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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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襲撃

 ついさっきまで話していた男の体が硬直している? 目を見開いて……。

「どうした?!」

 肩に手を触れたら、そのまま横に傾いて――?


 攻撃された? だが、何の気配も……。


「おっと。音を立てられたら困るんだけど」

 倒れかけた男の体を、突然現れた人物が支えた。


 どこから湧いた? 腰から短剣を抜いて右手で構える。

 奇妙なマスクにフードを被っているせいで、顔が見えない。だが、どこか聞き覚えのある声だ。


 襲撃を知らせる笛をポケットから出そうとしたら、左手に痛みが走った。

「応援を呼ぶなんて、無粋だね」

 手の甲に血が滲む。小さな投げ矢が床に転がっている。フードの人物が投げたようだ。

「そいつを放せ」

 声が震えてしまう。それに気付いた襲撃者の口元が嫌らしく吊り上がった。


 床からドンと衝撃が来た。階下でも何か起きているのか。

 フォンの繭がある部屋の前にはルナが、部屋の中にはサァラとAランク冒険者が一人いる。

 大丈夫だ。大丈夫なはずだ。


 フードの人物が、硬直した男を床に置いた。ピクピクと嫌な感じのけいれんをしている。

 接近されたのも、どんな攻撃をされたのかもわからなかった。

 勝負になるのか?

 嫌な予感が背中を走る。怯えるな、震えるな。そんな状態になれば不利になるだけだ。


 弱気になるな。自分の身を守ればいいというだけじゃない。こいつを倒して、フォンを守らなければいけないんだぞ。



 フードの下のケープ部分が、もぞもぞと動いた。くそ。何をしようとしているか見えない。

 ケープのスリットから手がちらりと見えた。投げ矢か!

 短剣でたたき落とす。カツッと気持ちいい音がした。


「反応は速くなった」

 なぜか嬉しそうに言う。こいつ、女か?

 小柄で柔軟に動かれたら、室内だとかなり厄介だ。だが、俺の短剣も、室内で有利だけど。


 もう一つ投げ矢が、俺の顔めがけて飛んできた。

 腕を跳ね上げるようにして、短剣で弾く。

 空いた俺の胴に蹴りが入った。体が、くの字に曲がる。

 腕が下がる動きに力を込め、相手の足を切りつけた。ざくっと手応えがあり、血が飛び散る。

 だが、浅い。


「痛いなぁ。なにすんのよ」

 俺の足元を狙った低い蹴りが来た。回避しようと片足を上げた瞬間、窓が割れる音がした。

 入ってきた人物に首を取られる。背後に回られていて、顔が見えない。


「同志よ。なにを遊んでいるのだ」

 俺の首を押さえたまま、新手の人物はフードの女を叱りつけた。

「はいはい。すんませんね」


 会話の隙に、背後の人物の脇腹に短剣を突き立てた。ガツンという手応え。防御の何かを着込んでいるのか。

 だが、「うおっ」と声がして手が緩んだ。

 あまり力を込められなかったが、反撃の隙はできた。

 その場でしゃがみながら、背後の人物に足払いをかける。


 そいつはたたらを踏みながらも持ちこたえ、床に転がったままの水の魔法使いを踏みつけた。

 あ! 何をしやがる。

 俺が足払いをかけた角度で、そっちに行ったのか。ごめん!


 そんな後悔をしている余裕なんかなかった。

 首元にチクリと痛みが走る。まずい。毒か?

 視界がぐにゃりと歪んだ。崩れそうな俺の腕を、大きなごつい手が掴む。さっき窓から入ってきた男に、また捕まったのか。


「動きは良くなったけど、相変わらず甘ちゃんだね」

 なんだと? この女、俺を知っている?

 あれ、この声は……。


 指先の感覚がなくなっていく。意識が遠のく。駄目だ。目を閉じるな。

 くそ。


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