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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十三章 過去と未来と

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ちょっと目を離した隙に

 食堂に向かう間に、オルドが妖精の国から技術者たちが来たと話してくれた。

 フォンのサークレットを調べてくれることになっている。


 先日から迎賓館にいる人たちは通訳で、今日来た人たちはしゃべれない。専門的な会話になると、通訳の人たちに知識がないから困ってしまうそうだ。



 そんな話を聞きながら食堂に入ると、老婦人がフォンの肩を掴んで、なにやらまくし立てていた。

 フォンは困惑したまま、返事もできないでいる。

 他の妖精族は口頭で落ち着かせようとしているが、老婦人は止まらない。



 しまった。オルドが俺を迎えに来たから、フォンが一人だったのか。


 老婦人は何かを叫んで、フォンに抱きついた。フォンは座った状態だったので、立っている老婦人から逃げることができない。


「何してるんだ!」

 老人だろうと女性だろうと、フォンを傷つけるなら許さない。


 走って二人のところまで行こうとするのを、両手を広げて遮る者がいた。

「申し訳ございません。絶対に危害は加えませんので」


 通訳は俺の勢いを削いでから二人に近づき、老婦人の方に話しかけた。

 だが聞く耳を持たない。首を横に振って、ますますフォンにしがみつこうとする。


 不安そうなフォンと目があった。

 もう、力ずくで助けるしかない。一度は通訳の顔を立てたが、無視してやる。


 俺が老婦人の肩に手をかけ、引き剥がそうとしたその時――


 老婦人が何か言葉を発し、フォンのサークレットの石が光った。

 石を囲っていた金具がはじけ飛ぶ。

 フォンが額に巻いている布に、石がめり込んでいく。


 サークレットが直に肌に当たらないように巻いている布に、ぐりぐりと――!


 オルドが老婦人を引き剥がす。

「そいつを拘束しておけ!」


 妖精族の人たちが慌てて、床に転がされた老婦人を取り囲んだ。


 俺は、フォンたちと妖精族の間に陣取る。オルドの邪魔はさせない。

 背後でオルドの詠唱が聞こえるが、何の呪文か素人にはわからない。


 シュルシュルっと妙な音がした。

 振り返ると、フォンが木の枝のようなものに囲まれつつある。


「フォン!」

 叫ぶと、うっすら目を開けたフォンの口が「ト……マ」と動いた気がした。



 完全に木の枝で覆われ、楕円形の繭が迎賓館の食堂に浮かんでいる。

「なんだ、これは?」


「樹木系の妖精の、防衛手段です」

 妖精族の一人が、青ざめながら言った。


「外部からの攻撃ではないのか。反射の呪文が効かないわけだ」

 オルドは額に汗を滲ませながら、悔しそうだ。


「つまり? フォンには危険がないと?」


「はい。そのはずです。気持ちが落ち着いたら、繭を解くはず……」


「では、その婆さんがフォンを傷つけて――引きこもりたいと思うまで追い詰めたってことだな?」

 俺の乱暴な話し方に、みんなが驚いているのを感じる。迎賓館だから行儀良くしていただけ。

 もう、悠長なことを言っている場合じゃない。



「悪気はないのです。傷つけるなんて、絶対にしません。

 彼女は、生死不明と思われていた孫なのです。それで、感極まって話しかけていただけで……」

 通訳が必死に弁護する。


「だが、フォンはそれを聞きたくないと思ったから、こんなことになったんだよな?」

 反省していない妖精族に、目つきも言葉もきつくなっていく。


「それは……」


「宰相室と魔塔に、連絡してください」

 こいつらに都合いいようにされないために、助っ人を呼んだ。

 もう退勤時間を過ぎているが、宰相室なら誰か残っているだろう。


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