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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十六章 ハーレムの行方

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フォンの一言

 カイは医術書をめくりながら、説明を続ける。

「以前のフォンさんを知らないけれど、ダンジョンで精神攻撃を食らったときの症状に似ている。現実に馴染むまで、時間がかかるかもしれない。少し人が変わる可能性はあるが、心配はしなくていい」


「それ、普通に心配するでしょう?」

 ルナがカイに噛みついた。

「それは君たちの事情で、フォンは現実とのすり合わせに苦しんでいる。余計に苦しませないでやってほしい」

「苦しませるなんて、そんなこと……一刻も早く、元に戻った方が本人にとってもいいはずだ」

 俺は混乱しながら、自分は何ができるか考えた。今までの旅の話をするか? 美味しいと言っていた料理を出すか?


「トーマ。それをやったら、フォンの祖母と同じだ。落ち着け」

 バスラに言われて、息が詰まった。

 だって……そんな……同じ? あ!


「繭化した妖精族は、そのあとに生きていられなくなる者もいる。慎重に対処してやってくれ」

「どういうことにゃ?」

「心を整えることができずに、命を断つ場合がある。そもそも繭化自体が、現実からの逃避なんだ」

 レムがサァラに答えた。

 なにが「心配するな」だ。大問題じゃないか。いや、それを言ったのはカイの方か。


「きっかけは、サークレットの石の暴走ですけど……」

 だから、現実逃避という言葉に違和感がある。


「ああ、自分の体を守るための繭化なら、羽化の失敗は少ないかもね」

「……『羽化』ですか?」

「繭の中で、問題を整理しているんだよ。

 たとえば毒を受けたなら、解毒するだけでいい。だが、精神的な問題で籠もった場合は、出てくるときには何かが変わっている」

 そういえば、レムには詳しい経緯を説明していなかった。だから、一般的なことを教えてくれているんだ。


「では、どうすればいい?」

 ルナが代表してレムに質問する。

「妖精族の施設で入院治療することが、一番安全なんだが……」

「繭に入る前のフォンは、妖精族への忌避感を持っていた。その選択はしないと思う」

 俺はきっぱりとそう言った。


「とりあえず、数日は様子見だな」

 バスラがそう言って、会議をまとめた。

「彼女の世話をするのは、同じパーティーのメンバーか、それとも面識のない者がいいか……どうします?」

 事務長がそう問いかけたが、誰も答えられなかった。


「では、明日はパーティーメンバーで面倒を見てください。それで大丈夫か、面識がない者の方がいいかをフォンに訊いてみましょう」

 カイが沈黙を破って、そう言った。



 翌朝。ルナが朝食の手伝いを終えた頃、俺とサァラもフォンの部屋に集まった。

「あなたたちのこと、知っているわ。繭の周りで話していたことも……」


「ぎゃ、恥ずかしい!」ルナが顔を真っ赤にした。風の魔法使いの男と、一晩ここですごしたんだもんな。


 サァラはぷるぷると震えている。妊娠にまつわる話をたくさんしていたんだろう。おそらく、フォンに聞いてほしいことも、聞かれたくないことも。


 俺は、どうしていいかわからず、口を手で覆った。

 実力の差が開いていくという愚痴。この部屋で、「人目がないから」とやったあれこれ……。


「実力の差と、活躍できる場の違い。男女関係のもつれ――」

 フォンは他人事のように言葉を紡ぐ。あの柔らかな物腰も、気遣いも感じられない。俺の知っているフォンじゃないみたいで、胸がぎゅっと痛くなる。


 そして、数え上げていく内容が、ひどい。歯に衣を着せずに言うと、こうなるのか。……身も蓋もないな。


「……冒険者パーティーを組み続けるのは、難しいんじゃないかしら」


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― 新着の感想 ―
でしょうね。元より、成り行きに成り行きを重ね続けた無理の清算をする時期がやっと来たようなもんやろ。
まぁ、第三者として見ればその結論しかないよなぁ
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