宴の準備
王都の観光に区切りをつけ、クランハウスへ戻った。
日が沈み、下働きの子が明かりを点けて回っている。少し匂いがしたので、迎賓館は匂いがしない高級品を使っていたことに気付いた。
早速、食べ物を抱えてフォンの客室へ向かう。
一応ノックをしたら、中から声がした。
オルドと魔法使いがいて、帰り支度をしているところだった。
「何か進展はありましたか?」
ちょっと失礼かもしれないけれど、内心の焦りもあって尋ねてしまった。
「繭を解くのは本人次第だからね。話しかけても反応はないだろうけど、話しかけてやって」
と、初めて見る魔法使いが言った。
「もしかして、妖精族の方ですか?」
「そう。こっちに出てきて冒険者をやっているんだ。有名なクランから依頼が来て驚いたよ」
妖精族にも話が通じる人はいるんだな。
「フォンはお腹空かないん?」
サァラが心配そうに訊いた。
「光に当てたら、そこから栄養を作るから大丈夫だよ」
それなら、ひとまず安心していいのかな?
「他に気をつけることってありますか?」
ルナが妖精族の魔法使いに話しかけた。
「繭になってしまうと中の様子をうかがえなくなる。何か変化があったらすぐに対応するってことでいいと思うよ」
「……そうですか」
それしか言えなかった。
彼らが出て行ってから、俺たちは食べ物を繭の周りに広げた。
「カップを持ってこようか」
「あ、そうだね。ありがとう」
フォンの無事は確認できてよかったが、俺たちにできることもないらしい。なんとなく空気が沈む。
せっかくの屋台料理も、盛り上がりそうにない。
「エドガーさんとアーデンさんにも声をかけようか」
ふと思いついた。アーデンさんがいたら、暗くなりようがない。
サァラの尻尾がピクリと動いた。
「え、英雄と……?」
「あ~、酒が入るとただのオッサンだよ」
郷土会で何度も飲んだから知っているが、普通の人だ。気っぷが良くて、頼りがいはあるが……かなり下品なことを言ったりもするし。
「それだと料理が足りなくなるかもね?」
ルナはもう決定事項みたいに、いそいそと動き始めた。頬を染めて、可愛らしい。そんな顔、見たことないぞ。
――なんか、ムカついてきたんだが。
まあ、雰囲気が明るくなってきたから良しとしよう。
「声をかけてくるから、準備よろしくな」
やたら張り切りだした二人に複雑な思いを抱えながら、俺は二人の客室に向かった。
「ああ、これから食堂に食いに行こうかと思っていたんだ」
「せっかくのお誘いだから、お邪魔しましょう。トーマの活躍も聞きたいしね」
アーデンもエドガーも気持ちよく了承してくれた。
「俺の活躍ですか? 堅実にCランクとして……」
最後にエドガーと会ったときはまだホテルの厨房で働いていた。しっかりと冒険者をやっている話をしたい。子どもの頃からの夢を叶えたわけだし、応援してくれたエドガーに報告できるのが嬉しい。
「いやいや、ハーレムパーティーを作るとは、感心したよ」
アーデンが俺の背中を叩きながら、がははと笑う。
「え、それは、成り行きで……」
活躍って、そっちかー!




