表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

270/298

待機

 モンスターの正体がわからないと、戦う方法を考えるのが難しい。


「オンはこの池の水を一瞬で蒸発させて、すぐに水を戻すことはできるか?」

「できますけど、火魔法で蒸発させたら普通の魚は死ぬかもしれません」

 そんなことが可能なのかと、俺たち以外のメンバーがざわめく。


「そっか。以前デッドフロッグを討伐したときは、モンスターだらけの沼だったんだっけ」

 できるということをさりげなく伝えた。


「この池は漁場として使われているから、死なせるくらいなら原因がわからなくていいと言われそうだ」

 ラッコのリーダーがまっとうな意見を述べる。

「……氷漬けのような状態にしたら、少しはマシかもしれません」

「そんなことまでできるの?」

 ルナが感嘆の声を上げた。


「それに近い状態にできるだけですよ」


「干上がった池の中からモンスターらしきものを探して、速攻で確保する。その場合は足の速い者と腕力のある者があたるとか?」

「村長にそれでいいか相談してみるか」

「小舟が燃えたら大変だしね」

「明日、村長と話し合う。今日はお疲れさん。夕飯の当番は、飯ができたら皆に声をかけてくれ」


 その後の過ごし方は、様々だった。

 酒を飲み始める人もいたし、料理当番はとても大胆な味付けをしていた。見ているとハラハラして手を出したくなるので、短刀の手入れをすることにした。



 食事も終わり、寝る準備をしていたら、オンが俺たちのテントに近づいてきた。

「四人分が標準装備なのでしょう? 一人空きがあるのですから、あたしがそこに収まるのが合理的だと思うのですが?」


 サァラの毛並みがざわっと立った。

「悪いが、デリカシーのない発言だと思うぞ」

 俺は代表してオンに返事をした。フォンがいないからといって、安易にそこに人を入れたくない。


「……そうですか? つまり断られたのでしょうか」

 オンはこういう機微がわからないのか。

「すまないけど、そういうことだ」

「……はい。わかりました」

 オンは理解していないようだが、とりあえず受け入れてくれた。馬車の方に歩いて行くので、そちらで寝るのだろう。


「あれ、悪気がないと思う?」

 ルナがオンの後ろ姿を見つめながら、ぽつりとこぼした。

「鼠獣人のミナスとはまた違ったタイプだけど、なんかこう……胸がザワっとするよな」

 魔族は価値観がかけ離れているから、どう対処したらいいかわからない。


 サァラはフーフー毛を逆立てたままだった。俺とルナはサァラを真ん中にして、抱きつくようにして眠った。



 翌日は、ラッコのリーダーと村長の話し合いがつくまで、特にすることがない。

 待機するように言われて、俺たちは池の畔に行くことにした。俺は木に登って、水面を眺める。何か手がかりはないだろうか。


 一組の夫婦が小舟を出して、漁を始めた。


「あれ、危ないんじゃない?」

 木の下で素振りをしていたルナが心配そうな声を出した。

「なんかね……このまま漁をやめたら飢え死にするから、危険でも漁に出た方がマシなんだって」

 サァラがそう説明した。


「そっか。蓄えがなければ、そうなるよな」

 覚悟の上なら、眺めているしかない。


 ドスンと木が揺れた。慌てて幹に抱きつく。

 下を見たら、サァラが木の幹に手のひらを当てていた。

「びっくりした?」

「びっくりしたよ。何するんだ」

「へへ。組み手をしようよ」


「いや、あの小舟を観察していた方がいいんじゃないか?」

「あ、そうだにゃ。何かあったら助けに行かなきゃだ」

 サァラが拳を握って、ファイティングポーズをとった。

「それなら、あたしも池に向かって素振りするかな」



 ぱしゃり。

 微かに水音がした気がする。

 池には漁をする夫婦がいるのだから、それくらいの音は当たり前か。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