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15話

 アニエス曰く、魔法と言うものは生まれ持った種族と才能に大きく左右されるらしい。


 魔力をあまり持っていない人は、生活の最低限でしか魔法を使えない。その点を考えればアニエスが属しているの『エルフ』と言う種族は、生まれつき魔力を沢山所持していているため、魔法に向いていると言える。


 それに比べて大きな魔力を持つ人が少ないといわれる『人間族』の俺。一応……人間族の中でも並みの上、大の下ぐらい魔力を持っているらしい。だけれど一部大魔法は今は使えないとか言われた。

 

 しかしまだその時点では悲観するべきでないのだそうだ。なんと先天的に魔力が少なくてもある程度は変えることができるとか。その方法は、

 

「うぇ、レベルアップかあ……」

「なんだ、君はものすごぉぉく嫌そうな顔をしているな……」


 だってさ、レベルアップだよレベルアップ。舐めるだけでレベルが上がるアメなんてないし、幸せになれそうな草だってないし、メタルな奴もいないんだぞ? 戦闘(笑)


「だってさ、魔物と戦わないといけないんだろ……?」

「まぁ……そうだな。一応毎日魔法の訓練をしていれば微々たるものだが魔力は上昇するし、魔素がたまるからレベルアップも出来るだろう。だが魔物を倒すのと比べればなぁ」


「一生上がらねえな、俺のレベル」

 俺はギルドカードを取り出しじっと見つめる。俺の名前の横には『LV』と言う文字と『2』という数字が書かれていた。


「そこまで低レベルならすぐ上がると思うんだがな……」

 そう呟きながらアニエスは布団の上で寝返りをうつ。


 魔法について教わったあの日から、アニエスはこの宿に泊まるようになった。だけど彼女は殆ど自分の部屋に行かず、なぜか俺の部屋に入り浸っている。まあユキちゃんいるから入り浸っちゃうのは仕方ないかもしれないね。今だって俺のベッドに横になりながら、ユキちゃん抱きしめてるし。


 ああ、撫でられてるユキちゃんマジKAWAII。銀河一可愛いよ。

 

 俺はため息をつきながら椅子に座ると、机の上に置かれた服を見つめる。その腕の辺りには魔法の練習で失敗し少し焦げた跡があった。


「あーあ、そう言えば服もそろそろ買わないとまずいな……」


 もともとギリギリの枚数で生活してたのに、これ以上は減らすのは無理だ。少ないと言われるフランス人でさえ10着も服を持っているというのに俺ときたら……。つか、あれ淑女系の本なんだよな……本を開いてびっくりしたなぁ。もちろん全部読んだけど。


「ちっとばかし服買ってくるかな……アニエス、俺少し出てくけどどうする?」

「いや、暇だから私も出かけよう。ついでにユキも連れて行こうか」


「そうだな……ああ、そういやお前普通に美人なんだから、出来るだけ目立たないようにしてくれよ? それか俺と少し離れてくれ」

「……普通美人の女性と歩くならば、自慢したくなるものじゃないのか?」


 自慢? 一切したくないな。自慢というものはただの自己満足に過ぎない。また自慢すると言うことは相手に不快感を与える可能性がある。上手く笑いや尊敬に持っていける自慢であれば無論構わないが、そうでなければ相手に悪印象だ。

 

 さて今回の場合はどうだ? 片やツヤサラ金髪蒼目足長美人、片やボサボサ黒髪歪目胴長未来禿人だぞ? なんで美女の隣にここんなのがいるんだと思われるだろ。自慢したらぼこられそう。


「それはちょっといっちゃってる思考の持ち主だ。俺は目立つのが好きじゃない」

「まぁ、私も目立つのは好きじゃないから安心してくれ。それもあってこのローブを買ったのだしな」


 彼女はローブのフードを頭にかぶせる。町中にいる魔法使いにはローブのフードをかぶっている人はそれなりにいる。日本人思考だった時は怪しすぎて近寄れなかったが、この世界でもうすでに10日。いつの間にか慣れてしまったようで別にいまは何とも思わない。それどころか少し欲しい。


 と、俺は彼女を見つめながら、ふと思う。

「なぁ、アニエスの着ているようなローブって、なんかしら特殊な繊維が使われてたり、魔法とかかかってたりするのか?」


 アニエスはユキを離すと自身のローブを摘まみ、そして少しだけめくりあげた。


「ん、ああ。これは実は耐熱と隠密の魔法を組みこんでるんだ。ついでに多少の斬撃も防げるな。まぁ代わりに威力を吸収する効果は無いから、殴られたりすれば私なんかは軽く吹き飛ばされるだろうな」


