久しぶりの冒険者活動
体を動かせるようになったころ、合同討伐に誘われた。オンのぬいぐるみ費用を出したAランクパーティーで、彼女も同行するという。
つまり、言い出しっぺの俺が責任を持ってオンの面倒を見ろということだろうか?
ルナとサァラも参加するので、久しぶりに花猫風月としても活動だ。
王都と獣人の領地にまたがる池に、人食いの魚が住み着いてしまったそうだ。そこで漁業を営む人たちから、討伐依頼が来た。
「池の水を干上がらせればいいのですか?」
「それだと、必要な魚介類まで駄目になってしまうだろう。人食いのモンスターだけなんとかできないか?」
「そういうのは、トーマが得意だと思います」
そんなふうにオンに推薦されていたことを、俺は知らなかった。
「まず、どんなモンスターかもっと詳しい情報がほしいんですが」
冒険者ギルドの受付で、そう頼む。俺の後ろには、この依頼でリーダーを務めるAランク冒険者が立っている。
「こちらが把握している情報はすべてお渡ししました」
受付嬢がそう言うと、後ろから「ほらな」という声が聞こえた。
「ということは、モンスターの特定ができていないと?」
「申し訳ありません。それも含めての依頼となっています」
ええ? そんなのありなのか?
「その分、報酬が高く設定されているのですよ」
「調査も込みでってことですか」
「はい。討伐できなくても、モンスターの情報が有効と認められましたら、報酬をお支払いします」
受付の人が堂々としている。後ろめたいとか、情報不足を申し訳なく思うとか、そういう雰囲気がまったくない。
「トーマ。Aランクパーティーの依頼って、こういうのも多いんだよ」
今回のリーダーが俺の肩に手を置いた。
「……そうなんですか」
Cランクだと事前にある程度の情報をもらえる。モンスターの種類がわからないなんてことは、一度もなかった。
無事に帰ってこられるよう、パーティーの実力と依頼内容が釣り合うよう調整するのが、ギルドの仕事かと思っていたのに……。
「あ、これがランクの差か!」
つい、口に出してしまった。
受付嬢とリーダーにクスクス笑われた。恥ずかしい。
「素直で可愛いですね」
受付の女性が、意味ありげな視線を送ってくる。からかう対象としてロックオンされたら、たまらない。
「現地で話を聞きたいので、目撃した人の名前とか教えてもらえますか」
仕事中は仕事に徹するのだ。少し気まずい空気になった。
冒険者をからかいたいベテラン受付嬢も、妙なノリでスケベな話をしたがる冒険者も、俺は一線を引いてしまいたい。プライベートな領域に、土足で入ってきてほしくないんだ。
堅物で、遊び心がわからないという評判が立つかな。昔のパーティーではそういうところが嫌われたんだけど、もう、そういう評価で構わないと開き直ろう。
――俺、冒険者でやっていきたい割に、冒険者のノリが嫌いなんだよな。矛盾してるか?
とりあえず、漁師の代表者を教えてもらった。
「現地についたら、この方に目撃者を教えてもらいましょう」
「代表者に話を詳しく訊けばいいだろ?」
「もちろん訊きますが、正体不明のものを説明するのは難しいし、聞く方が正しく理解できるとは限りません。むしろ、思い込みでズレていくものでしょう?」
「ああ、なるほどな。参考にさせてもらうわ」
……いつも、どんなふうに仕事をしているんだろう? 訊きたいけれど、質問の仕方によっては失礼になるだろうから、黙っておいた。
あ、こういうところが、事前準備に時間をかけすぎって言われる原因か。
戦闘能力が高い人には無駄な手間かもしれないが、俺には必要だ。生きて帰ってくるためにも、怪我をしないためにも……。




