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【本編完結済】夕日と共に弾丸を~金無しの俺がホテルに住もうとしたら、大事件に巻き込まれるハメになった~  作者: さどがしま たつや


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end. 『勇断』

「――これが、人間政府の機密情報の入った『ブラックボックス』か。」


 少女と凪との戦いが始まる数分前、残りの3人は扉最奥の部屋へと辿り着いていた。部屋の内部は薄暗く、少し肌寒い。しかし、そんな部屋の中でもひと際目立つものがあった。

 そこにあったのは黒色の巨大な立方体、名前の通り『ブラックボックス』だった。


「リーダー…ここちょっと寒いっスね。それに、廊下も長かった……。」


「そこまでして守らないといけねぇって事だろう。それこそ機密情報はそれくらい大事なものさ。」


 薄暗い空間で、リーダーの男は手探りで照明のスイッチを探し、ようやく見つけると、カチリとスイッチを押した。


「おお…明かりがつくことで、より一層目立つっスねこれ」


「これだけ巨大なら、機密情報もたくさん入ってるだろうな。」


 明かりがついても尚、ブラックボックスは全てを吸い込むような漆黒をしていた。明かりがついてやっと、ブラックボックスの前に操作盤のようなものを見つけた。

 そこへ向かうと、0から9までのボタンと、その隣には先ほど同様差し込み口があった。リーダーの男は、少女から受け取ったカセットを迷わず差し込んだ。差し込んでから数分後、カセットから『ピコーン』と音が鳴り、

 

「こんな小さなサイズで、こんな短時間に情報を回収できるとは…流石ハッカーと言ったとこだな。」


 機密情報を抜き取り終わったカセットを、回収し、服についているポーチの中へと入れようとした。

 

「そこまでだ。」


「……ほう。」


 直後。天弦達が追い付き、銃を構え、出口を塞いだ。完全包囲された3人、しかしリーダーの男はいたって冷静に周りを見渡す。


「……凪の姿が見えねェな。つまりあいつを囮にして此処に来たって訳か。」


 にやりと笑うと、3人は銃を構えた。同時に天弦達も銃を向ける。


「いいのかァ?俺の後ろにはお前達が守らないといけねぇブラックボックスがあるんだぞ?」


「そいつはどんな弾丸を受けようとも、絶対に傷一つつかない。それに、どうせお前が左手に持ってるそのカセットに、全部入っているんだろ。」


 男の左手には、まだカセットがあった。それを見ると、さっさとポーチへ入れた。


「……俺達に勝てるとでも思ってるのか。」


「あの女がいない以上、お前達を守ってくれたあの忌々しい紙は無いからな。」


 天弦は目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。そして、リーダーの男を見る。


「…俺は、亜人を恨んでいる。お前達は俺から色んなものを奪ったからだ!!」


「おいおい、言うじゃねえか天弦。だが、気持ちは分かるぜ。」


 瞬間、額に血管を浮き上がらせた天弦が、男に当たるギリギリに銃を撃った。弾丸は男の耳を掠め、ブラックボックスに当たるも、天弦の言う通り傷はつかなかった。

 リーダーの男は弾丸に驚きもせず、ましてや天弦の行動に呆れ、持っていたライフルの引き金に手を掛けた。


「お前に何が分かるッ!?」


「……話は最後まで聞くもんだぜ。だがこれだけは言わせてもらおう。」


 そしてリーダーの男は言った。


「俺も人間のせいで大事な"家族"を失ったからなァァァッ!!!」


 直後、男はライフルの引き金を引いた。


※※※


「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!」


 周囲に地響きが起こり、天井から破片が落ちてくる。

 激しい衝突音と共に粉塵が巻き起こった部屋の中で、凪の姿を捉えようとする。

 死体は完全に外の出口へと吹き飛ばされ、恐らく男も飛んで行ったのではないかと少女は推測した。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。」


 巨大な円錐をまた1本1本へと戻し、背中へと収束。一部は背中からの流血が再び始まったので、すぐさま止血代わりに巻いた。

 男の影を探す。しかしどこにも男の影は見えなかった。


 倒した。少女は確信した。


「……やっ……た……。」


 今までで一番最大の一撃。体はがくがくと震え、今にも倒れそうな状態だ。手を膝につき、荒れる呼吸を整えていく。


「やった…やったんだわ……!!私、勝った。勝ったんだ…!!あはっ…、あははははは!!」


 膝から手を離し、勝利に確信づいた少女は天井を見上げて笑った。今まで退屈だった戦いが、男によって初めて死ぬかもしれないと思った。彼のおかげで、戦いを面白いものとしてくれた。まるで、ゆうだんの一つのステージをクリアしたような感情の高ぶり。今の感情は、それと同格の物で、どこか気持ちよさそうだった。

