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【本編完結済】夕日と共に弾丸を~金無しの俺がホテルに住もうとしたら、大事件に巻き込まれるハメになった~  作者: さどがしま たつや


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4. 意気投合!?しかし事件は動き出す。

 周囲一帯に緊張が走る。

 ベランダのアウトドアチェアでくつろいでいたのは、ただの少女ではなく、亜人の少女だった。すると、少女は顔を元の方向に戻し、再び何かをし始めた。


「ッ!!貴様…!」


 その姿を見た天弦が怒りのあまり拳銃の引き金を引こうとした。しかし、それを男が手で塞ぐ。


「何をッ!?」


「落ち着け天弦。亜人だって分かったからって言っても、すぐに拳銃を撃とうとするのは違ぇぜ。」


「何言ってるんだお前っ」

「あいつに殺意があるんなら、俺達がベランダに出た瞬間に殺せる筈さ。だけど今俺達は生きてる。ってことは、つまりあいつに殺意はないってことだ。」


 いつもの男とは全く違い、冷静な言い分に天弦は口ごもった。

 とりあえず銃を撃たないだろう。と判断すると、男は手を下ろし、天弦を見た。


「俺が行く。きっと話が通じる子さ。」


「ッ!!攻撃してきたらどうするんだ?!」


「その時はその時の俺に任せるさ。」


 天弦に向かって笑顔を見せ、男は両手を上げながら少女の方へ近づいていった。


「やぁ…お嬢さん、俺には戦う意思がないんだ。多分君も無いと思うんだ、だから話を……」


 距離は次第に近づいていき、ようやく少女が何をしているのかが分かった。

 彼女は古い"ゲーム機"を手に持ち、何かをプレイしていた。男は一体何をプレイしているのか、恐る恐るそのゲーム画面を覗くことにした。


「話を…話を、ね………って。」


 ぴたり。男はその場で硬直。

 そして数秒後。


「あああああああああああああッ!!!」


 少女がプレイしているゲーム画面を咄嗟に指を差して大声を上げた。


「お前がやってるの……『ゆうだん』じゃねえかああああ!!!」


 ゲーム画面には、『ゆうだん』の主人公『凪』の姿があり、8bitのこのゲームの代表曲が流れていた。

 すると少女はそう言って大声を出す男に向かって、思わず「えっ」と声を漏らす。


「もしかして、あなた『ゆうだん』やったことがあるの?!」


「やったことがあるも何も、今!さっき!ちょうど!やってたところだよ!!」


 勢いよく革ジャンの胸ポケットから少女と同じような古いゲーム機を取り出し、画面を見せた。『GAME OVER』とでかでかと映っていた。


「あぁッ!?いつの間にか死んでる!また最初からなんだがあッ?!」


 見せておいて嘆き始める男に、少女は少し考える仕草をした。

 すると何か閃いたのか、少女は男に向かって言った。


「じゃあ、ゆうだんをやったことがある人しか分からない凪のセリフを言って!!」


「えぇ?セリフか……」


 男は数秒程考えた後、少女に向かって口を開く。


「"この世界で何が正しいかなんて分からない。俺は、俺が正しいと思った世界のために銃を撃つ"」


「……!!」


 すると、少女は明らかに顔を上気させ、きらきらと輝いた目で男を見た。


「~~~ッ!あなたっ!!本当にゆうだんをやっているのね!!」


「ああそうさ!!まさかお前もやってるだなんて!!」


 と同時に、少女と男はバチィンッ!!といい音を鳴らして手を叩き合わせ、笑顔をして見せた。


「……もう勝手にやってろ。」


 意味の分からない意気投合に、天弦はそう言うしかできなかった。

 そんなこんなで、男と少女のゆうだんトークが繰り広げられる。


「あなたどこまでプレイしたのっ?」


「ふっふっふ。プレイ歴15年の俺を舐めるなぁ!既に10回以上はクリアしている。」


「えええそんなに!?私なんてまだ一回もクリア出来てないのに…。」


「そうなのかぁ?!俺に任せとけ!アドバイスしてやっから!」


 ええ本当に!と嬉しそうに言う少女の隣へ男は椅子を持っていき、少女のゲーム画面を見ながらアドバイスをし始めた。

 ちょうどそこに、兵隊長が兵士達を10人ほど引き連れて到着したのだが


「天弦さん無事ですか?!……と、言うか……。」


「大丈夫だ、冷静に敵の攻撃を見極めるんだ……っ、今!!」


「えいっ!」


 男のタイミングに合わせ、少女はゲーム機のボタンを押しこむ。


『キィィンッ!!』


「わっ!すごいっ!すごいよ!あなた天才!!」


 防ぐのに苦労していたところがいとも簡単に出来てしまい、思わず男の方に顔を向け目を輝かせた。


「へっへ~んどうよ!ってこっち見てんじゃねえ!画面に集中しないとぉ!!」


 しかしそう言った通り、次の攻撃を避けられず直撃。『GAME OVER』の画面が映し出される。


「「あ」」


「「あああああああああっ!!!」」


「どういう状況なんですかこれ…?」


「俺も知りたい。」


 兵隊長の視界に映る意味不明の光景にさすがに戸惑っている様子。天弦すら思考を放棄していた。

 2人はこの後もゆうだんをプレイ。その間も天弦と兵士達は一応気を緩めずにいた。終始楽しそうに会話を続けながらステージを進め、およそ10分後、8bitによる祝福の音楽と共に『STAGE CLEAR』と画面上に映し出された。


