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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十四章 クランでの生活

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昔なじみと今の仲間

 四人部屋に案内されると、俺の荷物が置いてあった。

 自前の服に着替え、伸びをした。こっちの方が、俺らしいよな。


 ベッドに座り、胸元のタグを手のひらに乗せて眺める。

 冒険者ギルドと商業ギルドの二つのタグ。


 アーデンのクランは同郷なら駆け出しから所属できたが、このバスラのクランはCランク以上が加入の条件になっているそうだ。

 つまり、Cランクは一番下。ランクが上がれば個室になるらしいが、これ以上ランクを上げられる気がしない。


 やらずに諦めるわけじゃなく、冒険者の世界にどっぷり浸かったからこそ限界が見えてしまった。

 がむしゃらに鍛えても、体を壊すだけだ。

 良い機会だから、ここで立ち止まって考えてみようと思う。

 これから、どう生きていくのかを……。



 夕食の時間になって食堂に行くと、ルナとサァラがいた。

 二人も四人部屋に案内されて、そこにフォンの荷物が置いてあったという。

「ぬいぐるみをフォンの繭の部屋に持っていくか、やめておいた方がいいか悩ましいにゃ」


「クラン内で盗まれるとか考えたくないけど、用心するにこしたことはないよな」

 疑り深くなってしまう自分が悲しいが、事前に対策するしかない。後悔しないですむように――


「そんなことがあったら、フォンが繭を飛び出してくるかも。

『私のぬいぐるみに何をするの!』って」

 ルナが快活に笑うが、うっすら目が潤んでいる。


「そういえば、オルドさんはエドガー様の屋敷で、『光牙の道標』に合流したよ」

 ルナは肉を食べながら教えてくれた。


「これで完全に、ぬいぐるみの護衛任務が終わった気がするにゃ」

 サァラが麦酒をテーブルに置いて、ぷはっと息を吐いて笑った。


「そういえば、そうだな。エリオット様や光牙の道標と、なんやかやと行動を共にしていたもんなぁ」

 きれいに区切りがつく前に、次々と問題が起きたせいだ。



 そこにエドガーとアーデンがやってきた。

「同席していいかい?」

 エドガーが優しく声をかけてきた。


 俺がルナとサァラに確認しようと顔を向けると、二人とも顔を赤くして固まっている。

 んん? どういう反応だ、これ?

「大丈夫か?」

「も、もちろん!」

 ルナが大きめの声を出し、サァラは首を縦にぶんぶん振っている。


「……だ、そうです。どうぞ」

 俺の両隣にアーデンとエドガーが座った。

 ルナとサァラの意識がアーデンに向いているのがわかる。


 ここで紹介するのは俺の役目か。

「パーティーを組んでいるルナとサァラです。

 こちらは同郷で村長の息子のエドガーさんと元冒険者のアーデンさん」


「『花猫風月』でリーダーをやっているルナ。剣士です」

「格闘家のサァラにゃ。あの……ワイバーン討伐に参加してましたっ」

 二人ともカチコチに緊張している。

 そうか。二人にとっては「英雄アーデン」なんだ。

 Cランクから見たSランクなんて、雲の上の人物みたいなものだよな。


 アーデンはこういう反応に慣れているようだ。

「そう固くならないでくれよ。まずは飯を食おう」


「アーデンさん、トレーを自分で運んできたんですね」

 つまり、義足でもこぼさないくらい安定して歩けているということだ。


「もう何年も経っているんだ。ベテランだぞ」

 そう言って自分の膝を叩き、アーデンは豪快に笑った。


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