 少女は心の底から笑う。圧倒的な力の差の相手に、死に物狂いで戦って、戦って、戦って、戦って。

 そして勝った。生きた。生き抜くことが出来た。


「あっははははははははははははは!!」


 少女は生きてきた人生の中で、今が一番、気持ちよく笑っていた





――ドン。



「……は。」


 音がした。どこかからか。

 物が落ちた音でも、何かがぶつかった音でもない。

 重く、ずっしりとした何かが、"撃ち出された"音がした。


「な…にい……ま……の………?」


 少女は、震える視界でゆっくりと、自身の足元の方を見た。


「あ。ああ…ぁ…!!」


 そこには左足に弾丸が貫いた跡があった。それに気づいた途端、貫かれた跡から血がどぷり。とあふれ出し、重力に従って、足先へと垂れていった。

 その時、ようやく激痛が左足から伝わってきた。


「うああああああああああああああぁッッ!!!!」


 少女は理解を拒もうと、叫ぶ。しかし余計に左足から血が溢れ出る。痛みが頭を襲う。

 何故?男の姿は見えなかった。どうして?勝ったはずなのに。どうして?



――ドン。



「ッッ!!!!」


 また音がした。まるで現実を叩きつけるような重い音がした。

 少女は右足を見た。


 弾丸が貫いた跡があった。


「あ、ああああああああああああああああああッッ!!!」


 両足に弾丸が貫いた跡が出来る。両方とも血がどくどくと溢れ出していった。激痛が走る。そして、気づいた時には足が動かなくなり、地面にばたりと倒れた。


「はぁッ!はぁッ!はぁッ!はぁッ!」


 理解が脳を拒み、軽いめまいが起こる。頭が痛い。でもそれ以上に足が痛い。呼吸が整わなくなる。

 今も尚、血は溢れ出る。痛い。苦しい。

 そんな状況で、少女は止血をしようと紙を出そうとした。



「――すまんよ。嬢ちゃん。」


「ッッ………!」


 突然声が聞こえ、少女は顔を上げる。粉塵が消え去り、やっと見えた出口の先に……男、凪は立っていた。サングラスで表情がどうなっているかは分からない。しかし、きっと殺意を抱いているのだろう。少女はそう思った。


「なんで……どうして生きて……。」


 痛みすら忘れ、戸惑う少女。突然、凪は少女に向かって走りだした。

 

「……ッ!やめてっ、来ないでッ!!」


 必死に逃げようとするも、足は言うことを聞かない。両手で後退りをしても、すぐに追いつかれるだろう。逃げることをやめた少女は、左手で体を支え、右手を凪に向かって突き出した。

 しかし、現れた紙は3本。しかもよろよろとスピードは遅く、簡単に避けられてしまった。


 その瞬間、彼はとっくに目の前に来ていた。




 ……ふにっ。




「……は?」


 突然。凪は真剣な表情のまま左手を突き出し、少女の"胸"を触った。

 彼の左手に伝わる感触には、まだ発展途上なりに、柔らかさと弾力さがあった。


「え、えッ?!ちょっちょっとどこ触ってェッ!!!」


 何故胸を触られたのか、理解できず困惑、混乱。そしてぼっ!と顔を赤くすると、怒りにまかせて凪へ3本の紙を向かわせた。


「…ッ!?」

 

 凪に胸を触られた瞬間、少女の体に異変が起きる。凪に向かっていった紙はピクリと動きを止め、地面にへたりと落ちていったのだ。戸惑い、何度も手を凪へ向けるも、ピクリとしなかった。


「能力(ちから)が…使えない……?!」


 少女の額から汗が一筋流れていった。すると、胸辺りにまた違和感を感じた。


「……うひひぃ~…!」


「~ッ!!いつまで触ってんの!!!」


 突如として揉み始めた"男"の手をどかすように、少女は拳を振りかぶって、顔にパンチを直撃させた。

 皮肉にもそれが初めて男に入った攻撃だった。


「ぐはぁッ!!ちょ、ちょっとぉ!まだ楽しんでる最中でしょうが!!」


「うるさい!!あっち行ってヘンタイ!!」」


 2日連続で殴られた男は、涙目で少女に訴えるも、勝機は無かった。


「ッ!痛……。」


 再び足から激痛が少女を襲う。それを見た男が慌ててしゃがみ込み、少女の出した紙を拾い上げると、足に巻き付けた。


「……どうして胸触ったのよ!?」


「いやぁ…あれは嬢ちゃんを止めるために必要だったんだよ…。」


 そう言うと、男は紙を結びながら説明をし始めた。


「変異能力型の亜人の体には、1つの小さな"穴"があってよ。その穴のおかげで能力が使えてんだが、その穴さえ塞げば、能力は使えなくなるのさ。その小さな穴の場所が、ちょうど嬢ちゃんの"胸"に空いてたんだよ。」


「…ッ!」


「さっき、すまんよ嬢ちゃん。って言ったろ?」


 と男は言った。しかし、その小さな穴はどうして男には見えたのか、少女は聞くが、男は黙り込んだ。聞く耳立てない男に、少女は、はぁ…。とため息をついた。

 しばらくして、両足ともに紙を巻き付けると、男は立ち上がり少女に向かって指を差した。


「いいか?!俺が戻ってくるまで、この場から絶対に動くなよ?!もし帰ってきたときにこの部屋からいなくなっていたら、速攻見つけ出して殺すからな!!」


 さらっと、とんでもない発言をした男。最後に「いいな!?」と念押しすると、走り出して天弦のいる部屋の最奥へと向かっていった。

 少女一人だけになった制御室。男の唐突な行動に、少女は終始きょとんとしてしていた。


※※※


「く……そ………。」


 部屋の最奥。ブラックボックスが部屋の中心に佇むこの部屋での戦い。

 40人の兵士は全員死亡。兵隊長も今や蜂の巣状態で地面に倒れていた。


 勝者は亜人3人組だ。

 

