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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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情報収集

 池の近くにある集落に着いた。集落の真ん中にある広場を宿泊場所として貸してくれる。

 荷物を運んできた馬車で寝る者もいる。

 俺たち花猫風月は、自分たちでテントを張った。


 その間にこの依頼のリーダーが村長から話を聞いてきた。

「何か竜のような首の長いものを見た。小舟がひっくり返されて、遺体も発見できない。そんな話だった。

 実際の目撃者の家を案内してもらうよう頼んだから、手分けしていこう」


 俺たちは村長の娘さんの後ろを着いていく。

 一軒の家の扉を叩き、村長の娘さんが出てきた人に説明する。俺たち冒険者の中から二人がその家に入り、残りは次の家に向かう。

 そんなことを繰り返し、俺とルナとサァラはお婆さんの家の担当になった。家の中に入るが、小さなテーブルに椅子が三脚。

 俺が代表で座って、ルナとサァラはその後ろで立つことにした。

「娘が帰ってこないんだよぉ」

 お婆さんが涙ながらに訴えてくる。


「それはいつ頃の話ですか?」

 俺が代表して質問する。

「もう二週間も前だ」

 俺の後ろでルナとサァラが顔を見合わせている気配がした。生存の可能性は低いと誰もが思ったことだろう。


「どんな状況だったか教えてください」

「池で一緒に洗濯をしていて、振り返ったらいなかった」

「滑り落ちたという可能性は?」

「んなことあるか! 水しぶきも悲鳴もあがらなかったんだ」

 老婆は怒鳴り声を上げた。


「責める意図はなくて……ただ、事実を確認したいだけです」

 どうしようか。あまり冷静に話ができる状態じゃない気がする。唯一の目撃者でもないし……いや、違う。そもそもその瞬間を見ていないんだ。

 わかったのは、気がついたら娘さんがいなかったという状況だけだ。


 あ、そうだ。これを確認しておこう。

「何か、不審なものは見かけませんでしたか? いつもと違う様子とか」

「……特に、ない」

 これ以上は聞き出せそうもないし、怒らせるだけのような気がする。

「そうですか。ありがとうございました」

 俺はそうお礼を言い、後ろにいた二人を促して家を出た。


 俺たちは無言で広場に戻った。

「あんまり協力的じゃなかったにゃ」

 サァラがぽつりと言った。

「家族がいなくなって、イライラしてるんだろうけどさ……」

 ルナはそこで言葉を切った。


 俺たちが一番早く戻ってきたようで、他の人たちが戻ってくるのを待つことにした。

 手持ち無沙汰なんで、火を焚いて小麦粉を水で溶いて薄焼きにした。

 サァラがジャムを載せ、ルナが人数分焼けたかを確認してくれる。


「早く戻ってくるといいにゃん」

 サァラが機嫌よく、鼻歌を始めた。

「サァラ、お婆さんに聞こえたらマズいかも」

 ルナがそう言うと、鼻歌がピタリとやむ。

「そうだったにゃ。反省」

 サァラが自分の口を両手で押さえる仕草が可愛いかった。



 全員分焼けた頃に一組が戻ってきた。

「あれ、何作ってんの?」

「話し合いの時に、気軽に摘まめるものを用意しました」

 そう返事をすると「もう、今すぐ食べたい」と言われた。


 しばらくしてもう一組戻ってきた。

 次の一組が戻ってくる頃には、お菓子は冷めていた。

 恨めしそうに見る人に「冷めた方がしっとりしてジャムと馴染むかも」と説明する。本当は焼きたてと冷ましてからのどちらがいいかは、好みなんだけどさ。


 ほとんどの人が戻ってきたが、一組がなかなか戻ってこない。そのうちの一人がリーダーだから、どうすることもできない。

 先にお菓子を摘まみながら待つことにした。


 自然と、集めてきた情報が話題に出る。

 長い首が水面から出ていたとか、蛇のようなものを見かけたとか、水面を飛び跳ねていたとか証言は様々だ。


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