表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十三章 過去と未来と

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

208/210

王城を出る

「先ほどの方は通訳が専門ですから言い負かせましたが、交渉が得意な人が出てきたら厄介です。負ける気はありませんが、引き留められる可能性が大きいでしょう。

 すぐにクランハウスへ移動してください」

 宰相が荷物を運べる馬車を用意するよう指示を出した。


「トーマ君とオルドさんも一緒に行きますか?

 それなら急いで荷造りをしてください」


 あれ、いいのか? 王城から出ていいなら出るけど。

 嬉しい反面、急なことで戸惑ってしまう。


「あたいはフォンの荷物をまとめてくるにゃ」

 サァラが手を挙げた。


 ルナは、フォンの繭をちらりと見た。

 バスラが連れてきた魔法使いが、繭も運べるように準備すると請け負う。


 フォンの部屋の鍵はテーブルに残されていた。それを持った使用人が、二人を部屋へ案内していった。



 こうして慌ただしく王城を後にすることが決まった。


 煌びやかでお行儀のいい王城での生活から、逃れられる。

 顔見知りになった使用人や騎士、魔法使いを目指す子どもたち……挨拶する時間はないが、元々住む世界が違うんだ。ほんの一時の縁だったと割り切ろう。



「オルドさんは、魔塔の方に荷物を取りに行く必要ないんですか?」

 俺はクローゼットから服を取り出しながら尋ねた。

 エリオットから借りた貴族の普段着は、布がしっかりしていて飾り付けもあって場所を取る。ぎゅうぎゅうに押し込めてしわをつけるわけにもいかない。


「……まあ、置いていっても構わないか」

 と、微妙な言葉が返ってきた。

 本当に大丈夫なのかな。ちょっと不安は残るが、触れないでおこう。



 荷物を持って食堂に戻る。

 宰相は王宮に戻り、代わりに宰相補佐が来ていた。


 宰相が心配していたとおり、弁の立つ妖精族が通訳を介して申し立てをしているようだ。

 妖精という言葉に穏やかな種族のイメージがあったんだけど、そんなことはないんだな。

 興奮して持論を押しつけている姿に幻滅する。


 宰相補佐の部下がそっと俺たちの方に来て、妖精族に気付かれないうちに馬車に乗れと言う。

 軽く頭を下げて、俺たちは急いで裏口に回った。


 初めて来た時も旅で汚れていたから裏口から入った。それを思い出して、冒険者は迎賓館の正式な客層じゃないもんなと笑いたくなった。



 大きな荷馬車に乗ると、繭は柔らかな布で包まれて、側にルナとサァラが座っていた。

 バスラとそのクランの魔法使いもいた。


「エリオット様は、妖精族に抗議するために残るそうだ。さあ、我がクランに行こうか」

 バスラの合図で、馬車が動き出した。

 迎賓館と王宮を行き来する豪華な馬車ではなく、荷物を運ぶ馬車だ。振動が伝わり、繭が転がらないか注意しておかないと――



「クランの加入手続きが終わったら、あたしたちも領主様のお屋敷から荷物を移動するから」

 ルナは、繭を撫でながら言った。


「それ、触って大丈夫なのか?」

 昨晩はどう扱っていいかわからず、周囲で心配するだけだったんだが。


「う~ん、あたいが何も考えずに触っちゃったにゃ。今のところ、問題ない感じ?」

 サァラが鼻の頭をかきながら、笑った。

 魔法使いとオルドは情報交換をしていて、特にサァラを咎める様子はない。


 冒険者って、とりあえず動いちゃうところがあるよな。

 慎重な王城の人たちを思い出し、自分はこっちの方が性に合っていると改めて思うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