「手も足も出なかったなァ?天弦!!」


「ブラッ…クボッ…クスを防御に、使うなんて……卑怯だ……。」


「おいおい…卑怯だなんて、戦いにとって卑怯ってのは最大級の誉め言葉だぜェ?!」


 ブラックボックスの後ろから悠々と歩き、天弦の方へと向かう。姿を見せた3人は、殆ど無傷の状態であった。


「楽勝したっスねリーダー。」


「今回は酷いケガをせずに任務を終わらせれそうですね。」


「ああ。そうだな。」


 "L"と"A"は、リーダーの後ろを歩きながらそんなことを話していた。

 唯一の生き残り、いや、わざと生き残らされた天弦は、入り口前の地面に伏せたままリーダーの男の顔を見た。

 男から見た天弦の表情は、憎しみや恨みが顔にそのまま書かれたようだった。


「なんて顔をしてんだよ…そんな顔しても、お前等の負けは変わらないぜェ人間…!」


 男はポーチからカセットを取り出し、わざとらしく天弦へ見せた。


「亜人がぁ…!!」


「おいおい仲良くしようぜ兄弟?お前も"家族"を失ったんだろぉ?!」


「……!!貴様ァァァァアア!!!」


 その瞬間、怒号を浴びせる天弦の姿を見て、リーダーの男は声高らかに笑い声をあげる。

 そしてひとしきり笑った後、ライフルを天弦の頭に突きつけた。


「お前だけは…絶対に……!!」


「はっはっは!!よく吠える人間だ天弦よ!!うるさくて構わんな!!早く殺しておくべきだろうが……。」


 すると、天弦の頭に突きつけたライフルを一度頭から離し、廊下の方へと向けた。


「…?どうしたんスかリーダー。」


「何か思い出したのか?」


 近づいてきた"A"と"L"がリーダーの行動に疑問を抱いた。


「……誰かが来る。」


 そう小さく呟くと、リーダーは廊下に向かってライフルの引き金を引いた。

 ガガガガガガ!!!!と音を立てて廊下へと散弾が飛び散る。数秒間乱射した後、リーダーはライフルを下ろした。


「……。」


 廊下の先は暗闇。出口までは視認できない。しかリーダーには異変を感じていた。


……チャキ…。


「――ッッ!!伏せろ"A"!!"L"!!!」


 廊下の先から音がし、異変に気付いたリーダーの男が2人へ指示をした。


「遅ぇよ。」


 その瞬間、銃声が聞こえた。そして、"L"の額へ一発の銃弾が貫いた。


「あ……え………?」


 衝撃によって顔は反り返ると、バランスを崩した体がそのまま地面へと倒れていく。"L"の額からは血が溢れだし、放物線を描くように宙へ舞い、やがて体と共に地面へびちゃり。と落ちていった。


「ッッ!!"L"ゥゥゥ!!!」


 リーダー倒れた"L"へ声をかける。しかしすでに目を開けたまま死んでいた。


「クソッ…誰だ!!誰がいるんだ!!!」


 再びリーダーは廊下に向かってライフルを撃つ。"A”も廊下へとライフルを撃った。


「そんなもん当たらねえ…よッ!!」


 廊下から声が聞こえると、同時に靴の音が聞こえてくる。段々と音は早さを増し、近づいてくることが分かる。


「ッ!!お前はまさか?!」


 暗闇からやがて、人影が見えてきた。その男こそ、凪だ。


「お前……!」


 天弦が声をかける。しかし凪は天弦のことを目には留めなかった。

 走りながらグロック17を構え、一気に部屋へと飛び出した。


「凪ィッ!よくも"L"を!!!」


 "A"が珍しく怒号を放ち、凪へ向かってライフルを撃つ。しかし、サングラス越しで目を見開いていた男はその散弾すべてを避けきり、"A"へと近づいた。


「"A"!!よせッやめろぉぉおお!!!」


 リーダーが"A"に向かって指示をする。がしかし、凪は既に"A"の額へ銃口を突き当てていた。


「安心しろ。あんたの"家族"は絶対に殺さねえから。」


「……!!!」


 凪が"A"にしか聞こえないように小声で呟くと、"A"は、持っていたライフルをカランッと地面に落とした。


――ドン。


「ッ!!………凪ィィィィイイイイイイイ!!!!」


 もはやリーダーとは肩書きになってしまった男が持っていたライフルは、弾がそこを尽きてしまい、ライフルを地面に投げ捨て、凪へと突進した。

 リーダーのちょうど背後にいた凪は、くるりと体をリーダーの方へ向けると「いいぜ」と言い、銃を革ジャンの中へとしまい込んだ。


「ウォォオオオオオオ!!!」


 雄たけびを上げながら、凪へ右フック。しかし体を勢いよく反らしながら回転し、両手を地面につく。瞬時に腕へ力を入れ、リーダーの顔に向かって両足で蹴りを入れた。


「グァッ……ウオラァァ!!」


 激しい衝撃で地面に倒れるかと思いきや、リーダーは何とかギリギリ倒れなかった。逆立ち状態の凪は、リーダーへ大きな隙を与えてしまい、その瞬間にリーダーが凪の足を掴んだ。


