5. ハッキングを止めろ。残された時間は後僅か!!
「くそっ調子が狂う…!」
先程からずっと男と少女のペースから抜け出せず、天弦は頭を搔きむしった。
いいところまで行けたんだけどなー。大丈夫、俺がついてるぜぇ!とそんな天弦にも目もくれず、リスタートボタンを押す。
そんな少女に天弦は問う。
「一つ聞かせろ…停泊していた潜水艦はお前達の物でいいんだな?」
「ええ~そんなこと言わないといけない?ま、そうだけど。」
「おっと、画面注意!敵さんの登場だ、気を付けろぉ!」
遂に男の無神経発言を無視し、続けて聞いた。
「では何故、ソナーに探知されずここまで来れた?」
天弦は少女に銃を向け、答えるよう促す。すると、少女は男と一緒にキリの良いところまで進め、ポーズ画面を開いた。
「私の能力は…さっきも見たと思うから説明を省くけど、この能力結構使い勝手がよくってさ?無数の紙を潜水艦の周りを囲むように海の中を漂わせておくの。そうするといい感じに音波を分散出来るんだ。」
「お~そんな活用の仕方が!隠密作戦に特化した使い方を思いつくなんて、さっすがゆうだんプレイヤー!!」
男は少女に向けて親指を立てる。えへへ~。と褒められて嬉しかったのか、表情を柔らかくして照れくさそうに頭を搔いた。
しかし、黙ってろと言わんばかりに男の頭に向けて銃を一発。寸前のところで避け、耳をかすめて背後へと一閃する。
「……!!」
意外だったのか。目を大きく見開き、ゆっくりと壁の方へ顔を向けた。弾丸は壁に直撃し、煙が立っていた。そして、顔を天弦の方へ戻した。
「あ、はい。…すんませんした。」
涙目でそう言うしかなかった男であった。
『ピピピピ……。』
「あっ。」
古いゲーム機から出た音とは思えない、現代の電話音が鳴り、パーカーのポケットから小型の無線機を取り出し、耳に付けた。
「はいはーい、こちら"N"。音声共に良好でーすどうぞー。え、もう特定したの?早いね……え?お前がいないといけない?何急に告白しちゃってんの。…はいはーい冗談ですよー。」
無線機からは50代くらいの男の声が聞こえてくる。しかし何を言っているかはハッキリと分からなかった。その内容を男に聞いてくれと天弦が言うも、放心状態になっている男にそんなことは出来なかった。
やがて会話が終わり、少女はゲーム機をパーカーのポケットにしまう。
「あぁ~あ。楽しい時間が終わっちゃった。じゃ、またねお兄さん。それに天弦さんも。」
「なっ…!?待て!!」
少女の背中から無数の紙が現れ、彼女の体を持ち上げた。そしてそのまま部屋の中へ進入。
行かせまいと何度も銃を撃つが、全て紙によって防がれ、この場から完全に消えて行ってしまった。
「くそっ…!!」
「おいおいおいちょっと待て天弦!!」
後を追おうと走り出した天弦を男は止める。まだ何かあるのか?!と激昂するも、男は黙ってズボンのポケットから端末を取り出し、天弦に見せた。
「それは…!」
「さっき嬢ちゃんと遊んでるときに小型の発信機を付けていた。この画面に映ってるオレンジ色に光る丸が、彼女の位置だ。」
「いつの間に…。」
「な?俺はああ見えてちゃんと事を進めてたんだよ。」
男はにやりとすると、持っていた端末を天弦へ投げ渡した。
「兵隊長さんにでも居場所を伝えてやれ。合流して、一気に襲撃者4人を捕まえられるチャンスだ。」
「…そうだな。だが、」
2人は走り出し、部屋の出口へ向かう。
「捕まえるんじゃない。"殺す"、だ。」
「おいおいおい!もっと穏便にいこうぜぇ…世の中平和が一番だろ!」
「とっくにこちら側は何人か殺されてんだ。話が通じる奴じゃない、亜人共は全員殺す。」
「……そうかい。」
男は天弦にさえ聞こえないくらいの大きさで、そう呟くのだった。
※※※
「やっと来たか。」
「はいはい、せーっかく良いところだったのに……。」
不満そうな表情をしながら、少女は男達と合流。場所は今朝男が侵入しようとした『制御室』だ。認証しないと入れないのだが、入り口は黒焦げ周囲には扉の破片と思われるものが散らばっていた。
