報告会
皆が食べ終わった頃に、やっとリーダーたちが戻ってきた。
さぞかし有力情報を持ち帰ってきたかと思いきや、愚痴を聞かされただけだったという。
「お疲れさま。甘い物をどうぞ」
ルナが取りわけてお菓子を見せると、顔がパッと明るくなった。
「おお、ルナたん、ありがとう!」
「……『ルナたん』ですか?」
ルナは皿をリーダーの方に差し出しながら、体は後ろへ引いている。
「めんご、めんご。これを食べたら、リーダーっぽくするから」
ラッコ獣人のリーダーは、もしゃもしゃと無言でお菓子を食べ始めた。両手で持っている姿が、なんとも可愛らしい。
彼と同じパーティーのメンバーが、ルナにこっそりとささやく。
「あれが素なの。頑張ってリーダーっぽく振る舞っているから、許してあげて」
「あ……はい」
やっぱり、冒険者は強くなるほど変な人が多いと思う。
ラッコ獣人のリーダーは、手をペロリと舐めた。
「さて、お待たせしたね。
『漁ができないと生活に困る』という以外の訴えを聞かせてくれ」
急に、頼りになるAランク冒険者になった。口調といい、眼光といい、すごい変わりようだ。
目撃証言がとても少ない。村長の家で聞いたこととあまり変わらないと感じる。
「関係ないかもしれませんが、枯れ木を集めるのが大変だそうです」
「それもただの愚痴だなぁ。池の中央に流木が集まってるじゃん。池に落ちただけだろ」
「ということは、そこに水流が集まってる?」
「水竜とか、勘弁してほしいぞ」
「いや、それならもっと死傷者が出るだろ」
「それなんだよなぁ。なんか、普通のモンスターと勝手が違うっつーか。全容が見えてこないんだよな」
「目撃証言を集めるのは初めてだけど、こんなに愚痴ばかり聞かされるものなの?」
冒険者たちの視線が俺に集まった。
「そうですね……。地域によって違いますけど、この村は多めかもしれません」
人によっては愚痴どころか、怒鳴って責め立ててくる人もいる。この村は大人しい方だけど、黙っておこう。
「残された側に怪我人が出ていないのも、不思議だよな」
そんな意見が出た。
「モンスターに襲われた跡が確認できない。鳥系のように攫って巣で食べるタイプか?」
「それなら、この池周辺に被害が偏っているのが不自然だろ」
「近くの村にも聞き込みに行く?」
「いや、依頼としては、この池の調査が優先だ。他の村に行くなら、冒険者ギルドに了承を得て、依頼として行こう」
ラッコ獣人のリーダーは、キリッとまともな発言をした。
「淡水に住む、首が長いモンスター。あるいは蛇のように体が長いもの。水面で飛び跳ねるもの」
俺がブツブツと唱えていると、オンがクスッと笑うのが聞こえた。
オンの方を見たが俺の目を見ようとしていないので、聞き違いかもしれない。
「全然モンスターの特定ができないな。
それじゃあ、仕方がない。自分が潜って探ってこようか」
まとまらない話し合いを、ラッコ獣人のリーダーが無理矢理まとめようとした。
「リーダー、アホか」
「面倒くさくなっただけでしょ」
パーティーメンバーにボロクソ言われるリーダー。
しゅんとする姿に、長時間村人の愚痴を聞き続けるくらい、お人好しなんだなぁと思った。




