロよ。これ以上言い訳なんか思いつかないんだけど、この冷や汗どうにかしてほしいんだけど。


「まぁ言いたくないならきかないわ。私だって色々あったしね、いーろいろ、ほんっと色々あったしね! ね! ね! いっろいろあったのよーうん」


 そういってチラチラ俺を見つめるセリアさん。多分聞いてもらいたいのだろう。そんな見え見えのフラグ俺が気が付かない訳がない。こんな綺麗な黒エルフさんの過去を聞けるんだぞ。そりゃ勿論……!


「へぇーそうなんですか。あ、そう言えばこのパスタ美味しいですね」


 聞きたくないよ、当り前だ。コイツ馬鹿か? 出会って三回目だぞ? なんで数回しか出会ったことない奴に自分の過去話せるようになるんだよアホか。フラグ? そんなものへし折ってやろう。あ゛あ゛~いい気分だ、酒を飲もう。

 

 不意に目の前にいたクロードさんがプっと息を吐きだした。

「フフッ、ハハハハ、ハハッ。本当に面白い子だね。セリアもアニエスも彼を気に居るのが分かるよ」


「コイツ、白豚にはすっごく優しいのよ、信じられる? 私に対してはこんなに適当なのに」


「そうなのかい?」

「優しいと言うより、アニエスが俺で遊ぶのでそう見えるだけではないですか?」


 俺はナイフで一口大に肉を切るとそれを口の中に入れる。

 それはまるで硬い弾力のあるゼリーのような触感だった。噛み切りにくいわけではない。柔らかすぎるわけではなく、程良い弾力があって食べやすい。そして一噛みする度、溢れる肉汁、そして鼻からすぅーっと何かのハーブのような香りがした。


「ああー確かにそれはあるわね……ねぇ、どうしたの?」

 セリアさんに肩をゆすられ、俺は意識が別の所に飛んで行っていた事に気が付いた。俺は料理から視線を外しセリアさんを見つめた。


「あ、いや。めちゃくちゃこのお肉がおいしくて。意識が飛んで……」

「ふふん、そういってくれると僕は嬉しいよ」


 カウンターからクロードさんがそう言う。

「いや、めちゃくちゃ旨いです。これ、何の肉です? 初めて食べるこの不思議な触感も最高だし、このソースも最高。そしてこのハーブの香りも最高、全部最高じゃないですか!」


「お肉は実は魔物の肉なんだ。このあたりではあまりとれないんだけど、今日は運よく手に入れたからね」


 おやっさんの料理最高、だなんて思っていたがこの肉料理はそれ以上だ。つかアニエスはここを知ってただと? 教えてくれよ!


「どう? 私と食事に来て良かったでしょう?」

 なんで貴方がそんなドヤ顔しているんですかね……。しかし。

「そ、そうですね。有益だったことは認めざるを得ないですね」


「なんであんたはそんな嫌そうに言うのよ? クロードお酒」

「ふふっ。はいはい、すこしまってな」


 クロードさんはグラスを受け取って後ろを向くとお酒を注ぎ始める。俺はそれをを横目で見ながらステーキをサイコロ状に切り分ける。そして一つをフォークに刺そうと思った時に隣からフォークが伸びてきた。


 それはセリアさんだった。いつの間にか彼女は俺のそばに寄っていて、十数センチぐらいまで距離が縮まっていた。俺は頭を動かして彼女の皿を見て見たが、どうやら彼女のお肉の皿は空っぽになっていて、パスタの方もグリーンピースのような野菜を残してすべて無くなっていた。


「なぁにひとつくらい、いいじゃない。今日ここ教えてあげたんだから、それにケチは嫌われるわよ!」


 俺は眉根に皺を寄せて彼女を見つめる。彼女は一切気にした様子は無くニヤニヤしていた。

「野菜食べたらあげますよ?」

 俺はそういうと嫌そうな顔をして数個、その野菜を口に入れる。そして口に入れた以上に残っているその野菜は、俺のパスタに追加された。


「食べたわよ……これで良いでしょ?」

 俺はため息をつきながら皿を差しだすと、彼女は笑いながらフォークで俺のお肉に突き立て、口に持っていった。コイツ俺より年上だよね?