「うわぁッ!!」


 リーダーを中心に凪はぐるりと回転、そのまま投げられてしまう。

 凪の先にはブラックボックス。激しい衝撃音と共に凪はブラックボックスへぶつかった。


「いてて…ハッ!!」


 倒れ込んだ凪は、衝突時に激しく強打した背中を手で労わっていたのだが、照明で明るかった筈の凪の視界が、ふっと暗くなった。

 直後、素早く顔を上げると、そこには高く跳びながら凪へ向かって両手を組んで大きく振りかぶったリーダーの姿があった。


「ウォォオオオアアアア!!!」


「くっ…!!」


 咄嗟で右へ回転。ほぼ同時のタイミングでリーダーの拳がブラックボックスへ衝突。ドォッン!!と大きな音が周囲に響いた。

 凪は自身の身体能力を活かしアクロバティックな動きで距離をとった。

 そこで、がばりと体を起こしたリーダーが凪へ向かって問う。


「お前がここにいるということは……まさか"N"も殺したんじゃねえよなァッ?!答えろォ凪ィッ!!!」


 しかし、凪はその問いには答えなかった。


「そうか……ならばここで死ねぇぇぇえええ!!!!」


 両手を大きく広げ、リーダーは凪へと走っていく。凪は一度唇をぴッ、と親指で触った後、リーダーに合わせて両手を広げた。

 その瞬間、凪とリーダーは両者の手を掴み、取っ組み合いになった。


「俺は人間は俺の家族を奪った!!そしてお前は、"家族"のように思っていた俺の仲間達さえも奪った!!!俺はお前を許さんぞ凪ィィィイイ!!!」


「だが、お前も大勢の人間を殺した!!その人間にも、その人を待つ"家族"がいたかもしれないんだぞ?!お前はお前から家族を奪った"人間"と同じことをしていることが分からないのか!?」


「ならば問おう!!!」


 取っ組み合いの中の言い争い。そしてリーダーは凪へ言った。


「この恨みを"人間を殺す"以外で、どう晴らせば良いのだぁッ!?」


「ッ!!!」


 そこで、凪の言葉が詰まってしまう。同時に凪の力にも揺らぎが生じてしまい、リーダーの力によって凪は地面に押し倒れてしまった。


「お前も今"A"と"L"を殺した!!いいか?!A、"アガライ"は2児の父親だった!!長男と長女だ…2人には何度も会ったことがある。父親のことが大好きだって…俺に何度も言ったんだ!!!」


「……!」


「L、"ルーカス"もそうだ。あんな馬鹿みてぇな性格で…実は彼女がいるんだぜ?2年前くらいだ。俺に付き合ったッス!って、調子乗ったあいつが言ってきた。……2人にも帰る場所、そして帰りを待つ"家族"とでもいえる存在がいたんだ……。」


 その瞬間、リーダーは右手を離し、凪の首を絞めつけた。


「グッ……カハッ…!!」


「お前はどうなんだ!?お前にもあるんだろう!?帰るべき場所と、帰りを待つ"家族"が!!なあッ!!」


 次第に首を絞める力が強くなっていき、さすがの凪でも顔がだんだんと青ざめていき、額から大量の汗が溢れ出ていた。


「……そう……かもしれないな……。」


 凪は視線をリーダーの下半身の方を見た。


「だが…っ!」


 自由に動かせた足を使い、リーダーの股間を思い切り蹴り上げた。


「はぅッ!?」


 思わず声を上げ、悶え始めるリーダー。首を絞める力が緩み、その隙に凪はリーダーを投げ飛ばした。


「ッッハ!!ガハッ!ゴホッ!ゴホッ…!!」


 瞬間的に一気に空気が口へと入っていき、咳をしながら凪は立ち上がる。

 悶え苦しむリーダーの方へ行き、革ジャンから拳銃を取り出し、銃口をリーダーの頭へと向けた。


「すまんが、それは俺には答えられない。」


「ッ…!!」


 形勢逆転。リーダーは鋭い視線を凪へと向けた。


「卑怯だぞ……!!」


「卑怯ってのは、戦いにおいて最大級の誉め言葉なんだろ?」


 口調を低くして凪は言う。


「……何か言い残すことは?」


 すると、リーダーは「ふっ。」と笑い、答えた。


「ああ。お前も"道連れ"だ。」


「………なっ、お前まさかッ!!」


 次の瞬間。

 リーダーの来ていた武装服から縦長のスイッチを取り出した。そのスイッチには導火線が付いており、辿っていくと、それはリーダーの服の中へとつながっているのが分かった。


「まさか、自爆する気か!!」


「これで終わりだァ!!お前も共に地獄へ堕ちようぜェェエエ!!!!」


 リーダーは親指でそのスイッチを押そうとした。凪はそれを止めるため、迷わず銃の引き金を引いた。


 カチンッ。


「……ッ!?」

 

