表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十六章 ハーレムの行方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

286/298

混成討伐パーティー

 フォンが繭から出たら、このクランにいるべき理由がなくなる――以前は、そんな話をしていた。

 今はそれどころではない。冒険者パーティーの存続の危機だ。


 ……フォンが療養中なので、実際に「花猫風月」で活動する目途も立っていないが。


 フォンの日常の世話はクランで働く人たちに任せることになった。

 俺たちは以前のフォンを思い浮かべすぎて、今のフォンによくないと判断されたのだ。


 俺たち三人で活動するかというと、そうもいかない。


 サァラは格闘家だが、妊娠中なので従来の戦い方はできない。身軽さを活かして、Cランクパーティーに参加して斥候のような役割を担っている。


 ルナは剣士の増員をしたいような依頼で、声をかけられている。


 俺はというと、遠征の準備や作戦の助言を求められている。AランクやBランクのパーティーに呼ばれるものだから、Cランクの人たちからの嫉妬がすごい。

 四人部屋の居心地は日に日に悪くなる。嫉妬されても困るが、自分を上位のパーティーに紹介しろと言われるのもウザい。


 実力が伴っていないのに、上位パーティーに参加するのは怖いんだぞ。攻撃のメンバーに数えられていないのも悔しいが、流れ弾から自分の身を守らなければいけない。

 猿系のモンスターから荷物を守るのも、あいつら頭がいいから大変なんだ。




 そして今日は、難関依頼に同行している。

 オンとアーデンも加えると話を聞いたときは、てっきり前準備だけで、俺は現地には行かないつもりだったんだが。



 事前の打ち合わせで聞いた依頼内容は、驚くというか、呆れるものだった。


 精神攻撃をしてくる大きな鹿系のモンスターを、できるだけ傷をつけないように討伐しろとのこと。生け捕りできれば、尚よしと――無茶を言う。

 お貴族様の道楽だろう。

「剥製を作るんですかね」

 俺は雑談の中で、質問した。


 今回のリーダーであるエルフは、眉間にしわを作った。

「特に腹部を傷つけるなと言うから、おそらくジャ香を取るつもりなんだろう」

「ジャコウですか?」

「『ジャ香のう』という臓器がある。メスを惹きつけたり、縄張りを主張するマーキングをしたりする香りを分泌するんだ。それを使って香水でも作るのだろう」

「え? モンスターの内臓からですか?」

 ちょっと、悪趣味な気がする。


「やりようによっては、媚薬や催淫剤が作れるのかもしれない」

「すごい世界があるんですね」

 王城の迎賓館に滞在しているとき、貴族がつけている香水が沢山あることを知った。知識としてではなく、すれ違う香りがみんな違うのだ。いい感じの人も、臭くて逆効果だと感じる人もいたな。


 とりあえず、俺はその『ジャ香のう』というものを調べて、対策を考えた。

 それを伝えたら仕事が終わるかと思いきや、現地まで来いと……。

「AランクとBランクの混成パーティーとか、無理なんですけど」

「責任を持って、作戦を見届けてくれ」

 そう言われたら、断りにくいじゃないか。




 岩場で野営をした翌日の早朝。

 目当てのモンスターに遭遇した。縄張りの中で不審者が寝泊まりしているのだから、奴は攻撃する気で向かってきている。


 オンは風魔法で広範囲に壁を作った。岩場は崩れやすく、谷底に落ちたら助からない。

 だから、転がってもオンの壁まで、という安全策だ。けれど、ぶつかった人は停止するというより、跳ね飛ばされている。

 死ぬよりはマシだが、それなりに痛そうだ。


 鋭い刃物の武器は持てない。刃先に布や革袋をつけて、逃げないように威嚇しているだけ。

 オン以外の風の魔法使いたちが、包囲網を作っている。


 水の魔法使いは、モンスターの尻の辺りにウォーターボールを貼り付かせていた。ジャ香を出されないようにだ。

 幻覚作用のあるジャ香を出されたら、俺たちの誰かが自殺行為をしかねない。いや、同士討ちを始める危険性もある。


 アーデンが木刀を構えて、間合いを計っている。魔力を通さない布を巻いた木刀だ。

 義足になったアーデンだが、剣筋の鋭さは現役のAランクよりも上らしい。


 ウィンドボールを何発も当てられ、逃走経路を塞がれて、モンスターは苛立っている。

 後ろ足で、冒険者の一人が蹴られた。岩と岩の間に倒れ込み、立ち上がれないようだ。


 モンスターが蹴り上げた動きに、ウォーターボールがついていけずに、一瞬外れた。

 もわぁっと野性味のある香りが漂う。


 腕で嗅がないように防御したが、吸い込んでしまった。

 脳裏に、目を潤ませて甘えてくるサァラの媚態が浮かぶ。

「ねぇ、トーマ」と耳元で囁く声や喘ぎ声が……やめてくれ!


 ぶわっと強烈な風が吹いた。

 オンが風の壁を一旦解除して、この場のジャ香を吹き飛ばした。

 リーダーが「正気に戻れ!」と叫んだ。

 涙を流している人もいるから、幻覚を見せられたのは俺だけじゃなさそうだ。くそ。モンスターのくせに、ふざけやがって。


 すぐに魔法使いがウォーターボールを張り、オンが風の壁を再展開して、俺たちは体制を整えた。


 アーデンが、モンスターの眉間を上段から叩いた。

 モンスターがぐっと体勢を下げたところで、盗賊役がモンスターの背中に飛び乗る。首に縄で作った大きな輪っかをふわりとかけ、紐を引っ張って輪を小さくする。


 その縄の端を別の冒険者に向かって放り投げた。暴れ牛を取り押えるように、その縄を体重をかけて引っ張る。

 また、新たな縄を首にかけて、その縄の端もまた別の冒険者に――それを繰り返し、生け捕りに成功した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