「うん、よきにはからいなさい!」

 あの仮面の笑みじゃなく、本当に楽しそうに笑う姿は、普段より綺麗でいてそして可愛らしく見えた。



----


「ウィック。たっく。ほんっとうにもう、あのク○どうにかしてくれないかしら? ヒック、面倒なのよ分かる、この気持ち?」


「最悪だな、アレクソデス。どうにかして止めさせられないのか?」


 やっぱりアレクソデスは半ストーカー化していたようで、よく付きまとわれるらしい。なんか名前違う気がするけど一番しっくりくるんだよな、この名前。


「私、ギルドの寮に住んでいるんだけど、ヒック、なんかアイツが寮の前に立っているときがあるのよ」


「こ、恐! 家の前とか……ドン引きだよ。大丈夫なんですか」

「当り前よ。ヒック、あんなカスボコボコに出来るけど、実際に手を出されたわけじゃないし、やるわけにもいかないから我慢してんのよ、ヒック、ううぇ」


「……話を切って悪いんだが、ちょっと飲み過ぎじゃないか?」

 こちらを覗き込んでいたクロードさんが、ポツリとそう言う。

「やっぱそうなんですか?」


 俺はべろんべろんに酔っぱらってしまったセリアさんを見つめる。ほんのり色づいた肌に、チーズをレンジでチンしたかのようにトローリしている目。以前なら仕事のできる美人秘書的なイメージだった。しかし今はその面影は無くなって、残念なおねえさんになっている。それはそれで可愛いんだけど。