 凪の持つ銃はとっくの前に弾が尽きていたのだ。

 初めてにして、最大のミスに、凪は冷や汗を流す。

 そして、凪は死を覚悟した。


 しかし。2人はあることを忘れていた。


 そう。それは、この部屋には、まだ1人。

 "生き残り"がいたことだ。


「終わり――…」


―――ドン


 凪の視界には、自爆スイッチを押そうとするリーダーの男の頭に、横から銃弾が一発。

 リーダーの声は途中で途切れ、銃弾が貫いた方向に体がバタリと倒れた。


「……まさか、天弦」


 ドン。

 ドン。ドン。ドン。

 ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。


 カチャ。


 ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。


 ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。

 

 ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。



「………ッッ!!!」


 そして、凪の視界に天弦が現れると、即死したリーダーの体へ何個もの弾倉を使い果たし、何発も銃弾を撃った。


「おい…おい、ちょっと待て!!やめろ天弦!!」


 何度も引き金を引く天弦の手を掴み、銃を奪った。


「なぜだ?!最初の1発目でこの男は死んだ!!それなのに何故!何度も銃を撃ち続けた?!」


 声を荒げる凪へ、天弦は鋭い視線を送る。


「こいつは…"5年前"に俺の両親を奪った張本人だ!!」


「ッ!!!」


 凪は思わず息を呑んだ。


「5年前、お前と別れる5日前の事だ。少しの間、お前と俺は離れて行動していた。その日の夜、事件が起こった。俺が住んでた町が亜人によって襲撃された…。町の方が赤く光っていたのを見て、急いで向かったんだ。そこには殆どの建物が破壊され、そこに住んでいた人達は全員殺されていた…!!」


「……。」


「すぐに両親のいるビルへ行ったよ。市長をやっていたからな。だが、遅かった。この…男が!!笑いながら両親に向かって何度も拳銃を撃ちまくってたんだ!!」


 込み上げる怒りを凪へとぶつける。凪は黙って天弦の話を聞いていた。


「俺は…わかったんだ。亜人とは分かり合えない。だから、」


 カツカツと歩き出し、天弦はリーダーの死体からあるものを取り出した。一つはカセット。そしてもう一つは、発信機のとり付けられた機械のようだ。


「俺はこの手で亜人族をこの世界から消す。」


「――ッッ!!その負の連鎖が今の状態になってることはお前も分かっているだろ?!」


 しかし、凪の言葉は一切聞く気は無く、天弦は凪に見えるように機械を見せた。


「お前と別れた後、俺は政府の技術者になった。そこでこの機械を見たんだ。この機械は、こいつが使っていた通信機だ。この機械は必ず亜人族の国と繋がっている。今から俺はこれの解析をする。お前とは久しぶりに会ったが、やっぱ強いままだな。助かった。」


