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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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トーマの強みと弱み

「うーん、どうするかな。明日、また話し合おう。夜考えることは、ろくなもんじゃないからな」

 バスラはそう言って会議を終えた。


「ここでフォンの件にケリが付けられたら……」

 ルナが廊下を歩きながら、そう呟いた。

「物理的に宗教団体を叩きのめすだけではいけないのですね?」

 オンがルナを見た。

「あたしたちは自分らしく生きたいだけなんだ。親の因縁とか、選べなかった子ども時代の環境とか、そんなものに縛られたくない」

 茶化すことが多いルナが、真面目な顔をしている。

「そうだにゃ。フォンが安心して繭から出て来たいと思える状態にしないと」

 サァラは眠そうな目を擦っていた。


 俺は四人部屋の扉をそっと開けた。もう眠っているかもしれないと思ったのに、明かりが点いている。

「おっ、話し合いはどうなった?」

 談話室であんな話を聞いたら寝ていられないか。

「結論は出なかった。いくつか案が出たけど、明日改めて検討するって」

「そっか」

「……お前ばっかりズルくねぇ?」

 向上心が強い人間には、クランマスターの話し合いに呼ばれる姿は妬ましいだろうな。精神的に削られて、しんどいんだけど。


「武力より頭脳労働が評価されてるからだろ。何かいい案があったら、進言するといいよ」

 ちょっと嫌味っぽかったかな。自分でも、なんで呼ばれているんだろうとは思う。Bランクの人がいないのに、Cランクの俺たちが参加したんじゃ、面白くないと思われても仕方がない。

 だけど、いいことばかりじゃないぞ。予定外の話し合いで風呂の時間が終わってしまい、入り損ねたし。

 オンに懐かれたせいもあるかな。彼女が自分の能力を小出しにするのは、こちら側を警戒しているんだろうか。

「場違い感がすごいのに、提案しろと求められるのも緊張するんだぞ」

 しまった。拗ねたみたいな口調になってしまった。

「悪い。そうだよな」

 素直に謝られた。突っかかるというより、ちょっと愚痴を言いたくなっただけか。

「トーマは『賢者』的な存在だと考えればいい。俺たちは地道にBランク目指していくしかないって」

「ああ、まずは二人部屋を目指そう」

「その後はAランクの個室だな」

「おお! そうだ、そうだ」

 同じパーティーの二人は励まし合って、俺はまるで蚊帳の外だ。同室になって数ヶ月経つけれど、仲良くなれた気がしない。

 ここで奮起して、いろいろな案を出してくれてもいいんだけどなぁ。考える素振りもせずに、すぐ諦めて放置されるのは悲しいぞ。


「眠っている奴がいるから、声を落とした方がいい」

 今さらだが、二人に声をかけた。

 もう一人の同室の奴は、布団を頭まで被って丸まっている。完全に眠っているのか、タヌキ寝入りか……。

 俺も顔だけ洗って、とっとと寝てしまおう。



 深夜の会議室には、バスラとアーデンとオンが残っていた。

「正直な話、岩モグラを倒すだけなら難しくないだろ?」

 バスラが声を潜めて、オンに確認する。

「まあ、そうですね。殺すでも、動物使いの命令を上書きして逃走させるでも……だから、宗教団体を襲わせることも可能です」

 くつくつとオンが笑う。冒険者としての経験が少ないトーマは、ときどき常識外れのすごいことを言う。動物使いは、動物や魔物の意思を曲げて従わせる。その支配を破り、さらに上書きするなど、圧倒的強者の暴力的な蹂躙に他ならない。

 そして、それができる自分をオンは誇らしく思った。


「猫を被るのが上手くなったもんだな。規格ハズレだが『冒険者』の枠に収まっているように見えるよ」

 アーデンが強い酒に口を付けた。

「ワイバーンを討伐したあとに、勉強しましたから」

 オンは目を細めて、褒め言葉として受け取った。

「このクランに来てから一年ほどは、器物破損の被害がひどかったけどな」

 バスラが苦笑いでちゃちゃを入れる。

「これから、その分働かせてもらいますね?」

 オンが小首をかしげて、ニコリとかわいい表情を作る。

「そういうのも勉強したのか」

 アーデンが片方の口の端を上げ、面白がった。

「羊の皮を被らないと、群れに入れてもらえませんから」

 オンは頬に手を当てて、ふふっと笑った。


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