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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十六章 ハーレムの行方

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それぞれの道(後編)

「俺は、まだ、知らない世界を見てみたい」

 緊張で喉がごくりと鳴った。

 三人の視線が痛いくらいだ。


「田舎の村から街へ出て、隣の国に来た。国境沿いのトゥルメル領から王都まで来て、いろんな人や考え方に出会った。魔法を習うこともできた。

 まだまだ、いろんな面白いことがあるはずだ」

 冒険者として活動しなくても、「冒険」はできる。むしろ、人生が冒険と言ってもいい。


「で、具体的には?」

 ルナが問いかける。


「アーデンさんたちが、国際的な機関に呼ばれているんだ。それに同行したいと思っている。

 もっと広い世界を見て、何がしたいか、何ができるか考えたい」


「え……そっちに行くの?」

 ルナが脱力したように呟いた。


「ん? どっちに行くと思ってたんだ?」


「オンの専属とか。このクランでも期待されてると思うよ」


 あ~。ルナたちには「殺す」って言われたことは内緒にしているからな。

 あのとき、アーデンが止めてくれなかったら、どうなっていたことやら……。


「俺の手には負えないかな。

 美女三人に囲まれているだけで嫉妬されているのに、もう一人増えるとかないだろ」

 笑いに持っていこうとして、失敗した。これじゃ、ハーレムに鼻の下を伸ばすオッサンの発想だ。


「俺が同行しなくても、何件か依頼をこなせているんだ。オンはもう大丈夫だよ」

 いや、正直に言ってしまえば、全然大丈夫じゃない。あの魔力の前に、そんな日は来ないだろう。

 そのあたりは、クランを代表してバスラに引き受けてもらいたい。

 もともとその予定なんだから、俺が出しゃばることもないさ。



「え~と、みんなそれぞれ、やりたいことがあるんだね。

 このクランからは脱退するということは、決まりでいいのかな?」


「うん。宗教団体とか妖精族とかから守ってもらったけど、腰を据えるのはちょっと違う気がするにゃ」

 サァラはそう言ったけれど、たぶんオンと離れたいというのもあるんだろう。


「私は目覚めてから間もないから、積極的にこのクランに所属したいという気持ちはないわね」

 フォンが静かに言った。


「んじゃあ、クランは脱退する方向で。

 ――というか、緊急事態だったから加入手続きしてない気がする」

 ルナがこめかみに指を当てて考え、やっぱり記憶がないと言った。


「加入届とか、入会金とか?」

 アーデンのクランを解散したときは、集めた金とクランの維持費、解散に当たってメンバーに返さないといけない金の計算が大変だった。


「少なくともあたしはやってない。トーマとサァラは……やってないよね。

 あたしたち、すごく特別扱いされてたんだな」


「あの事務長がよく黙ってるねん」

 サァラは何か叱られたことを思い出しているようだ。


「脱退したいって言ったら怒られそう。気が重いけど、言うしかないもんね」

 ルナが自分を励ますように言う。



 ここで、俺は言わなければならない。

「えっと、俺は冒険者パーティーも抜けようと思う」


「なんでにゃ?」

 サァラの毛が逆立った。


「いや……実力的についていけないし。国際機関って遠いらしいし、用事が終わったら他の街に行きたくなるかもしれないし。戻ってくると約束できないから、ケジメをつけた方がいいと思うんだ」

 なんか、言い訳してるみたいだな。


「それなら、やめたくなったときに抜ける手続きをすればいいのじゃなくて?」

 フォンが穏やかに言う。

「私は花猫風月のまま、妖精の国に行きたいわ。こちらに戻らないと決めたら、脱退の手続きをしようと思うの。それでいいかしら?」


「そう、そう。今、急いで決める必要はないにゃ」

 サァラが机をぱしぱしと叩く。


「それに、パーティーメンバーのままの方が、連絡も取りやすいしさ」

 ルナにも引き留められる。


 どこかで、三人のパーティーに居候させてもらっているという意識があった。だけど、俺もちゃんと仲間だったんだ。

 俺は頬杖をついて、表情を隠すようにした。変な顔を見られないように……。


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