「やっぱ魔法って服にも組み込めるのか。しかも隠密……。そういうの少し欲しいな」


 隠密とか目立たなくなるんだろう? 最高のローブじゃないか。でもな。そう言うのに限って……。


「でもお高いんでしょう?」

「そうだな、安くても金貨数枚からだろう」


 少しだけ『今だけ超特価』とか『30分間だけこのお値段、今すぐお電話』みたいな通販ネタをしたんだが、もちろん通じるわけもない。


「そこまでためるのに何年かかるんだか……」

「私だってお金に余裕があるとはいえ、このローブはかなり痛い出費だった。まぁ今回は諦めて普通の服を買うんだな」


「そうだな……」

 隠密の付いたローブなら欲しいが、無いんだったらそこらへんの適当なので良い。


 地球でも○まむらや○ニクロでセールしてるときに、数枚買って過ごすファッションセンス(笑)の俺だ。何でもいいや。


「よし、じゃぁいくかぁ」

 そう言って立ち上がると、ユキが俺のもとに寄ってくる。アニエスはベットの上から起きあがった。

 

 俺達は階段を下りて、夜は酒場になる一階の部屋に入る。そこにはおやっさんとニーナがカウンターにいて何かを話していた。


「早ければ来月には行くんだな?」

「ええ」

「そうか……寂しくなるな」

 なにやら神妙な顔で話をしていたおやっさんだったが、俺を見つけると表情をすぐに変えた。


「おう、ヒビキにアニエスか。仕事へ行くのか?」

「いや、ちょっとした買い物だ」


 俺がそう言うとニーナは眉根に皺を寄せて俺を見つめる。一応俺客なんだけどなんでそんな表情するんですかね……?


「ふぅん? なによ? 最近仲いいわね」

「ふむ。確かにヒビキと一緒にいることは多いな。そんな事よりもニーナも一緒にどうだろう、服を見に行くのだが」


「あー。あたしはパス二人で行ってらっしゃい」

 そう言って俺たちに背を向けるとひらひらと手を振る。


 おやっさんは苦笑いをしながら、ため息をついて首を振っていた。なんでこんな顔してんだこのおっさん。

「まぁとりあえずいってくるよ」

「おう、行ってこい!」


 俺はぼうっとニーナを見ているユキを抱えると、宿屋から出る。ニーナはそれからこっちを見てくれることも送り出してくれることも無かった。なんだ、最近アニエスと一緒にいると視線が冷たい気がする。まさか嫉妬?


「そんなわけないよな!」

「ん、急にどうした?」

「いや、何でもない」


 第一俺アイツにフラグ立てたこと一回もねえし、あったとしても速攻破壊してそうだわ。


----

 

 普段なら人でにぎわうこの商店街であったが、今日は様子がおかしかった。いや商店街に辿り着く前からおかしいことは薄々感じていた。

 

 初めにおかしいと思ったのは宿『ミラージュフォレスト』を出てすぐだった。普段ならば誰かしらにすれ違ったり、歩いている人を見かけたりするものだ。しかし今日は誰も見かけない。そんなの雨とか真夜中でもない限りありえないだろう。

 

 商店街に来ても殆ど同じような光景だった。いつもならわらわらと群がるはずのあのお店にだって、今日は数人の人しか居ない。それに場所によっては店主すらいない、売ることを放棄した店だってある。ストライキかな? ……んなわけないか。


「やっぱりおかしいな、まさか事件か!?」


 そうであれば少しだけ話を聞いてみたい。じっちゃんの名にかける奴や、アダルトチルドレン(物理)な名探偵が大好きだった俺に、解けない謎なんて存在しない。


「まさか、そんなわけないだろう……魔王は封印されているんだし、滅多な事でもない限り事件なんて起こらんよ」

「……だよなぁ」


 普通に考えればそうなのだ。こんな平和な町に事件なんて滅多に起きない。毎日のように事件がおきるあの漫画群が少し異常なのだ。まぁそういった物語なのでつっこみを入れるべきでないのかもしれないが。


「それにしても……服屋の店主がいないのは痛いな。俺これ以上店知らないぞ」

「そうだな、ここで2件目だぞ? 服屋の店主は何処へ行ってしまったのだろうか?」


 さっきから店の前で声を出したり、ドアでノックしているが、人の気配は無い。せっかくここまで来たと言うのに、店主がいなければ物は買えないじゃないか。


「どうするヒビキ、戻るか?」

「戻ろうか……」


 と俺が諦めて帰ろうとした時だった。


「コン!」

 不意にユキの声が聞こえ振りかえる。ユキは駆けていく二人の男性人間族を見ていた。


「急げ、中央広場だまでは後少しだ!」

「ああ、どっちが使えても恨みっこなしだぞ?」


 その二人はパッと見る限りでは、冒険者のような風貌だった。一人は腰にメイスを吊り下げ銀色の胸当てをしている、もう一人はメイスが剣に変わったぐらいであとはもう一人と同じような服装だ。


 そんな彼らは嬉々とした表情で中央広場に向かっていっていく。

「どうやら中央広場で何かがあるようだな」


 俺と同じように二人を見ていたアニエスは、そう言ってちらり俺に視線を向ける。多分彼女はどうするか問うているのだろう。


「気になるっちゃ気になるけど、別にそこまで……って感じだな。行っても行かなくてもいい」

「ふむ、私は服屋の店主までいなくなるのは少し気になっていてな。迷っているなら行かないか?」


「うん、アニエスがそう言うなら行くか」

 俺はユキに視線を向けると笑顔でコンと小さく鳴いた。KAWAII。


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