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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十六章 ハーレムの行方

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オンの暴走

「どうして、駄目なの? 暴力は振るってないじゃないですか」

 オンは俺を睨んできた。

 ……本当にわからないんだな。


「仲間を罠に嵌めたんだ。ある意味、力尽くってことだろう」

 というか、そういうことを平気でやる人は信用できない。「仲間」とも呼びたくないのが本音だ。


「――手に入らないなら、殺しちゃってもいいですか。何が悪くて、何がいいのか、わからない。もう、面倒くさいです」

 オンが不気味に笑う。


「い、いいわけ……ないだろ」

 殺気を感じた。冗談ではなさそうだと思いながら、冗談のように流す。口ごもったら駄目だ。


 弓使いのエルフ、セリアも都合が悪くなったら、殺してなかったことにしようとした。簡単な方に流されたら、行き着く先は犯罪者だぞ。


 けれど、何と言って説得すればいい? 俺の言葉はこんな状態になったオンに対して、無力だ。

 走ったところで、逃げ切れないだろう。



 オンは風魔法で、壁を作った。前方を歩くリーダーたちと引き離されてしまう。

 後ろにいるのは、アーデンだけだ。


 戦う? 戦闘になったら歯が立たない。なんでこんなことになった? 冷や汗が出る。



「おーい、そこまでだ」

 アーデンが割って入る。


「初めての挫折で、自棄になるんじゃねぇよ。せっかくぬいぐるみが手に入ったんだろ。

 何年もかけて居場所を作ったのに、失恋ごときで全てを灰燼に期すなよ」


 え、俺がオンをふったことになるのか? 恋愛じゃなく、頼りになるとかそういうヤツだろ?


「……失恋? 妾が人族ごときに?」

 オンも驚いているじゃないか。


「ははは。本性が出てるぞ。抑えろ、抑えろ」

 アーデンは、オンに飴を差し出した。それを口に入れると、表情が緩んだ。

「甘いです」

「そうだろ。落ち着け」

 アーデンは俺にも飴をくれた。ガチガチに緊張して、息が浅くなっていた。

「……ありがとうございます」


「さて、風の壁を解除してくれ」

 そう言うアーデンに、オンは素直に従った。

 こ、怖かった。本当に殺されるかと思った。絶対に敵わないって、肌でわかった。


 アーデンがオンの隣を歩く。

「一人だけ突出して強いのは、寂しいだろ。俺はこの国の王都なら好敵手がいただろうが、活躍していた国では一人勝ち状態だった」


 ああ。俺たちの故郷の話だな。


「仲間が欲しけりゃ、もっと強い奴らがいる場所に移るか、周りに合わせるか――どうしたいか自分で考えろ。

 魔族の国に帰るのは嫌なんだろ?」


「あたしだって甘えたいし、相談して慰められたいし……。これは、仲間が欲しいということなのでしょうか?」


 オンとこういう話をしたことはなかった。そうか、寂しかったのか。


「俺にはそう見えるけどな。

 それなら、すぐに力でねじ伏せればいいと考えるのをやめるんだ。

 討伐で、いざという時の最後の切り札になれば慕われる。出番になって乞われるまで辛抱できれば、な。そういう関係も『仲間』と言えると思うぞ」


「……トーマは、もう駄目ですか?」

 突然話を振られた。


「そうだな……。相談されることもなく、オンの思うように誘導されていたなんて……。

 サァラの人生をオモチャにしたのも、駄目だ」

 うまくまとめられないが、気持ちは伝えないといけない。


「トーマのことは諦めろ。サァラを嵌めたことがバレたから、こいつはお前を一生許さないぞ。

 初めてできた『家族』だったんだ」


「あたしは、やり方を間違えました?」


 俺はうなずいた。「そんなことないよ」なんて、とても言えない。


「まあ、そういうのも経験だな。偉そうに言う俺だって、自分のクランは滅茶苦茶になって消滅したし、嫁に逃げられたし」

 ガハハとアーデンが笑う。

 一緒になって笑っていいものか……オンは曖昧に笑っているが、俺にも判断が難しい。


 俺を蚊帳の外に置いて、二人は人生論を語り合っている。強い人たちは、強さ故の孤独があるのかもしれない。

 口の中の飴を転がす。なんだか、ほろ苦い味がした。


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