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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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羽ばたき

 昼食の後、サァラとオンは荷物を背負い、玄関に出た。同行する獣人は四人。途中で交代するために、倍の人数を揃えたそうだ。

 二人は、それぞれ大型の鳥の獣人に抱えられる。首に手を回せと言われて、サァラが照れた。

「せ、背中に乗るんじゃ駄目なのかにゃ?」

「羽ばたきの邪魔……失礼。動きが阻害されますので」

「上空で寒さに手がかじかんで、背中から落ちたら大変ですよ」

「りょ、了解ですぅ」

 サァラが耳を伏せた。


「お互いに腰を紐で結んだらどうかな?」

 今の会話を聞いていて、鳥獣人の手だってかじかむかもしれないと不安になった。それが伝わってしまったようで、鳥獣人の一人は眉間にしわを寄せた。

「なるほど。何事にも絶対はないですから」

 鳥獣人のリーダーらしき人が留守番の鳥獣人に指示して、ベルトを持ってこさせた。

「これは、鳥獣人以外の飛行訓練に使うものです。風の魔法使いで魔力の多い人などですね」

 そう話ながら、手際よくサァラと自分の腰にベルトを着けた。それぞれのベルトは鎖で繋がれている。

「この鎖をどこかに引っかけないように、持っていてくださいね」

 とサァラに鎖を握らせる。

「あ、じゃあ手袋が必要だな」

 俺が言うと、誰かが衣装部屋に走って行った。


「お前、いつもこんな感じなのか?」

 バスラが俺を見た。

「『こんな感じ』……ですか?」

「いや、よく気がつくなと」

 しまった! やっちまった。

 また、細かいとか、いつまで経っても出発できないとか文句を言われる。

「すみません、細かくて」

 先に謝ってしまえ。

「何を言っているんだ? 事故の可能性を潰していくのは、いいことだ」

「危険予測と事故防止ができる人材は貴重です。生存確率を上げる、得がたい能力ですよ」

 そんなふうに褒められて、びっくりしてしまった。

 そっか。悪いことじゃないんだ。なんだか……頬がほてるのを感じる。


 オンと鳥獣人も鎖で繋がれ、オンは手袋をはめていた。

「では」

 この旅のリーダーが声を出した。

「いってくるにゃ」

 サァラが、鳥獣人の腕の中から手を振ってくる。心なしか笑顔がぎこちない気がする。帰ってきたら、抱きしめて、思い切り甘やかしてあげたい。


 ばさりと羽ばたく音がした。すぐにクランハウスの屋根の高さになり、あっという間に遠ざかっていった。



「そういえば、夢魔の人を呼ぶ話はどうなったんでしょう? オンがいない間に到着したら困りませんか?」

 バスラも見送りに出ていたので、質問をぶつけてみた。

「ああ、あれなぁ。条件が難しくてな……」

 珍しくバスラが言葉を濁し、幹部と顔を見合わせた。

「魔族の国は、海のはるか向こうにあります。ですから、呼び寄せるなら空を飛んでくるという話になりまして」

 幹部が補足してくれた。

 なるほど。今回鳥獣人に運んでもらったようなものか。地上を行ったら十日くらいかかる距離を二日に短縮できるのは、単純にすごいと思う。


「その場合、ドラゴンを使うって言うんだ」

「ど、ドラゴンですか?」

 ワイバーンよりも強いやつ!

「尻尾で建物をなぎ倒しても不問にしろとか、帰る前の腹ごしらえで見境無く食べても許せとか……ちょっと、無理だろ」

「それは……無理ですね」

 納得するしかない。というか、スケールが違いすぎる。

 オンって、もしかして……かなりヤバイやつ?


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