シュルルルル…。と紙を体へ仕舞い込み、制御室の中へ入る。しかし中は既に無残なことになっていた。いくつもの人間の死体が倒れ、周囲に血がこびりついている。全て三人の亜人によって行われた惨事である。
一人は30代前半の男。顎髭を蓄えている。もう一人は20代後半の男。すらっとした体型に、どこか新米のような雰囲気。そして、リーダー的存在の40代後半の男。ガタイも良く、歴戦の猛者の風格が漂っている。3人とも武装をし、見たことのないライフルを所持。そして、全員に短い角と猫のような縦長の瞳孔をしていた。
ちょうど今、リーダーの男が最後の生き残りの頭にライフルの銃口を突きつけている場面に少女は立ち入った。
「どうやら"セキュリティシステム"はこの扉の先にあるみてぇだ。だがこの扉、爆弾でも破壊できねえほど鋼鉄でできてやがる。そこで、お前の腕の見せ所だ。一つだけ大型のコンピュータを使えるように残しておいたんだが、」
「ハッキングして、その扉を開ければいいのね。はいはい、分かったわ。」
少女はリーダーの男の背後にある扉を指差しながらあっさりと返すと、パーカーのポケットから古いゲームのカセットを取り出した。
カツカツと靴を鳴らして大きなモニターのある大型コンピュータの方へ歩き、立ち止まってコンピュータに取り付けられていた差込口を確認すると、そこへカセットを挿入した。
『ピコーン』
コインを取った時の音が鳴り響き、電源の付いていなかったモニターが動き出す。
そして画面上に『0%』と表示された。
「さ、あとは100になるまで待てば大丈夫よ。それまで私はコンピュータを守りながら、ゆうだんでもやってるわ。」
「や……やめ…ろ……。」
「………ああ、好きにしろ。」
最後の力でうめく人間に目もくれず、リーダーの男は、呆れ口調で片手で持ったライフルの引き金を引きながら答えた。
ライフルに付いた血を拭き取ると、他の2人の方を見た。
「"A"、"L"。お前らも一度休憩しろ。ここからが勝負どころだ。」
「…おう。」
「やっと休憩っスね…はぁ――…マジで疲れたっス。」
途端に肩に入った力が抜け、ため息をついた。恐らく、"A"が30代前半の男。"L"が20代後半の男だろう。すると、"L"は少女の方を見た。またもやゆうだんをし始めている。
「と言うか"N"は殆ど休憩してないっスか?」
少女の事を"N"と呼び、そう一言。少女はむっとした表情で"L"の方を見返す。
「私まだ17歳!それに、可愛い子には楽させろぉ!!」
「自分で可愛いって言っちゃったよ…。でもまあ可愛いけど。」
最後の一言は少女に聞こえないように呟くのだった。
「来た、来たよこれ!!……ん?これって……」
少女がまたゆうだんをプレイしていると、ゲーム画面の何かに注目した。
「……おっと、そろそろ人間共が来るぞ。"N"。お前もゲームをやめろ。」
「え、あ。ああああああっ!!」
遠くから足音が近づいてくるのを察知したリーダーの男が、3人へ伝える。
しかしリーダーの男が声をかけたことで少女の気を逸らしてしまった。その瞬間に『GAME OVER』になってしまったようだ。リーダーの男へ少女のヘイトが向けられる。
「わ、悪かった…急に声かけちまってよ……。」
「ぐるるるるるぅ…!!」
怒る"N"をなだめるリーダー。視線に耐えられなくなったリーダーの男は、"A"と"L"の方へ視線を向けた。共にライフルの弾倉の中身を確認し、"L"は新しい弾倉に取り換える様子。
「お、おい"L"。さっきも言ったが、あまりはしゃぎ過ぎんなよ。弾の無駄遣いは命取りになる。」
「そうだぜ。リーダーの言う通り、一発一発確実に当てることが重要だ。」
「何言ってるんスか!ライフルは乱射してこそっスよ!!」
「私もそう思う。」
ちゃっかり機嫌を直し、"L"の意見に賛成の少女である。
足音は次第に近づき、男達は息を整えた。
「リーダー。撃つか?」
"A"はリーダーに聞く。
「いいや。ここは会話でもしてみよう。少しだけでもハッキングの時間を稼ぐんだ。それと"N"。そのモニターをお前の能力で隠しておけ。」