 そして、凪の肩をポンとたたいた後、天弦は傷で体が思うように動かなくも、廊下へと歩いていった。


「……そうか。」


 凪は、そう一言。そして、グロック17の弾倉を取り換えた。



――ドン。



「ぐあ……ッ!!」


 次の瞬間、倒れたのは天弦だった。足の関節部分を撃たれ、かくんっ。と簡単に膝は地面へつく。

 理解が追い付かないまま地面に倒れ、呼吸を整える。しかし、カチャ…。と音が聞こえてきた。


「……おい。誰に構えてると思ってる…。聞いてんだよ、一体お前は誰に構えてると思ってんだァッ!!!」


 うつ伏せになっていた体を回転させ、足を撃った男の姿を見た。そこには凪は天弦の心臓部分に銃口を向けて構えていたのだ。


「答えろよ…答えろって言ってんだろうが!!!」


 凪は黙ったまま銃を構えたまま動かない。しかしその時、男はサングラスに手をかけ、ゆっくりと外した。


「ッッ!!!……何だよ、その目は……。」


「……これが答えだ。」


 ぼつりと、凪はそう答えた後、再び黙り込んだ。


「何が答えって……っ!…まさか"お前"がそうだって言うのか!!?」


 凪はついに、引き金に手を掛けた。


「おい、答えろ…答えろよ……!!答えろ、"凪"ィィイイイイイイイイイイ!!!!!」


 そして、凪は引き金を




 引いた。



※※※



「――よう。」


 カツカツと制御室へと戻ってきたサングラスをかけた男は、外の景色が見える位置の壁に、座って待っていた少女へ声をかけた。


「意外に早かったね。他の皆は…」


「全員殺した。天弦もだ。」


 その答えに、少女は驚くが、すぐに表情を戻した。


「私も殺すの?」


「まあ、返答次第ってとこだ。お前は今まで会ってきた亜人とは違うような気がしたんだ。」


 それに…。男はそう言うと、少女の隣にどっこいせ。と座り込んだ。


「『ゆうだん』、お前まだクリアしてないんだろ?付き合ってやっから今からやろーぜ。」


 先ほどまで命の奪い合いをしていた仲だったとは思えない程、あっさりと言った男の姿を見て、少女は思わず笑い声を出した。


「いいよ、私も続きを見てみたい。」


 少女は、血で汚れたパーカーのポケットから古いゲーム機を取り出し、電源を付けた。

 そして、2人は『ゆうだん』を始めるのだった。


「…そういえばだが、お前がやった最後の攻撃。あれって『ゆうだん』のボスの攻撃だよな?」


「よく分かったね。さすが伊達にゆうだんを10回以上クリアしてないね。そうだよ。」


 ちょうど1時間前に、男と2人で進めたところは、ラスボス戦直前だった。男は指示をし、少女が主人公の『凪』を操作しながら、会話を続ける。


「お兄さんと戦う直前にこのボスと戦ったんだ。そしたら、攻撃の方法が私の能力とやってることと、似てるなって思ったの。」


「なるほどね。なぁんで寄りにもよって"作中最強キャラ"に攻撃が似てしまったんだか。」


「えっ…このボスがゆうだんで一番最強キャラなの?!てっきりラスボスかと思った…。」


 最初は拳銃で防ぎ、その後は銃を構えて撃つ。ゲーム機を巧みに操作して、ボスの攻撃を避けていった。


「気になったんだけど、最後の初見殺し攻撃。お兄さん、一体どうやって避けたの?」


「ん、あれか?さすがにあれはビビったぜぇ!円錐をぶつけてくるとは。」


 男は、続けてあり得ないことを言った。


「嬢ちゃんから俺の事が見えなくなった瞬間、俺ァタイミングを見計らってあの円錐に飛び乗った。」


「……えぇッ!?」


 がっはっはっは!と笑い声をあげ、説明をした。


「弾倉に入ってたのは後3発。2発は嬢ちゃんの足を撃つために絶対必要だから、残りの1発で、円錐の回転速度を一瞬でも緩めるために使った。」


「でもそれじゃ、掴んだ後は遠心力で吹き飛ばされるでしょ?!どうしてお兄さんは飛ばされなかったの?」


 男は、その言葉を聞いた途端。待ってましたと言わんばかりに顔を上気させた。


「回転していた円錐だが、元は紙だ。必ず紙のつなぎ目に僅かな隙間が生まれる。俺ぁその場所を目で追い、タイミングよくナイフを突き刺してしがみついたのさ。」


「えっ!そんなことを……!?」


 親指を立て、少女に見せる。しかし少女は、ひとつ気になったことがあった。


「お兄さん。戦ってた時からずっと気になってたけど。あなたの視力、人間にしては異常だと思うの。何か特別な力とかがあるの?」


 すると、男は少女に見えるようにサングラスを外した。


「…っ!!?お兄さんのその目……もしかして……!?」


 少女の目に映った男の目は、『縦長の瞳孔』をした、"亜人と同じ目"だったのだ。


「亜人なの?!」


 しかし、男は「半分正解」と一言。


「この目を開眼すると、視力が超人的になる。だがこの目を見られたら疑われてしまうもんだから、バレないようにサングラスをかけていた。…俺は、人間と亜人の間に産まれた、いわゆる混血の血筋なのさ。」


 驚きのあまり、ゲーム機の操作を忘れていた少女に、取り乱した男はすぐにゆうだんへと集中しろと促した。そう言われて慌ててゲームへと戻り、何とかボスを倒すことができた。

 しかし、少女は今ので全て合点が付いた。あれだけの攻撃を全て避けきるには、驚異的な身体能力よりもあるが、やはり、攻撃を目で追えなければ無理だ。


「おお~~~ッ!!やったな!!これであとはラスボス戦だけだ!!!」


 喜びの声を上げながら拍手する男。嬉しそうに少女は「えへへ。」と笑った。


「それと、もう一つ聞きたいことがあるのだけど。」


「ん、なんだ?」


 少女がゆうだんを進めながら男へと聞いた。


「あなたの、"本当の名前"って何?」


「げげェッ!!?」


 びくりと体を震わせる男の姿を見て、図星ね。と少女は小さくぼやいた。


「天弦さんが、一度もあなたの事を『凪』とは呼ばなかった。それで、おかしいなとは思ったの。」


「そっかぁ…バレちゃったかぁ………。」


 頭をぽりぽりと搔くと、男は煙草の箱から煙草を一本取り出して口にくわえると、火をつけようとした。「あ、嫌だったら嫌って言えよ?」と少女に確認すると、少女はふるふると首を振った。

 そして男は煙草に火をつけた。


「……俺に、名前は"無い"。」


「……え?」


 煙草の煙を吸い、少女より高い位置で息を吐いた。白い煙がふわりと宙に飛んでいく。


「もしかして…それってあなたが混血だってことに繋がったりする…?」


「そうだな。」


 お、ラスボス前の最後の会話だぜ。とゲーム画面の会話を見るよう促し、少女と共に会話を見始めた。


「俺が産まれたすぐに、両親は人間に殺されたんだ。亜人の能力は、俺が気づかなければ発現しない。人間達は俺に混血だと分からないように普通に人間として育てられ、その後はずっと施設で過ごした。実は俺、昔は暗い性格でよぉ、他の人と全然会話なんてしなかった。」


