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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十六章 ハーレムの行方

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冒険者パーティー

「パーティー解散なんて……なんで、そんなこと言うんにゃ?」

 サァラが泣きそうな声を出した。


「サァラ、待って。フォンも、目覚めたばかりなんだ。体調が戻ってから話し合おう」

 ルナがサァラを抱き止めた。

 数日は様子見と言われていたのに、話し合いができると思ってしまった俺たちのミスだ。


「そうね。今日はこのクランの中を歩きたいわ」

「気持ちはわかるけど、まだ足に筋力が戻ってないだろう。腹がこなれた頃に、ストレッチを教えるから休んでいてくれ」

 俺はフォンにそう言って、ルナの方に近づいた。今後の方針を考え直さないといけない。


「トーマはここにいて。フォンから目を離さないで」

 ルナにそう言われて、昨日の話を思い出した。――自殺予防か。

「ああ、ごめん」

 俺はフォンの方へ戻り、椅子に腰掛けた。


「あのさ、名前なんだけど長いから『フォン』って呼んでいいか?」

「……わかったわ」

 素っ気ない返事に、俺も泣きたくなった。



 フォンはベッドで静かに過ごしている。新聞や本を読みたがったので、ルナに持って来てもらった。

 すぐに疲れてしまうようで、一日の半分を寝て過ごしている。



 数日後、魔法使いのオルドがフォンを訪ねて、クランハウスに来た。

 その日は俺がフォンの当番だったので、すぐに案内した。


「オルドさんにも大変お世話になりました。繭から出ることができて……」

 俺は廊下を歩きながらお礼を伝える。

「別人みたいになったと聞いたが、記憶喪失ではないんだな?」

 オルドは俺の言葉を遮った。


「ええ。記憶はあります。あ、ここです。フォン、起きてるか?」

 扉をノックして、返事を待ってから部屋に入った。


「オルドさん。お久しぶりです」

 フォンは、俺たちに向き合うときと同じ温度で声をかけた。

「サークレットの呪縛から解き放たれて、よかったな」

 王城内の魔塔で、二人は何ヶ月もその研究をしていたのだ。


「はい。思考がクリアになりました」

「……そうか。目覚めたら巨大クランに所属していて、驚いたろう」

「まだ、この部屋から出ていないのです」

 元々距離が近くないせいか、俺たちとしゃべるときのような、ぎこちなさはない。それを悔しいと感じてしまう心を、押さえつけた。


「歩けるようになったら、王城の魔塔に元気な姿を見せてほしいそうだ。私が王都にいる間なら、同行するから声をかけてくれ」

「トゥルメル領主の王都邸ですか?」

 俺は宿泊先を確認しなければと思い、話に割り込んだ。


「いや。今回は商隊の護衛だから、冒険者街の宿にいる」

 そんな会話をして、オルドの見舞いは終わった。



 廊下に出ると、オルドは声を潜めた。

「サァラが妊娠したそうだな。拠点をトゥルメル領に戻すなら、『光牙の道標』と協力関係を結ぶことも選択肢に入れてくれ」

「え?」

「王都より里帰り出産の方がいいだろう?

 活動できないメンバーがいると、受注できる依頼が限られる。ルナがBランクに昇級したのだから、遠慮なく来ればいい」

「それは、光牙の道標の総意ですか?」

「ああ。ぬいぐるみの護衛任務の時、俺たちはうまくやっていたと思わないか?」


「そう……ですね」

 自分たちのパーティーが解散の危機であることは、言えなかった。まだ確定じゃないし……。


「ベルーフがお前と遊びたいと言っていたぞ」

「え、それはお断りしたいです」

 親父ギャグを飛ばす、人は好いが無神経なドワーフだ。日常的に近くにいるのは、ちょっと勘弁してほしい。


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