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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十四章 クランでの生活

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宴の準備

 王都の観光に区切りをつけ、クランハウスへ戻った。

 日が沈み、下働きの子が明かりを点けて回っている。少し匂いがしたので、迎賓館は匂いがしない高級品を使っていたことに気付いた。


 早速、食べ物を抱えてフォンの客室へ向かう。

 一応ノックをしたら、中から声がした。

 オルドと魔法使いがいて、帰り支度をしているところだった。


「何か進展はありましたか?」

 ちょっと失礼かもしれないけれど、内心の焦りもあって尋ねてしまった。

「繭を解くのは本人次第だからね。話しかけても反応はないだろうけど、話しかけてやって」

 と、初めて見る魔法使いが言った。


「もしかして、妖精族の方ですか?」

「そう。こっちに出てきて冒険者をやっているんだ。有名なクランから依頼が来て驚いたよ」

 妖精族にも話が通じる人はいるんだな。


「フォンはお腹空かないん?」

 サァラが心配そうに訊いた。

「光に当てたら、そこから栄養を作るから大丈夫だよ」


 それなら、ひとまず安心していいのかな?


「他に気をつけることってありますか?」

 ルナが妖精族の魔法使いに話しかけた。


「繭になってしまうと中の様子をうかがえなくなる。何か変化があったらすぐに対応するってことでいいと思うよ」

「……そうですか」

 それしか言えなかった。


 彼らが出て行ってから、俺たちは食べ物を繭の周りに広げた。

「カップを持ってこようか」

「あ、そうだね。ありがとう」

 フォンの無事は確認できてよかったが、俺たちにできることもないらしい。なんとなく空気が沈む。


 せっかくの屋台料理も、盛り上がりそうにない。

「エドガーさんとアーデンさんにも声をかけようか」

 ふと思いついた。アーデンさんがいたら、暗くなりようがない。


 サァラの尻尾がピクリと動いた。

「え、英雄と……?」

「あ~、酒が入るとただのオッサンだよ」

 郷土会で何度も飲んだから知っているが、普通の人だ。気っぷが良くて、頼りがいはあるが……かなり下品なことを言ったりもするし。


「それだと料理が足りなくなるかもね?」

 ルナはもう決定事項みたいに、いそいそと動き始めた。頬を染めて、可愛らしい。そんな顔、見たことないぞ。


 ――なんか、ムカついてきたんだが。


 まあ、雰囲気が明るくなってきたから良しとしよう。

「声をかけてくるから、準備よろしくな」

 やたら張り切りだした二人に複雑な思いを抱えながら、俺は二人の客室に向かった。


「ああ、これから食堂に食いに行こうかと思っていたんだ」

「せっかくのお誘いだから、お邪魔しましょう。トーマの活躍も聞きたいしね」

 アーデンもエドガーも気持ちよく了承してくれた。


「俺の活躍ですか? 堅実にCランクとして……」

 最後にエドガーと会ったときはまだホテルの厨房で働いていた。しっかりと冒険者をやっている話をしたい。子どもの頃からの夢を叶えたわけだし、応援してくれたエドガーに報告できるのが嬉しい。


「いやいや、ハーレムパーティーを作るとは、感心したよ」

 アーデンが俺の背中を叩きながら、がははと笑う。

「え、それは、成り行きで……」

 活躍って、そっちかー!


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