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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十四章 クランでの生活

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初めてのクラン

 バスラのクランハウスに着いた。

 煉瓦作りの三階建て。王宮のような華やかさがなくてホッとする。

 と言っても、田舎の冒険者ギルドより立派な佇まいだ。


 体格のいい獣人たちが待機していて、フォンが入った繭を運ぶと申し出てくれた。二人で抱えて、慎重に階段を登る。俺は、その後ろをルナたちとついていった。

 日当たりのいい個室だ。真ん中にマットやクッションが置かれている。そこに繭を横たえた。


「ありがとうございます」

 ルナが代表して礼を言った。

 その横でサァラがクッションの場所をいじって、少しでも快適になるようにしている。


「ざっと話は聞いている。これからクランに加入するんだろ?

 よろしくな」

 獣人たちはそう言って、応接室に案内してくれた。

 急いでクランへの加入手続きをしないといけないんだった。



 応接室には、クランで事務担当をしている人が待っていた。クランの規則を説明して、問題なければ署名するように言われる。

 俺たちはフォンを妖精の国に連れて行かれないために、名前を書いた。


「大丈夫。フォンだってわかってくれる」

 ルナが自分に言い聞かせるように呟いた。


「妖精族の方が安全に繭を解けるのかもしれない。だけど、あんなふうに自分の都合を押しつけてくる人がいたら駄目だ」

 俺は、ルナだけの責任じゃないと伝えたかった。

 あの婆さんは、フォンの六歳から今までの人生を否定しかねない。俺が肉親の情を知らないからか――あの重い愛情には狂気を感じた。

 自分の感情を押しつけるのは、果たして「愛」と呼べるのだろうか。妄執というか、うさんくささが漂うと言ったら、叱られるかな。


 だけど、あの婆さんより、俺たちの方がフォンのことを知っていると主張したい。



「えっと……フォンの目が覚めて、クランから抜けることもあり?」

 サァラがずばりと質問した。


「加入と脱退には一定の決まりがあります。ですが、クランマスターのバスラさんの口利きですから、特例が認められると思いますよ。

 それよりも、早く冒険者ギルドに行って、手続きをしましょう。冒険者タグにクラン所属と書き込んでもらわないと」

 事務担当者はさっと立ち上がったが、ピタリと止まった。


「フォンさんの冒険者タグは、もしかしなくても……繭の中ですかね?」


「……おそらく、そうです」

 繭に包まれるのを見ていた俺が答える。


「まあ、パーティーの四人中三人のタグに書いてあれば、なんとかなるでしょ」

 急に適当なことを言いだし、俺たちを促して冒険者ギルドに向かった。



 ルナとサァラは王都の冒険者ギルドに顔を出していたらしいが、俺は初めてだ。

 整然としている、それが第一印象だった。

 一階のホールが広い。

 掲示板を見ていて誰かにぶつかられることはなさそうだ。

 警備担当らしき人が立っている。もめ事があったら即座につまみ出されるのだろう。

 あ、それから、臭くない。埃っぽさと汗臭さが、皆無とは言わないが薄い。


 都会はすごいな。


 クランの事務担当者が受付で説明すると、別室に案内された。

 普通の冒険者だったらカウンターでパパッと手続きするよな。なんか……特別扱いされているのか?


少し前に「終わりが見えてきた」と書きましたが、クランのことを書かずに「数年後」に飛んだらバランスが悪い気がしてきました。

もう少しお付き合いください。

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