新聞
俺は三日ほど行方不明になっていたらしい。拠点ではなく、信者の個人宅ということで、居場所を掴むのに時間がかかったそうだ。
ということは、あの部屋で二日くらい眠ったままだったんだな。すごい強力な眠り薬を盛られていたのか? 怖い。
クランで医療班に身体検査をされる。
「微かに薬物反応があります。あばら骨も骨折まではいっていませんが、数日は安静にしてほしいですね。
足首の筋を痛めてますので、動かない方がいいでしょう」
手の甲に投げ矢が刺さったので、手にも包帯が巻かれた。
クランの医務室には、他にも数名ベッドで療養中の人がいる。宗教団体に突撃した人だけでなく、冒険者活動で負傷した人もいた。
「フォンは無事なのか?」
「念のためにAランクの冒険者が一人待機していたでしょ。あれが予想外だったみたいで」
ルナがちょっと悔しそうだ。自分たちだけでは危なかったということだもんな。
「岩モグラは?」
「討伐した。今もまだ、冒険者ギルドから解体職人が来て、爪や毛皮を剥いでるよ」
「すごい大きなモンスターだったのか」
「う~ん。珍しいから国が口を出してきて、ちょっと揉めてた」
あはは。こっちが出向いた打ち合わせの時に、真面目に対応しておけばよかったのにな。
「……サークレットの問題を解決できそうな人は?」
「ふふふ。二人確保したよ。これで、事態は進展するはず」
ルナがにこにこと笑顔になった。
サァラが医務室に入ってきた。
「新聞、読むかにゃ?」
腕に、数日分の新聞の束を抱えていた。
「あ、読みたい」
ありがたく受け取ると、サァラは「また後で」と手を振って出ていった。ルナもその後に続く。
……サァラがいつもの調子に戻っている。よかった、安心した。
膝の上で新聞を広げ、襲撃の記事を読んだ。
大手の新聞は、岩モグラのことが中心だ。
メインは、岩モグラを討伐したこと。地中で暮らしているので発見されることが少ないし、攻撃的ではないので討伐対象になることが少ない。
今回の騒動は動物使いが能力を悪用し、岩モグラで王都の地下から攻撃しようとした疑いがある――と書いてある。
その動物使いが所属する団体へ事情を聞きに行き、単独犯か集団としての犯行かを調べていくという。
あからさまに対立するのは避けている感じだな。
ゴシップも扱う中小の新聞は少し違った。
宗教団体と有名なクランの対決という煽りが、まるで娯楽小説のようだ。
度重なるクランへの攻撃があり、その反撃だと書いてある。フォンのことは伏せてあるのが救いか。
「岩モグラをテイムするコツまで載せたのか。真似する人が出たらどうするんだ」
思わず、そんな独り言が出てしまった。
隣のベッドに寝ていた人が、笑い声を上げた。
「そんなのデタラメだ。まず、岩モグラに出会う機会がないだろ」
そういえば、そうか。
「つまり、教団は岩モグラを見つける方法を知っている、ということですよね? 感知能力とか、生態の知識とか?」
「あー、そう言えば、そうだな……」
その男は笑いを引っ込めた。




