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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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報告会

 皆が食べ終わった頃に、やっとリーダーたちが戻ってきた。

 さぞかし有力情報を持ち帰ってきたかと思いきや、愚痴を聞かされただけだったという。


「お疲れさま。甘い物をどうぞ」

 ルナが取りわけてお菓子を見せると、顔がパッと明るくなった。

「おお、ルナたん、ありがとう!」


「……『ルナたん』ですか?」

 ルナは皿をリーダーの方に差し出しながら、体は後ろへ引いている。

「めんご、めんご。これを食べたら、リーダーっぽくするから」

 ラッコ獣人のリーダーは、もしゃもしゃと無言でお菓子を食べ始めた。両手で持っている姿が、なんとも可愛らしい。


 彼と同じパーティーのメンバーが、ルナにこっそりとささやく。

「あれが素なの。頑張ってリーダーっぽく振る舞っているから、許してあげて」

「あ……はい」


 やっぱり、冒険者は強くなるほど変な人が多いと思う。


 ラッコ獣人のリーダーは、手をペロリと舐めた。

「さて、お待たせしたね。

『漁ができないと生活に困る』という以外の訴えを聞かせてくれ」

 急に、頼りになるAランク冒険者になった。口調といい、眼光といい、すごい変わりようだ。


 目撃証言がとても少ない。村長の家で聞いたこととあまり変わらないと感じる。

「関係ないかもしれませんが、枯れ木を集めるのが大変だそうです」

「それもただの愚痴だなぁ。池の中央に流木が集まってるじゃん。池に落ちただけだろ」

「ということは、そこに水流が集まってる?」

「水竜とか、勘弁してほしいぞ」

「いや、それならもっと死傷者が出るだろ」

「それなんだよなぁ。なんか、普通のモンスターと勝手が違うっつーか。全容が見えてこないんだよな」


「目撃証言を集めるのは初めてだけど、こんなに愚痴ばかり聞かされるものなの?」

 冒険者たちの視線が俺に集まった。

「そうですね……。地域によって違いますけど、この村は多めかもしれません」

 人によっては愚痴どころか、怒鳴って責め立ててくる人もいる。この村は大人しい方だけど、黙っておこう。


「残された側に怪我人が出ていないのも、不思議だよな」

 そんな意見が出た。

「モンスターに襲われた跡が確認できない。鳥系のように攫って巣で食べるタイプか?」

「それなら、この池周辺に被害が偏っているのが不自然だろ」

「近くの村にも聞き込みに行く?」

「いや、依頼としては、この池の調査が優先だ。他の村に行くなら、冒険者ギルドに了承を得て、依頼として行こう」

 ラッコ獣人のリーダーは、キリッとまともな発言をした。


「淡水に住む、首が長いモンスター。あるいは蛇のように体が長いもの。水面で飛び跳ねるもの」

 俺がブツブツと唱えていると、オンがクスッと笑うのが聞こえた。

 オンの方を見たが俺の目を見ようとしていないので、聞き違いかもしれない。



「全然モンスターの特定ができないな。

 それじゃあ、仕方がない。自分が潜って探ってこようか」

 まとまらない話し合いを、ラッコ獣人のリーダーが無理矢理まとめようとした。


「リーダー、アホか」

「面倒くさくなっただけでしょ」

 パーティーメンバーにボロクソ言われるリーダー。


 しゅんとする姿に、長時間村人の愚痴を聞き続けるくらい、お人好しなんだなぁと思った。


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