「すでにやってますよ~。」
指示が終わると、リーダーの男は不敵な笑みを浮かべ、仁王立ちで人間を待ち構えるのだった。
「――動く………なっ!?」
扉から最初に顔を出したのは天弦。拳銃を構え、真っ先に見えたリーダーの男へ向ける。しかし、銃口が一瞬揺れ動く。その後、兵隊長や兵士達が制御室へ到着した。
「はっはっは!!随分と早かったな。…おや?どこかで見たような顔だな。」
拳銃を構える天弦の両脇から、兵士達が制御室の中へ入り、M16ライフルを構えた。
「ふんっ、およそ60人くらいってとこか。随分と人数がいるな。」
右。そして左を確認しながら、リーダーの男は余裕そうに笑いながら言った。
「どうしたんですか天弦さん。震えていますが…。」
兵隊長が言う通り、天弦の体は震え、構えていた拳銃を下ろす。すると何かを確認するように、天弦はリーダーの男の顔を見た。
「まさか……あいつは………!!」
次第に語気が強くなると、下ろしていた拳銃を再びリーダーの男に向けて構える。拳銃を構えるその目は大きく見開かれ、怒りに満ちていた。
「おいおい待ってくれ!俺達には戦う意思がない。どうだ、ここは一度話し合いと行かねえか。」
「黙れ!ならこの死体は何だ!!」
リーダーの男へ向かって怒号を放つ。天弦の感情は昂り、いつ引き金を引いてもおかしくない状況だった。
「こいつらが勝手に撃ってきたもんだからな。仕方なく殺したんだが。」
「お前ら亜人如きにそんなことを言える筋合いは無い!!」
会話が成り立たないと感じたリーダーの男は、困ったように頭を搔く。
そして持っていたライフルを構え、にやりと笑みを浮かべた。
「そうか……お前もそういう考えなのか…。じゃあ仕方ねえなああ!!」
「ちょおぉぉぉぉッと待ったあぁぁぁッ!!!!」
「「「「!!?」」」」
一触即発の瞬間。誰かの声が周囲に響く。
その声は全てを止め、声の持ち主はカツカツと靴を鳴らして前へ出た。
その人物、年齢20代後半。黒の革ジャンに無地のシャツ。シャツの胸元にはサングラスをかけ、どこにでもある長ズボンにきっちりとした黒の靴を履く。
ぼさぼさとした黒髪の"男"が、リーダーの男と天弦の間に割って入った。
「お前っ…!!」
「やあやあお二方。そんなカリカリすんなよ。それに天弦!こいつは戦う意思がないって言ってるぜ?な、リーダーのおっさん?」
「…誰だお前は?」
「誰かって?聞かれちゃ答えるしかねえな。」
男は立ち止まると、右手を指鉄砲の形にし、リーダーの男へ向けた。
「俺は、愛と平和のためにここへ来た…。」
「…!!」
ただならぬ気配に、リーダーの男は思わず息を呑む。その姿を見て、男はにやりと笑った。
「さすらいの旅人、『凪』だ!!!!」
"凪"と名乗った男は、「ばぁんっ…」と指鉄砲を撃つ動作をし、その後指先にふっと息を吹きかけた。
「っ!!ええええええッ?!」
その名前に思わず驚いた少女が能力を弱めてしまい、後ろに隠しておいたモニター画面が露わになった。
「あなたの名前が…まさかゆうだんの主人公と同じだなんて……!!」
「なっ…あれは!?」
天弦が、少女の後ろにあるモニターに気が付くと、そこには『89%』と映し出されていた。天弦の表情に思わずリーダーの男も振り返り、今やっていることがバレてしまったことに気づくのだった。
「クソッ…ばれちまったか!!」
「あの野郎…ハッキングのために時間稼ぎをしていたのか…!!」
堂々とした男の立ち姿に、思わず汗が流れていく。途端に冷静になった天弦は男の背中を見た。
「てかお前…いつからそんな」
「おい!!凪と言ったか…これが狙いだったのか!!?」
天弦の声を遮り、怒ったリーダーの男がライフルを向ける。
「ふっふっふ……。ハァ―――ッハッハッハァ!!!」
絶体絶命の状況にもかかわらず、男は声高らかに笑い、拳を腰に当てる。
そして男は口を開いた。
「………え、何それ?」
「……」
「……」
「……」
周囲一帯、無言が続く。
その数秒後、ここにいた男と少女以外の全員が一斉に口を開け言った。
