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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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国との話し合い(後編)

「国は、妖精族とも宗教団体とも現状維持ということで、よろしいですか?」

 意見が出ないとみて、バスラがまとめるように問いかけた。

 言葉の端々に、揉めごとを起こしたくないという姿勢が見えた。それをバスラは問題を解決する意思がないと解釈したようだ。

「……ならば、どうされる?」

 警備兵長官は態度を改め、バスラの真意をうかがうように質問を質問で返した。


「そちらが何らかの問題解決を望むなら共闘をと思ったのです。それが必要ないならば、我がクランに降りかかる火の粉を払うまで――ですね。

 一般人と周囲の建物に被害がなければ、不問にしていただければ幸いです。もちろん、最大限の配慮はするつもりですが」


 バスラは最初から国の支援も、武力も期待していなかったのか。ただ、邪魔をするな、治安を乱したと捕縛しに来るなと言いに来ただけなのか。

 交渉して、共闘するつもりだと思っていたよ。


「冒険者ギルドは、冒険者が自分の身と財産を守る権利が保護されていれば、口出しはいたしません」

 冒険者ギルドの職員も知っていたようで、バスラの後押しをする。やる気のない奴が、後からごたごた言うんじゃねぇぞ、と言わんばかりだ。


「サークレットの技術者を確保したら、私と共同研究しませんか?」

 魔法使いが口をきいた。俺が魔塔で魔法を習っていたときに、見かけたことがある気がする。

 でも、フォンが繭化したときにクランハウスに助言に来た人とは違うな。


「それは王城の魔法使いとして許されるのでしょうか? 私は魔法の知識があまりないので、その辺りは後日詳しい者と相談していただきたい」

 バスラは軽く受け流した。襲撃や迎撃に比べたら、後でもいい話だ。


「それで?

 クランが積極的な自衛をすることを、許可をいただけるのでしょうか。放置しておいたら、いつこちらが襲撃を受けるかわかりません。我がクランの周辺で一般の人に被害が出たら、お互いに困ることになりませんか」

 バスラは警備兵長官の目を見て、目を細めた。王都の警備を担当する人間を挑発して、反応を楽しんでいる。


「一旦、持ち帰らせてもらいたい」

 宰相府の事務官が、唸るように言った。決定権を持つ者を話し合いの場に出さなかった、国側の敗北宣言のように思える。

「わかりました。明日の夕方までには、お返事いただきたい」

 バスラはこうなることを予見していたのか、大して気にしていないような顔をして、期限を切った。


「明日の夕方ですか?」

 宰相府の事務官が顔をしかめた。

 これから関係部署に話を持っていき、話し合いの日程を調整するだけで時間がかかる。宰相や国王の判断を仰ぐなら、もっと余裕が必要だ。


「こちらのクランが襲撃を受けた後に許可が出ても、遅いでしょう。

 さる筋から、動物使いがモンスターで攻撃しようとしているという情報があるものですから」


「それを先に言え! 王都の治安を揺るがす重要な情報ではないか。なぜこの瞬間まで秘匿していた」

 警備兵長官がバスラを怒鳴りつけた。


「確かな情報ではありません。そのような可能性もあるので気をつけろ、という忠告を受けただけですので」


 たかが冒険者と侮っていた役人たちは、バスラの顔を凝視した。主導権を握っているのはこの獣人だと、ようやく気付いたようだった。

 呆然としている宰相府の事務官を見て、バスラは代わりに会議を終わらせた。

「お返事をお待ちしています。明日の夕方まで」


 返事が来なくても、待たずに行動するという宣言のように聞こえた。俺の気のせいではないと思う。

 この話し合いが開催されるまでに数日浪費している。オンが岩モグラを押さえられなければ、明後日あたり、本当に襲撃されるかもしれないのだ。


「話し合いの申請が来た時に、冒険者ギルドの職員を同席させるという点で、警戒すべきだった」

 宰相府の事務官は椅子に座ったまま、うなだれた。書記は無慈悲にありのままを記録している様子だった。

「少なくとも、何を求めているのか、事前に確認すべきだった。今夜徹夜したところで……」

 呪文のようにぶつぶつとそんなことを呟いていた。


 ……ご愁傷様。


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事件は会議室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ!
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