鬱々と
俺が療養している間、ルナとサァラは他の冒険者パーティーに臨時で加入している。襲撃のときに共闘したAランク冒険者のパーティーとは、相性もいいようだ。
二人はBランクに上がることを、目の前の課題として取り組み始めている。
談話室で報告を聞きながら、心の中では焦りと嫉妬が渦巻いていた。
置いていかれる? 怪我している自分が不甲斐ない?
怪我がなければ、ついて行けたのに……という思いと、能力的についていけないのではという不安で、頭ががんがんしてきた。
「トーマ、顔色悪いにゃ?」
「まだ、薬が残ってるのかな。焦らず、しっかり体を治すのが大事だよ」
二人の優しい言葉が、うまく受け取れない。
「……そうだな。寝てくるよ」
俺はその場を逃げ出すように、四人部屋に戻った。
こんなときでも、気をつけて歩かないと足に痛みが走る。気分的には、少し音を立てて乱暴に歩きたいくらいなのに――
代わりに勢いをつけてベッドに突っ伏した。眠りたいわけじゃない。
枕に拳を叩きつける。ジャリ。羽毛ではなく、詰めてある豆の手応えだ。
「はぁぁ~」
ため息が出た。
考えるのも嫌だが、俺には誘拐するほど価値があるらしい。
少なくとも、役に立つと評価された。それだけの能力があると思われたんだ。
ならば、落ち込む必要はないのではないか?
あの気持ち悪いクリムの言葉に縋ろうとしている自分が、醜悪で嫌になる。
「こんな状態で勧誘されたら、ふらつくのかな……」
もう、ほんと嫌だ。あんな男の言葉に励まされそうな自分が。
ジャリジャラジャリ。枕に顔を擦り付ける度に、豆がこすれる音がした。
「綿の枕に替えようかな」
熱が籠もらなくて快適なのだが、部屋が静かだと意外と音が耳につくな。
「宿屋暮らしじゃないから、枕を選べるんだよな」
クランに所属したから、持ち物を増やせるという贅沢。上位ランクの冒険者にコツを教えてもらえるから、ランクアップも早い。
医務室があるなんて、数あるクランの中でもすごいことだと思う。
恵まれている。フォンのことがなかったら、このクランに加入したいと希望しても審査で弾かれていたかもしれない。
当初、このクランの一部の人から風当たりが強かったのは、ズルいと思われていたからみたいだ。
努力してこのクランに加入した人たちにしてみたら、審査を受けないだけでも、すごい特別扱いだもんな。更に、バスラにも気にかけてもらって。
そんな俺たちが「フォンが目を覚ましたから辞めます」なんて言い出したら、納得できないだろう。
そもそも、クランハウスが狙われたのは、フォンと俺がいたからだし。
だが、そこに縛られる必要はあるか?
恩知らずだと言われそうだけど、何か契約をしているわけじゃない。
駄目だ。
怪我で動けないから、マイナス思考に陥っている。考えるのをやめろ。
……もしかしたら、怪しげな薬の影響かもしれないな。くそ、クリムめ。