「「や、」」


「「やったあっ!!」」


 2人は顔を見合わせ笑顔でハイタッチ。


「ありがとうっお兄さん!あなたのアドバイスのおかげでやっとここまで来れた!!」


「どぉってことねぇさ!それに嬢ちゃんも俺のアドバイスを聞いて、的確に操作できてるところがすげぇぜ!ゲームクリアもあと少しってとこだ!!」


 2人の空気は祝福ムード。しかしそんな時、男はふいに聞いた。


「そういや、嬢ちゃん。あんたどうしてここに来たんだ?」


「やったやったあ~~!…って、すっごいナチュラルに聞くね?あなた。

 ……ま、いいよ。クリア出来たお礼に教えてあげる。」


「「ッ!!?」」


 その一言で、止まっていた事件が再び動き始める。ゲーム画面では次のステージに入る前のストーリーに関わる重要な会話シーンが始まり、それと同時に少女も口を開いた。


「私達がここに来た理由…それは、"人間政府の機密情報"、それを手に入れることよ。」


「「「ッ!!!」」」


 天弦の背後にいた兵士達が一斉に少女へ向けM16ライフルを構える。

 普通なら取り乱すような状況だが、そんなことは気にせず、少女は話を続けた。


「ねぇ、知ってる?今の時代、"戦争"を有利にするために必要なのは、戦うための武器でも兵器でも無いの。」


 ゲーム画面の会話を進めながら、少女は言った。


「どれだけ"情報"を持っているかなんだよ。」


 その瞬間だけ、少女はにこりと微笑んで天弦の方を見た。しかし、目は笑っていなかった。思わず後退りをし、息を呑む。


「……なあ天弦、このホテル相当やべぇもん持ってるじゃねえか。あ、こっからのシーンちゃんと見といたほうがいいよ。」


「そうなの?分かった。」


「くそっ…何故ここにあると分かった!?」


 声を荒げながら、天弦は少女へ拳銃を構えた。


「おいおいおい!天弦ッ落ち着けよ!!」


「落ち着いてられるか!!」


 天弦は鼻息を荒くし、取り乱した様子だった。するとしびれを切らしたのか、少女はゲーム画面を見ながら答える。


「人間軍の色々な施設を襲撃して情報を集めてたんだ。そしたらここにあるってことが分かったの。」


「クソッたれが…度々起こった襲撃事件は、全てお前の仕業だったのか……!!」


「人間ってさ。強そうに見えて意外に弱いもん。簡単に情報を集められちゃった。」


「貴様ッ!!」


「待て!!!」


 天弦が引き金を引こうとした瞬間、男の声がそれを止めた。怒りが混じったような声だ。

 ぴくり。と天弦の体が動き、「お前…。」と声を零した後、男はゆっくりと天弦の方に鋭い視線を向け、低い口調で言った。


「ゆうだんさ、今めちゃくちゃ重要なとこだから待て。」


「お前を先に殺してやろうか!!」


 無鉄砲な発言に、さすがに天弦は怒号を浴びせる。先ほどまでの冷静沈着な天弦はどこへやら。そんな天弦へ少女は言った。


「そうよ。えっと、天弦さん?と兵士さん達。それよりまだここにいて大丈夫なの?もしかしてさっきの私の言葉、聞き忘れた?」


「どういうことだ?!」


「あらら…天弦先生、怒りのあまり脊髄反射になっちゃってるよ。」


 お前は黙ってろ!!と男へ銃を向け、一喝。へいへい。と男は口にチャックをする仕草をして黙った。再び少女へ銃口を向けると、少女は、はぁ…。とため息をつく。


「ここに来た理由を言った時、私"達"って言ったの覚えてる?」