「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」
視線は一気に男へ集中。気まずい空気が漂い始めていた。そんな中、冷や汗を流しながら男がこの空気をかき消そうとし始める。
「え、いや全然そんなこと考えてなかったし…逆にそこまで考えてたら怖くね俺?なあ天弦」
「……まあそうだろうな。」
背後にいる天弦へに顔を向けた。直後、男は嫌な予感がしたのか、モニターの方へ顔を戻す。今は『90%』と映し出されていた。つまり、ハッキング完了まであと10%ということだろう。
すると、後ろからカチャ…。と言う音が聞こえ、目線だけ後ろへ移す。そこには完全にコンピュータに狙いを定めた兵士達がいた。
「ん……?ちょっと待って。すごいこの感じ、嫌な予感がするんですけど。」
次は顔を上げてリーダーの男を見る。顔には血管が浮き出ていた。
震えた口元で何かを察した男は聞く。
「あ――…これってもしかして、今から銃撃戦でも始まっちゃいます……?」
にこりと今できる精一杯の笑みを浮かべて穏やかに聞くと、リーダーの男もニコリと笑みを浮かべた。
「そうなるらしいなあああああッ!!!!」
それを合図とし、両勢力一斉に射撃開始。
ガガガガガガガガガ!!!と銃弾の雨が飛び交った。
男は素早く体を下げたことで、間一髪リーダーの男の一発目を避け切った。
「コンピュータを壊せ!!そうすればあいつ等の計画は全て水の泡に出来る!!」
「わわわっ!危ないなもうっ!!」
兵隊長が兵士に指示をし、コンピュータへ向かって集中砲火。しかし少女から現れる無数の紙が全弾受け止めていた。
壁は次第に削ぎ落とされ、鉄製の机に乗ったコーヒーカップは一瞬にして木っ端微塵。零れるコーヒーすら銃弾によって辺りへ飛び散った。勿体ないよぉ!!と男が抗議するも、もはや銃声で誰にも聞こえていない。
「ちょちょちょちょちょちょちょ!俺はッ!銃なんてッ!持ってないんだぞ!!」
コンピュータのちょうど前にいた男は、死に物狂いで降り注ぐ銃弾を避ける。時々避けきれなかった銃弾が男の髪の毛や服を掠めていった。
「おい"L"!ちゃんとライフルを構えんかい!!」
「うるさいっス"A"さん!こうなったらどこに撃ってもその内当たるっスよおおお!!」
ぎゃははははは!!と笑いながら"L"はライフルを乱射する。
亜人3人の持つライフルは散弾銃のような弾が発射され、それに加え高い連射速度を誇っていた。しかしその分反動は大きいので、"L"はその反動に耐えられておらず、体が右へ左へ行ったり来たり。そんな"L"のおかげで男も必死で右へ左へ行ったり来たり。
そんなライフルを"片手"で撃つリーダーの男は、もう片方で拳銃を構え、一発一発を冷静に兵士の顔面を撃ち抜いていく。
「くそっ…!あの女が厄介だ……!!」
少女は3人の後方でコンピュータを守りつつ、3人へ直撃する銃弾を防いでいる。それによって、今や数の少ない亜人達の方が優勢。兵士は一人、また一人と倒れる。どれも正確に眉間を撃ち抜かれ、どくっ…どくっ…。と血が溢れ出ていた。
コンピュータのモニターはやがて『95%』と映し出す。そこでやっと互いにライフルの弾が尽きた。
「ふん…意外に生き残ったな。あと40人余りか。」
「だめだ、あと少しでハッキングが完了してしまう…!……ん?」
モニターの画面に映し出される数字は、96…97…と刻一刻と増えていく。
天弦は何もできなかったあまり言葉を零す。だがその時、天弦はあるものを見つけた。
すると、勝利を確信したリーダーの男は、にやりと笑みを浮かべた。
「残念だったな!!お前等人間如きが束になってかかって来ようが、俺達亜人族には到底敵わないんだよ!!」
豪快に笑い、天弦の事を見ながら勝利の雄叫びを上げた。
モニターの数字は、ついに『99%』と映し出される。万事休すか。為すすべなく立ち尽くす天弦、そして兵士達。
しかしその中に――
――"男"の姿は無かった。
「残念だったのはお前達の方だったな。」
「んぅッ?!」
次の瞬間。
ガシャアァァァァンッ!!!
