情報収集
池の近くにある集落に着いた。集落の真ん中にある広場を宿泊場所として貸してくれる。
荷物を運んできた馬車で寝る者もいる。
俺たち花猫風月は、自分たちでテントを張った。
その間にこの依頼のリーダーが村長から話を聞いてきた。
「何か竜のような首の長いものを見た。小舟がひっくり返されて、遺体も発見できない。そんな話だった。
実際の目撃者の家を案内してもらうよう頼んだから、手分けしていこう」
俺たちは村長の娘さんの後ろを着いていく。
一軒の家の扉を叩き、村長の娘さんが出てきた人に説明する。俺たち冒険者の中から二人がその家に入り、残りは次の家に向かう。
そんなことを繰り返し、俺とルナとサァラはお婆さんの家の担当になった。家の中に入るが、小さなテーブルに椅子が三脚。
俺が代表で座って、ルナとサァラはその後ろで立つことにした。
「娘が帰ってこないんだよぉ」
お婆さんが涙ながらに訴えてくる。
「それはいつ頃の話ですか?」
俺が代表して質問する。
「もう二週間も前だ」
俺の後ろでルナとサァラが顔を見合わせている気配がした。生存の可能性は低いと誰もが思ったことだろう。
「どんな状況だったか教えてください」
「池で一緒に洗濯をしていて、振り返ったらいなかった」
「滑り落ちたという可能性は?」
「んなことあるか! 水しぶきも悲鳴もあがらなかったんだ」
老婆は怒鳴り声を上げた。
「責める意図はなくて……ただ、事実を確認したいだけです」
どうしようか。あまり冷静に話ができる状態じゃない気がする。唯一の目撃者でもないし……いや、違う。そもそもその瞬間を見ていないんだ。
わかったのは、気がついたら娘さんがいなかったという状況だけだ。
あ、そうだ。これを確認しておこう。
「何か、不審なものは見かけませんでしたか? いつもと違う様子とか」
「……特に、ない」
これ以上は聞き出せそうもないし、怒らせるだけのような気がする。
「そうですか。ありがとうございました」
俺はそうお礼を言い、後ろにいた二人を促して家を出た。
俺たちは無言で広場に戻った。
「あんまり協力的じゃなかったにゃ」
サァラがぽつりと言った。
「家族がいなくなって、イライラしてるんだろうけどさ……」
ルナはそこで言葉を切った。
俺たちが一番早く戻ってきたようで、他の人たちが戻ってくるのを待つことにした。
手持ち無沙汰なんで、火を焚いて小麦粉を水で溶いて薄焼きにした。
サァラがジャムを載せ、ルナが人数分焼けたかを確認してくれる。
「早く戻ってくるといいにゃん」
サァラが機嫌よく、鼻歌を始めた。
「サァラ、お婆さんに聞こえたらマズいかも」
ルナがそう言うと、鼻歌がピタリとやむ。
「そうだったにゃ。反省」
サァラが自分の口を両手で押さえる仕草が可愛いかった。
全員分焼けた頃に一組が戻ってきた。
「あれ、何作ってんの?」
「話し合いの時に、気軽に摘まめるものを用意しました」
そう返事をすると「もう、今すぐ食べたい」と言われた。
しばらくしてもう一組戻ってきた。
次の一組が戻ってくる頃には、お菓子は冷めていた。
恨めしそうに見る人に「冷めた方がしっとりしてジャムと馴染むかも」と説明する。本当は焼きたてと冷ましてからのどちらがいいかは、好みなんだけどさ。
ほとんどの人が戻ってきたが、一組がなかなか戻ってこない。そのうちの一人がリーダーだから、どうすることもできない。
先にお菓子を摘まみながら待つことにした。
自然と、集めてきた情報が話題に出る。
長い首が水面から出ていたとか、蛇のようなものを見かけたとか、水面を飛び跳ねていたとか証言は様々だ。