「それが一体………。っ!まさか!!」


 少女は再び顔を天弦の方へ向けると、にこりと微笑んだ。

 その時。


 ドゴォォォォォンッ!!!


 爆発音と共に地響きが起こる。

 瞬間、爆発による爆風が男達を襲い、風圧で窓ガラスが一斉に割れ、きらきらと地面に落ちていった。

 その後も連続して何度も爆発音が続く。建物にはひびが走り、暫くするとホテル内の警報が鳴った。

 遠くからは宿泊者の悲鳴も聞こえ、辺りにパニックが巻き起こっていくのが分かる。


「わわわわわっ、すげぇ爆発!一体どこで?」


 直後、ホテル客室の方向から建物が崩れていく音が聞こえた。


「ホテル内か!」


「ふふっ。うちのリーダーはね、人間のことすごい恨んでるの。だから早くしないと、ここに泊まってる関係のない人間さんたちも、みんな殺されちゃうかもしれないよ?」


 淡々と言いながら、少女はゲーム画面を見ている。すると、画面に『作戦開始』と映し出され、ゲームスタートの合図が鳴った。


「くそッ!!A班はすぐに民間人の保護!!B班は襲撃者の対処だ!!お前達はここに残れ!俺は先に行く!」


 兵隊長はぐっと拳を強く握り、無線通信機を使い兵士達へ命令すると、すぐに行動を開始した。

 ベランダに残っているのは天弦と兵士10人、そして男と少女だけになった。緊張が張り詰める空気感。しかしそんな状況とは反対に、男と少女はまたゆうだんをプレイし始めた。


「…ッ!!貴様ァァァ!!」


「ちょ、待て!撃つな!!」


 天弦はついに男の声を無視し、少女に向かって拳銃の引き金に力を入れた。

 硝煙の匂いと共に9mm口径の弾丸は撃ち出され、まっすぐ風を切って飛んでいく。

 このままいけば少女の頭を完全に撃ち抜く。だが、少女は全く気にせず主人公を操作していた。


 次の瞬間。


「――っ!嬢ちゃん、それって……。」


「おいおい…まじかよ……。」


 少女の体から長細い『紙』のようなものが何本も現れ、1本1本が意思を持っているように、無数の紙は弾丸を包み込んだ。

 衝突音など何も無く、蕾が開くように紙が開くと、シュゥゥゥ…と弾丸から煙が立っているのが分かった。やがて煙が消え去るとカランッと弾丸は地面に落ちる。


「『変異能力型』の亜人か……!!」


「3人の兵士を殺したのも、やっぱりお前だったのかぁ。」


 天弦はその姿を見て額から汗を一筋流した。シュルルルルと役目を終えた無数の紙が少女の体に戻っていくと、突然「ああ~~っ!!」と叫んだ。何だ?!と思った男がひょいとゲーム機の画面を見る。


「~~ッ!もうっ!!天弦さんのせいで死んじゃったじゃない!!」


「あああっ!おいコラァッ天弦!!なにやってくれちゃってんの!!」


「ほんとお前いい加減にしろよ?!」


 『GAME OVER』の画面を見せながら、ぷんすか怒る男と少女に、天弦は主に男に怒鳴りつけたのだった。

さあ、突如として襲撃が始まったホテルサンセットケープ。

果たして少女は無事ゆうだんをクリアすることは出来るのか?!そして男はずっとふざけたままなのか?!

次話から一気に文字数が増えていきます。残り3話で終わらすためですね。ごめんなさい。

でもその分、よりストーリーが面白くなってると思います。良い訳ですね。ごめんなさい。

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