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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十六章 ハーレムの行方

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迷い

 種族が違うって、こういうことか。改めて知る事実に、頭がついていかない。

 だけどサァラの様子を見ていて、一夫一妻制という考え方をしなければ、罪悪感を抱く必要もないのかと目から鱗が落ちた。


 それならば、俺の父親も苦しまなくてすんだだろうか。

 これくらい大らかな気持ちで、「自分の息子じゃないかもしれないけど、家族だ」って受け入れてくれたら……。

 そうしたら俺は故郷を出ることもなく、平凡な人生を歩んでいたかもしれない。



 だが、ここで一つ大きな問題がある。

 今後、サァラと男女の関係を続けるのか。


 子どもを産んだ後、なんとなく一線を引いてしまう自分が想像できた。

 猫獣人にとっては大した問題ではなくても、人族にとっては「他人の子を宿した母」という感覚だ。

 冒険者パーティーを組んでいくのは……ちょっと、難しい気がする。

 いや、『光牙の道標』みたいに、色恋なしのパーティーもある。

 けどなぁ……。最初からそうならいいけど、途中からサァラだけ拒否するのは、角が立つかもしれない。


 自分は三人と仲良くしたくせに、サァラを幼なじみと共有したくないなんて、勝手だろうか?

 いやいや、今はそれについて考えるのは、やめておこう。



「それなら、サァラが落ち込んでいたのは、なんでだ?」

 浮気をしてしまったという後ろめたさじゃなければ、落ち込む理由はなんだというのか?


「ああ、あれね。急に発情期が来て、なんだかわけが分からなくなって。記憶も曖昧なんにゃ」

 サァラが顔をしかめる。

「発情期って、前もってわかるんだよな?」

 ルナがサァラに確認した。


「うん。そのあたりは調整しながら仕事をするようにしてる。

 だからなんか、変だった。

 しかも仕事中に抑えが効かなくなるとか、今までになかった。すごく、おかしいんにゃ」

 サァラの声に熱がこもってきた。憤りが収まっていないみたいだな。



 ふいにオンの顔が浮かんだ。フォンの後釜を狙っているような言動が、ちょくちょくあるんだよな。


 岩モグラを退治したら、フォンを助ける目途が立つはずだった。

 俺たち四人が揃ったら、「花猫風月」はクランに留まる理由がなくなる。

 それで焦って、別の誰かを排除しようとした?

 ルナかサァラかどちらかがいなくなれば、そこに自分が収まれるとか……まさか、そんなこと考えないよな。


 いや、種族が違えば常識が違うと、今、実感しただろ。白か黒かなんて、簡単に判断できない。


「サァラはオンをすごく警戒してたね。彼女が何かしたんじゃないかと疑ってるの?」

 ルナが言葉を選んでいる。人を疑う言葉は、諸刃の剣だ。疑う方の品格が疑われることもある。


「……確証はないけど、怪しいと思ってる」

 サァラも、慎重に答えた。


 ときどきオンが何かを企んでいるような、黒い面を見せていたのが気になる。サァラの疑惑を、気のせいだと言い切れない。

「確証もないのに疑うのは良くない」なんて、俺には言えなかった。


 だけど、動機があるように思えて、本当にそれが動機かは疑わしいと思う。

 このクランには、たくさんの冒険者パーティーがある。オンは最終兵器として、高難易度の依頼に引っ張りだこだ。

 このクランでは下位にいる俺たちにこだわる理由なんて、ないだろ。


 そういえばあのときは、岩モグラの時間稼ぎをするという作戦中だった。サァラと案内役の幼なじみに、気付かれないようにやりたいことがあったとか?


 ん? ……「時間」?


 何か引っかかる。なんだ? 具体的に何か、もう少しで掴めそうな……。


「あ!」

 ルナの大きな声で、俺の意識はそちらに向いた。


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