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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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王城へ向かう前に

 サァラとオンが旅立った日の午後に、王城から書状が届いた。翌日に登城するようにと書かれていた。


 その日の夜。俺は不安そうにするルナと、フォンの繭を眺めていた。部屋に置かれているクッションをたぐり寄せ、俺は胡座をかいていた。

「サァラ、お腹空かせてないかな」

 どちらからともなく手を繋ぎ、ルナは俺の肩に頭を乗せたまましゃべっている。

「宿場町に泊まると言っていたから、今ごろ風呂に入って暖まっているんじゃないか」

 宿によっては湯船がない。だから、これは俺の希望的観測なんだが……。

「サァラ、寒いの苦手なのに」

「でも、山岳地帯で育ったんだろ? 冬の寒さには慣れているんじゃないか?」

 サァラの家には、分厚い防寒着があったことを思い出す。……男物の防寒着もあったんだよな。

「そういえば、そっか」

 ルナがくすっと笑った。

「トーマの過保護が移った」

「え、なんだよ。それ」

 俺も静かに笑う。


「……」

 ふいに静寂が訪れた。絡めたルナの指に、きゅっと力が入る。

 フォンの繭から目を離し、お互いを見つめ合う。引き寄せられるように顔が近づいた。




 翌朝は手早く朝食を食べて、制服を着込んだ。髪も櫛を入れ、それなりに整える。

 ロビーには見送りの人たちが集まっていた。ただ王城に行くだけなんだけど――と少し照れくさい。

 いや、違った。話し合いの結果で、宗教団体と事を構えるかどうかが決まるんだから、大ごとだった。つい、自分が関わることは大したことないことだと、侮る癖が出てしまう。


 クランメンバーの後ろの方で、ルナが小さく手を振っている。俺も胸元で小さく振り返した。

 うん、いい結果を勝ち取ってこよう。といっても、どういう方向に話を持っていきたいのか、聞いてないな。


 バスラが同じデザインの制服を着て現れた。なるほど。背中の翼が映えるデザインなんだ。バスラが格好よく見えることが最優先で設計された服。

 このクランはバスラのものだと、誰もが自然に理解することだろう。


 アーデンがこういう演出に興味を持っていたら、クランメンバーだという意識が強まり、もう少し違う結果になっただろうか。見送りの人たちの中にいるアーデンを見ると、エドガーと「揃えるのも格好いいな」と雑談をしている。

 もう、クランを解散したことに拘りはないのかもしれない。


「みんな、いい結果が得られるよう、応援してくれ」

 バスラがそう声をかけると、ロビーに響き渡るような応えが返る。それを満足そうに受け止め、バスラは片手を上げた。

「では、行ってくる」


 クランの馬車に乗って、俺たちは王城へと向かった。

「バスラさん。『いい結果』というのは、どんな感じを考えているのでしょうか?」

 それに合わせて、援護射撃をしなくては。そう思い、確認のための質問をした。

「さて。とりあえずはお互いの情報を出し合ってみないと、わからないからな」


 ……方針は特にないらしい。

 なんか、こう……「こうしたい」とか「こうするべき」とか、ないのかな?


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