それぞれの道(前編)
翌朝、ルナに話し合いをしようと声をかけられた。
小さな会議室を借りて、四人で顔をつきあわせた。
少し緊張する。以前なら、おしゃべりが絶えなかったのにな。
ルナが口火を切った。
「あたしたち『花猫風月』の今後について、話し合おう。今までとは違うやり方が必要なんだと思う。
みんな、そうだろう?」
俺たちは素直にうなずいた。
「じゃあ、一人ずつ、思うところを言っていこう。まずは否定せずに、最後まで聞くこと。
じゃあ、サァラから」
とルナが指名した。
サァラは軽く咳払いをした。
「あたいは出産のために、故郷の山小屋に戻ろうと思う。子育てが一段落したら、またパーティーを組みたいにゃ」
緊張した面持ちで、少し幼く見える。
「幼なじみと家庭を築くんじゃないのか?」
猫獣人の子育てが何歳くらいで一段落するのか、よく知らないが……。
「猫獣人は、子作りの相手を毎回変えたりするって言ったでしょ。
子育ても、協力しない雄がたくさんいるにゃ」
「あまり『家族』にこだわらないのか?」
「兄弟姉妹で仲がいいとかはあるけど。雄は『家庭』に興味ある人とない人がいるにゃ」
「人族とずいぶん違うな」
いや、人族でも父親が育児に協力するかは、人によるか。
「そう? 父親が全員違うとか、普通だし。子連れ冒険者とか、よくない?」
サァラがあっけらかんとして言った。思わぬ妊娠で落ち込んでいたが、吹っ切れたのか。
「サァラ、子どもが冒険者になりたいかは、ちゃんと訊きなよ?」
ルナが釘を刺した。
「あ、そっか。そうだにゃ」
サァラみたいな感覚だったら、俺が実家で腫れ物扱いされることもなかったよな。
本人が気にしなければ、些細なことなんだ。
「サァラ、ありがと」
「ん? なに?」
「元気な子を産めよ」
「任せて!」
サァラは両手を顔の横で握った。可愛いポーズに頬が緩むが、もうすぐ母親になるんだよな。
次は誰が発言するか、目で探り合う。三人の緊張を余所に、サァラの尻尾がゆらゆらと揺れている。
ルナがふっと息を吐いて、話し出した。
「あたしはサァラの出産を手伝おうと思う。孤児院で手伝ったことがあるし」
サァラがにこにこしながら聞いているから、二人の間で話はついているのだろう。
「産後に一段落したら、あたしは師匠の手伝いをしてもいいし。
王都より、トゥルメル領ののんびりした空気が性に合ってる」
ルナはすっきりした顔をしていた。
「居場所を固定していたら、他の人が戻ってきて再結成しようって話になるかもしれないじゃん?」
ルナはそう言って、俺とフォンを見た。
まだ何もしゃべっていないが、俺たちが離れるかもしれないと考えているんだろう。
つまり、俺が一度離れても戻ってくるのを待っているというのだろうか。
ルナとサァラはBランクにあがったから、どこの街でも歓迎されるだろう。さらに言うと、いろいろなパーティーから勧誘を受けるに違いない。
次は、俺かフォンの番だ――