 少女は黙ってゲーム画面を見ながら男の話を聞いていた。


「施設の教員は俺の事なんて見なかった。だから、俺に名前を付けてくれる存在なんていなかった。」


「…そうなのね。」


 時々相槌を少女は打った。


「そしていつしか施設から追い出され、月日は経ち、ちょうど10年前。俺が17歳の時、"天弦"と出会った。」


「へぇ。結構長かったのね。」


「ははっ。そうだな。そして、その殆ど同時期に……」


「……同時期に?」


 少女は聞いた。


「俺は、『夕日と共に弾丸を』に出会った。」


 すると、男は笑い、少女のゲーム画面を見た。


「最初は興味半分で初めてよ…こんなゲームクリアできるかァッ!?って思った。だが、いつの間にかゆうだんのストーリーに惹かれ、そっからは沼にハマったように夢中でプレイした。」


 実は意外に初めてクリアしたのは3年前くらいだぜ?と少女に言うと、「えええッ!?」と驚きを隠せずにいた。


「そして5年前。俺はある組織と出会い、自分の能力に気づいた。」


 煙草をまた咥え、煙を吸い込んだ。


「組織の名は、『半亜人(ニュートラル)』。そこから、俺のやるべきことがが決まった。」


「……それは?」


「『この世界の中立者となり、世界の安定を乱すものを排除する』ってね。」


 煙を空中へと吐き出した。


「そして天弦と別れ、俺は半亜人(ニュートラル)として戦うための力をつけ、人間と亜人の戦争が起こることを未然に防いでいた。」


「…今回の襲撃も全て気付かれていたのね。」


「人間と亜人の政府。どちらにも半亜人(ニュートラル)の奴がいるんだ。そいつらが本部へ連絡し、今回は俺が選ばれた。」


 と、突然顔をあげ、大きくため息をついた。


「どぉーっしてよりにもよって天弦がいるんだよぉ…」


「それは知らなかったのね。」


「ああ、出来ればあいつは殺したく無かった。だから何度も撃つなとは言ったんだが、あいつは5年前に両親を嬢ちゃんとこのリーダーが殺したせいで、亜人に憎しみを持っちまった。」


「…!そう、だったのね。」


 そのことを聞いた途端、少女は言葉を詰まらせてしまう。

 暫く無言が続く。ゲーム画面、ゆうだんもようやく大詰め。ラスボスが登場した。男もやる気が上がり、解説に熱が入りながら、話も続けた。


「俺の使命は、なんていうか良くも悪くも『ゆうだん』に似ちまった。その皮肉も込めて、俺が半亜人(ニュートラル)として活動するときは、自分は"凪"と名乗るようにしたのさ。」


「……。」


 すると


「ふふっ、あははははははっ!!」


 少女が突然笑い出し、慌てて男は画面見ろ!見ろ!!と言う。ラスボスの攻撃を寸前で回避し、落ち着いたところで、何故笑い出したのかも聞いた。


「実はね。私も名前が無いの。」


「ッ!えええっ!?」


「変異能力型の亜人って、あまり数がいないのは知ってるでしょ?」


「あ、ああ。そうだな。」


 画面で、激しい戦いが巻き起こる。集中しつつも、男の助言もあったことで、何とか戦えられた。


「産まれた頃から、政府に目を付けられ、まだ顔すら覚えられない歳に、私は両親と離れ離れになった。それからは政府の特異戦闘能力者候補生として育てられ、名前なんて必要ないって幹部の人からは番号で呼ばれていたの。」


「……お前も訳アリって感じなのか。」


「ええ。ずっとずっとずっと、訓練の日々。そして私は晴れて特戦闘能力者に選ばれ、リーダーの所に配属された。」


 少女の生い立ちを聞いていると、男も一つ疑問に思った事があった。


「じゃあ、お前はいつ『ゆうだん』を知ったんだ?」


「それはね、2年くらい前だっけ。リーダーが突然、何か買ってやる。ってわざわざ人間の国まで危険を冒してでも侵入したことがあったの。その時に立ち寄った店に置いてあった。」