「「「「!!?」」」」
硬いものが当たった音が周囲に鳴り響いた。
何が起こった?リーダーの男は振り返り、コンピュータの方を見た。
そこには、無残にも火花散るコンピュータの姿があった。直後、ボォン!!と大きな音を立て、コンピュータは完全に故障。黒い煙が立ちこめ、モニター画面は『99%』の所で完全に止まってしまった。
コンピュータの近くには瓦礫が落ちており、それによってコンピュータが破壊されたようだ。
「一体…一体誰がこんな事を…!!」
「……ゴホッ、ゴホッゴホッ!!」
リーダーの男がそう言うと、どこからか咳が聞こえてくる。咳をする人物を探し、辺りを見渡した。
すると、
「俺の事を完全に見落としていたお前たちの唯一のミスだ。」
「「「「!?」」」」
4人の亜人は、一斉にモニターの上を見た。
そこにいたのは
「っ!!貴様ァッ!いつからそこに!?」
「いやぁ…まさかこんな簡単に背後を取れちゃうなんてねぇ……。」
そこには、忍者のように壁に張り付く男の姿があった。
ほっ!と壁を軽く蹴ると、一直線に天弦の方へ飛ぶ。天弦の顔を見ながら地面に片足で着地すると、亜人達にヒーローポーズ(背中ver.)を披露。
軽く服をはたき、亜人達の方へ振り返った。
「さあて、『いつからそこに!?』なんて言われちゃったら、もう説明するしか無いよね?」
いつぞやは周りに誰もいなかったが、今度は周りに人がいる中で男は説明を始めた。
「あんたらが銃乱射してる時。いつの間にか俺の姿が無かったよね?」
「っ!!」
リーダーの男の反応に、ちょっとだけ楽しくなってきた男は続けて説明をする。
「実際俺はその時もあんたらの前にいた。ただ俺は地面に伏せていただけだ。」
「何ッ!?」
「『ええ?!たったそれだけで?!』って顔をしてるな。でもホントにそれだけで、あんたらの視界には消えちまったのさ。」
まるで探偵が犯人の証拠を言う時のように、男はカツカツと中央で右に左に歩き始めた。
「アンタらは天弦達を、そして天弦達はアンタらに集中。するとちょうど俺がいた中心なんて見てる暇なんて無いだろ?そこがお二方の視覚にとって"死角"になったのさ!!」
あ、今の笑う所だよ?と付け加えた。
「後はこっそり床に這いつくばって移動、ゴキブリみたいにね。そして途中で瓦礫を持って、そのまま壁に張り付いた。俺、身体能力高いんでこういうことも出来るのさ。」
「……ならば、壁に移動した時に流れ弾がお前に当たってもおかしくないだろ!どうしてお前は"無傷"なんだ!!?」
リーダーの男が声を大にして聞く。
男は待っていた!!と言わんばかりに足を止めると、少女の方を見た。
「嬢ちゃんのおかげさ。コンピュータに当たりそうな銃弾。その全てを紙で防いでくれたから無傷で済んだ。」
「っ!!そこまで考えてたの……?」
汗を垂らす少女に、助かったよ嬢ちゃん。と笑顔で言うと、再びリーダーの男に顔を向ける。
「後は今起こった通りさ。てな感じでハッキングを『99%』ぎりぎりの所で止められたのさ。さあ!これですべてが分かったね!」
右手を銃の形にしリーダーの男へ構えた。そしてテンションの高かった男はすんっ、と真剣な表情になり、低い口調で言った。
「それじゃあ、おとなしくここから出ていくんだな。」




