意外な調査結果(前編)
「とりあえず、話を聞かせてもらいます」
ゴリラ獣人が代表して、ビーバー獣人に話しかけた。
ラッコのリーダーは興奮しているので、ちょっと離れた場所に連れて行った。力自慢の冒険者が両脇に待機している。
ビーバー獣人は拘束されていないけれど、数人が警戒態勢を取っている。武器に手をかけているのを見るだけで震えているため、もう暴れたりはしないだろうと判断された。
ラッコのリーダーと取っ組み合っているときも、武器は出さなかったしな。
「村人が入水自殺しようとしたから、助けただけだよ」
ビーバー獣人が、緊張しながらそう言った。
「え? そうなのかい?」
ゴリラ獣人は、否定せずに話を促す。
「えっと『帰りたくない、自殺を止めた責任を取れ』――て言われたから、別の場所に連れて行ったんだ。そこで生活してる。ちゃんと生きてるよ」
「でも、一人だけじゃないよな?」
「生活が落ち着いた頃に、『あたしみたいに苦しんでいる人がいる』と言い出した。だから、彼女が心配している人間が池に来た時に、彼女の言葉を伝えただけ」
「それじゃあ、消えた人たちはモンスターに襲われたのではなく、ただの家出ということか?」
「まあ、そういうこと。
『何でも押しつけられるから、もう嫌』だって。『ここに来て良かった。戻りたくない』って口癖のように言ってる人もいるよ。
それから、誘ったけど断った人もいるんだ。昨日、小舟を浮かべていた夫婦とかさ」
襲われないとわかっていたから漁をしていたのか。騙された。
「君が言っていることが、本当のことかを確認したいのだが」
「……陸から行って場所を特定されたくないから、水中を通って僕に付いてこれる人だけ案内するよ」
それって、ラッコのリーダーしか該当しないのでは?
みんなの視線が、少し離れた場所にいるリーダーに向けられた。
「おう、なんだ。俺の出番か?」
会話が聞こえていなかったようで、ラッコのリーダーは立ち上がって、のんきにそんな言葉を発した。
二人が水の中へ潜っていくのを、見守った。
どうやら、昔からの知り合いらしい。任務を果たすまで喧嘩は中止すると、リーダーは誓った。
「ここだけの話だけど……」
ラッコのリーダーと同じ冒険者パーティーの女性が話し出した。
「ラッコリーダーの妹さんが、ビーバー君に片想いしてアプローチしてたんだ。だけど、『性格や生活が合わない』って断われて。
ラッコリーダーは、それを未だに怒ってるんだよ。『合わない』とはなんだとか言ってさ。
もう、妹さんは別の人と結婚してるんだけどね」
「え、それだけ?」
ルナが突っ込んだ。
「それが、種族の差にまで話が発展しちゃってるの。ラッコのリーダーは似てるだろって言うし、ビーバー君は『考えを押しつけるな』って怒るし。
それで、ビーバー君は都会から逃げて、田舎暮らしを始めたらしいって噂だけ残ったんだ。まさか、こんなところで暮らしているとはね」
それ、妹さんはもう過去にこだわっていないのに、兄貴がいつまでも引きずってるみたいな……?