 少女のゲーム機を操作する目が、懐かしそうに遠い目をしていた。


「惹かれてしまった。理由は本当にこれだけなの。だけど、その時に出会えて、好きになってよかったと今も思ってる。」


 だって。少女がそう言うと、ちらりと男の方を見て、微笑んだ。


「『ゆうだん』で話せる人が、今ここにいるのだから。」


 少女の顔を見て、男は目を大きく見開いた。そして、「…そうか。」と言った。


「私さ、もう皆いなくなっちゃったけど、この舞台で"N"って名乗ってたの。」


「そういえば言ってたな。」


「あれって、実は"凪"の頭文字を取って"N"って言ってたの。」


「………え?!」


 またまた男は目を大きく見開いた。


「ってことは、さっきの闘いって殆ど……。」


「ええ。"凪"対"凪"の戦いだったのよ。」


 その時。


『デッデッデ――』


「「あ」」


 ゲーム機から『GAME OVER』と画面に映し出され、主人公『凪』はやられてしまった。

 ぽかんと口を開けたまま数秒後、2人は顔を見合わせた。


「………ふ、あははっ!!」


「……ふっ、ははっ!!」


 2人は同時に笑い始めるのだった。

 次第に陽は落ちていき、段々と海が橙色へ染まっていく。

 波の音が2人の空間をより心地よくしていった。


「――そうだ残りの銃弾の数は?!」


「あと1発!!」


「なら大丈夫だ!!攻撃のタイミングは俺に任せろ!!」


 会話を終えた2人は一気にゆうだんを終わらせにかかる。ラスボスのHPも残りわずか。カチャカチャと激しく凪を操作する音が早くなっていく。


『ギュィイイイイン!!!』


「ッ!今だぁぁぁッ!!!」


「分かったぁッ!!」


 ラスボスが攻撃を仕掛けた瞬間、少女は合図に合わせてボタンを押した。


『バァンッ!!!』


 ゲーム機から8bitの銃声が鳴り響き、見事ラスボスへ直撃。ラスボスの攻撃よりも弾丸の速度の方が早かったようだ。HPが0と表示され、ラスボスは地面にばたりと倒れこんだ。

 

「や、やった。」


「ああ。これで……」


 2人は顔を見合わせ、そして


「「ゲームクリアだ!!!」」


 勢いよくハイタッチをした。

 ゲーム機から盛大なファンファーレと共に『GAME CLEAR』としたから映し出され、そのままエンドロールが流れ始めた。


「よくやった!!さっきも思ったが、やっぱり俺の助言だけで動かせられるのすげえぜ!!」


「お兄さんの的確な助言のおかげよ、私だけじゃ絶対にクリアできなかった!!」


 涙目になった少女が男へと感謝を伝え、再びゲームのエンドロールを見始めた。

 きらきらとした目でゲーム画面を見る少女。そんな中、男はしばらくしてから口調を落ち着かせて、少女へと言った。


「もし、お前が良かったらなんだが。嬢ちゃん、あんたも半亜人(ニュートラル)に入らねえか?」


「…えっ?」


 驚く少女へ男は続けて言う。


「お前が戦っている時、人間に憎しみが無かったように見えた。むしろ…攻撃しないと死んでしまうから戦っていたように見えたんだ。…だから、」


「もういいの。」


 少女は言った。


「お兄さんの言った通り、人間に憎しみや恨みなんて無い。だけど、私は任務のために数多くの罪のない人間も殺してしまったことがある。」


 それに。少女は続けて言った。


「私は『ゆうだん』をすることこそが、私の人生だった。」


 少女は男の顔を見て、にこりと微笑んだ。

 しかし、男はたまらず口を開く。


「…なら、その罪を認めてやる。嬢ちゃんは任務のために人間を殺したんだ。俺と手を組んでほしい。そうすれば……」


「もういいのよ。」


 それでも、少女の考えは変わらなかった。


「これ以上人は殺したくない。…私の人生はここで終わり。だから、もういいの。」


「……そうか。」

 

 ゲーム画面からエンドロール用の音楽が流れている。そんな時、男はゆっくりと立ち上がった。

 そしてサングラスをかける。


「"凪"になる時は、いつもサングラスをかけるの?」


 少女は男へ聞くも、男は黙まり込む。その姿に、少女は思わず「ふふっ。」と笑った。


「……じゃあ、最後に。ひとつ聞いてもいいか?」


 そして、男は少女の頭へ銃口を向けた。

 少女は「ええ。」と微笑みながら言った。


「お前が、『ゆうだん』で一番、"好きな言葉"はなんだ?」


「私が一番好きな言葉…。」


 少女は少しだけその返答に考え、そして思いつく。

 ゆっくりと瞼を閉じ、そして"凪"を見た。


「"世界で一番、あなたを愛している"」


 そして少女はにこりと微笑んだ。


「…そうか。」


 凪は、引き金に手を掛けた。

 そして、


「俺も同じだ。」


 


 硝煙がつんと凪の鼻を刺激した。




「…なあ、嬢ちゃん。このホテルはよ、"夕日"が綺麗に見れるってので有名なんだと…って。もう、聞こえてないか…。」


 カツカツと制御室の出口へ行き、外へと出る。

 波が心地よい音を立て、夕日が凪を橙色に染め上げる頃。

 凪は煙草を咥え、橙色の空へと煙を吐き出した。

最終回です。初めて最終回、ENDって書けましたね。

この話は、15分昼寝の時に見た夢をめちゃくちゃデカくして書いてみた話です。

最終回まで書き終えてわかったことは、全〇話!!って事前に書かない方が良いってことですね。次回からは気を付けます。

さて、今度は何を書こうかな…異世界系で短編でも書いてみようかなとか思ったり思わなかったり…。

もしかしたらこの話の続編を書いたりするかも…?

そんなこんなで最終回でした。


面白かったら、是非評価等お願いします。 ばいばい

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