王城へ向かう前に
サァラとオンが旅立った日の午後に、王城から書状が届いた。翌日に登城するようにと書かれていた。
その日の夜。俺は不安そうにするルナと、フォンの繭を眺めていた。部屋に置かれているクッションをたぐり寄せ、俺は胡座をかいていた。
「サァラ、お腹空かせてないかな」
どちらからともなく手を繋ぎ、ルナは俺の肩に頭を乗せたまましゃべっている。
「宿場町に泊まると言っていたから、今ごろ風呂に入って暖まっているんじゃないか」
宿によっては湯船がない。だから、これは俺の希望的観測なんだが……。
「サァラ、寒いの苦手なのに」
「でも、山岳地帯で育ったんだろ? 冬の寒さには慣れているんじゃないか?」
サァラの家には、分厚い防寒着があったことを思い出す。……男物の防寒着もあったんだよな。
「そういえば、そっか」
ルナがくすっと笑った。
「トーマの過保護が移った」
「え、なんだよ。それ」
俺も静かに笑う。
「……」
ふいに静寂が訪れた。絡めたルナの指に、きゅっと力が入る。
フォンの繭から目を離し、お互いを見つめ合う。引き寄せられるように顔が近づいた。
翌朝は手早く朝食を食べて、制服を着込んだ。髪も櫛を入れ、それなりに整える。
ロビーには見送りの人たちが集まっていた。ただ王城に行くだけなんだけど――と少し照れくさい。
いや、違った。話し合いの結果で、宗教団体と事を構えるかどうかが決まるんだから、大ごとだった。つい、自分が関わることは大したことないことだと、侮る癖が出てしまう。
クランメンバーの後ろの方で、ルナが小さく手を振っている。俺も胸元で小さく振り返した。
うん、いい結果を勝ち取ってこよう。といっても、どういう方向に話を持っていきたいのか、聞いてないな。
バスラが同じデザインの制服を着て現れた。なるほど。背中の翼が映えるデザインなんだ。バスラが格好よく見えることが最優先で設計された服。
このクランはバスラのものだと、誰もが自然に理解することだろう。
アーデンがこういう演出に興味を持っていたら、クランメンバーだという意識が強まり、もう少し違う結果になっただろうか。見送りの人たちの中にいるアーデンを見ると、エドガーと「揃えるのも格好いいな」と雑談をしている。
もう、クランを解散したことに拘りはないのかもしれない。
「みんな、いい結果が得られるよう、応援してくれ」
バスラがそう声をかけると、ロビーに響き渡るような応えが返る。それを満足そうに受け止め、バスラは片手を上げた。
「では、行ってくる」
クランの馬車に乗って、俺たちは王城へと向かった。
「バスラさん。『いい結果』というのは、どんな感じを考えているのでしょうか?」
それに合わせて、援護射撃をしなくては。そう思い、確認のための質問をした。
「さて。とりあえずはお互いの情報を出し合ってみないと、わからないからな」
……方針は特にないらしい。
なんか、こう……「こうしたい」とか「こうするべき」とか、ないのかな?