「ヒック、まだまだいけるわよ! ほら次」

 ため息を吐いたクロードさんが差し出したのは透明な液体だった。セリアさんはひったくるようにそれを取ると、ごくごくと喉を鳴らして飲み込む。


「何も味がしないわね? 何よこれ……?」

「うん、今日はもう帰れ。ヒビキ君、すまないけどセリアを頼むよ」

「あん? 何よせっかくいい気分だって言うのに……」


 彼女はそう言いながら勢いよく立ち上がるとゆらりと横に傾く。俺はあわてて彼女の体を支えた。


「ん、どうしたの、ああー私の事ぉ好きになった? ヒック」

「いえ、ちがいます」


 なわけねぇだろう。転びそうになったから支えただけだ。


「ッチ。まぁ良いわ離して、ヒック、それともトイレに一緒に行きたい?」

「行ってらっしゃいませ」


 俺はおぼつかない足取りで歩く彼女をハラハラしながら見つめていると、クロードさんが俺に水を差しだしてきた。


「君は口では散々言うけれど、実は優しくて面倒見がよいんだね」

 ……は? この人は急に何を言ってるんだ……。もしかして口説かれてる? 何言ってるんですかごめんなさい男は無理です生物的にも心理的にも無理です。

「む、無理です」


「君はなにを言ってるんだ……? まぁいい、あんなに楽しそうにお酒を飲むセリアの姿を見るのは初めてだよ」


「え? 本当ですか?」

「そうなんだ、普段ならそんな泥酔もしないし、ね」


 俺は話しながらローブのポケットに手を居れ、アイテムボックスから何枚かの銀貨と大銅貨を取り出す。


「そうなんですね。じゃ料金はいくらですか?」

「うーん反応しないな。まぁいいや。えと料金だね。2で割れば、1人銀貨1枚と大銅貨2枚だ。でも君はそんなに飲んでいないし……ちょっと待って今計算を……」

「あ、いや良いです、最初からこのつもりだったんで」


 俺はそういって銀貨2枚と大銅貨4枚を彼に渡すと、なぜか嬉しそうにほほ笑んだ。

「ふふ、僕も君の事を気に言ってしまったよ」


「男に好かれるのはちょっと……」

「まったく君は、……っと、来たようだ。後は任せたよ」


 彼女は言った時と同じようにふらふらと歩きながら、こちらに寄ってくる。酒臭い。


「あ゛ーヒビキ、ヒック、帰るわよ」

「はいはい」


 俺は立ち上がると千鳥足のセリアさんの肩を支え、店を出る。

「二人とも、気を付けて帰るんだよ?」


 そう手見送るクロードさんに挨拶をして、俺達は彼に背を向け歩きだす。


----


 もうすぐ店が見えなくなるころだろうか、セリアさんはポツリと声を漏らした。

「あ、お金……払ってない」

 ふらふらの彼女を見つめながら俺は思案する。俺が払ったと言っても良いが、今の彼女にそれを言ったら面倒そう。最悪この人笑いながら抱きついてくるかもしれない。ならばクロードさんになすりつけるか。


「あークロードさんにつけといてもらいました。なので気にしないでください」

「そっかー」


 そういって安心したのかぐらりと体勢が崩れるセリアさん。彼女を支えながら俺は聞く。


「それよりもセリアさん家何処ですか?」

「ギルドの方……」


 日本だったらタクシー呼んで放り込んで、金渡して行き先伝えれば終わりである。しかしここではそうもいかない。俺は千鳥足の彼女を支えながらゆっくりと進む。 


「今日は想像以上に楽しかったわ、ありがとう。また……行きましょう? 白豚も連れてきて良いから……」

 不意に彼女は地面を見つめながらそう漏らす。


 俺はいつも通り「いえ、結構です」……なんて言う事も考えたけど、なんとなくそんな気分でもなかった。


「あー行きましょうか」

 そう言った瞬間、抱えている腕にかかる力が少しだけ強くなったような気がした。

 

 俺は寄り掛かってくる彼女を支え直すと空を見上げる。そこにはたくさんの星達と月のような大きな惑星が瞬いていた。


 その空はいつもより綺麗だった。酔っているからなのかもしれないし、このシチュエーションだからかもしれない、空気が澄んでいただけかもしれない。だけどこっちに来てから見て来た夜空で一番綺麗だった。


 そんな空を見つめていると彼女がポツリと声を漏らす。


「……き゛ほ゛ち゛わ゛る゛い゛」

「……は?」


 俺は彼女を見つめる。ダークブラウンの肌はの彼女の肌は、先ほどは少し赤みがかっていたが、今はどうだろうか? すこし青くなっているような……。


 いやこれは見間違いだよね? ダークエルフだからちょっと青く見えるだけだよね。お願いそうと言って!


 ねぇ、本当にさ。ちょっと待ってくれよ、凄く綺麗な星空みて俺は感動していたんだぞ? それにぶっちゃければ今日は楽しかったななんて思っていたんだ。

 最後の最後に全てぶち壊しとか、まさかそんな事は無いよね?

 

「こ゛め゛ん゛」

 俺は急いで道の端へ彼女を連れていく。そして彼女は勢いよく――――。

 

---- 


 一瞬セリアさんをその辺にポイーしようかとも思ったけれど、もちろんそんな事出来るはずもなく、しっかり送りとどけた。

 

 うん。やはり、物事はほどほどが良いのだ。

 ノミズギ・ダメ・ゼッタイ。


二日前には1話分の分量があったんですが、きりが悪いのでアップしませんでした。

2話分として見てください。


> 聞きたくないよ、当り前だ。コイツ馬鹿か? 出会って三回目だぞ? なんで数回しか出会ったことない奴に自分の過去話せるようになるんだよアホか。

 →主人公はアニエスに出会った次の日に自分の過去を打ち明けました。何言ってるんだろうコイツ(遠い目)


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