こちらから仕掛ける
宗教団体の拠点はいくつかあり、そこから魔導具の専門家だけを攫ってくる。それはできるだけ秘密裏に。
岩モグラの周囲に、土の魔法使いが穴を開け、挟撃する。こちらは、クランが被害者だとわかるように、動物使いを生きたまま確保。二度とクランと敵対しようと思わないくらい叩きのめし、華々しく戦闘していい。
大まかに言うと、そんな作戦だった。
国とのやり取りは、約束の夕方までに連絡はなかった。
その後、宰相補佐の一人がクランハウスに飛んできた。情報を把握していなかったので、改めて交渉したいと言われたそうだ。
オンが「岩モグラを止められないから無理」と返事をしたことで、あちらさんは手遅れだと理解した。戦闘場所を、進路の途中にある廃屋の敷地内にすることで合意した。
俺たちは、手薄になったクランハウスを襲われないように待機している。
「それって、この作戦が漏れているということが前提じゃないか?」
閑散としたクランハウスを巡回しながら、思いついたことを口にする。俺のペアは水の魔法使いだ。
「まあ、スパイがいてもおかしくないだろ。宗教団体だけじゃなく、ライバルのクランに送り込まれた奴がいるかもしれないぞ」
「そういうの、摘発しないのか?」
「こんな大所帯になったら、キリがないだろ。加入するときはそうじゃなくても、後から接触されてスパイになる奴もいる。俺も、オンの情報を流せって大金を積まれたもん」
「え? それでどうした?」
「もちろん断ったよ。オンを敵に回すとか、アホだろ。まだ死にたくねぇよ」
クランメンバーでも、お互いを信頼しきれないんだな。
なんとなく寂しいというか、所属している意味がわからないというか……。ああ、居場所じゃなく、利害関係なのか。
それを言ったら、俺たちだって助けてほしくてクランに加入したんだった。
「そろそろじゃね?」
水の魔法使いが、廊下の窓から外を見た。
どぉーんと地響きがした。
そちらの方向に土煙が上がる。突風で煙が吹き飛ばされ、火柱が吹き上がって一瞬で消える。
岩モグラ討伐が始まったんだ。
この攻撃に連動する、拠点を襲撃する時間は決まっていない。
岩モグラと同時に進めてもいいし、岩モグラの加勢に出る信者たちを見送ってから突入してもいい。その決定権は、現場の指揮官に任されている。
「拠点の出入りを見張るために、入り口が見える娼館に入り浸ってる人もいるんだぜ。羨ましいよな」
並んで空を見ているが、娼館の何が羨ましいかわからない。アーデンのクランを畳むときに、クランにいた女性たちに夜這いをかけられてゾッとしたことを思い出す。
「仕事だろ。突入に遅れたら経費じゃなく自腹だって言われてたし」
冷静に考えれば、娼婦を抱いている時間なんてないんじゃないか?
「現実はそうなんだろうけどさぁ。夢見てもいいじゃんか」
「そういうことを言っている人には、そんな任務は割り振らないんじゃないかなぁ」
ちょっとからかってみた。
年齢が近いし、同じCランクだし、友達になれそうな気がする。裏表がない感じがいいよな。
ところが、隣から返事が来ない。怒らせたかとそちらを見ると、様子がおかしい。




