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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十三章 過去と未来と

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特に何もない一日

 エリオットは宰相補佐に会いに行った。ぬいぐるみを作る領が決まったかを確認すると言っていた。


 俺は、騎士団の訓練場へ向かう。



 魔法の訓練は、中止することになったのだ。

 少しだけ魔法を発動できたのだが、寿命を縮めかねない使い方をしているらしい。

 外部の魔力を取り込めと言われても、よくわからない。体内の魔力だけ使っていると、あっという間に枯渇するんだそうだ。


 魔法を習っていた子どもたちは、無意識に外部魔力を取り込める子ばかりだという。

 俺は魔法を諦めた。

 もともと魔法系のスキルじゃなかった時点で、学ぼうとも思わなかったんだ。火打ち石の代わりに火をつけられるだけで上等だろう。


「今まで授業に混ぜてくれて、ありがとな」

 挨拶をしたら、別れを惜しんでくれた。

 ここの子どもたちは、スキルを得る前に魔法が使えている。本当に優秀な人材だな。

 だから、生意気な口をきくのも許されてきたんだろう。


「もっと頑張ればいいじゃん」

「魔法が使えなくても、生きていけますよ。落ち込まないで」

「あの、美人のお姉さんを紹介してください」


「ん? フォンのことか? ませガキめ」

 頭をぐりぐり揉んでやった。


 最初はエリートなお子様たちとギスギスしていたけど、少し仲良くなれたと思う。

 というか、ぐいぐいプライベートに入ってこようとして、こちらが引くこともあった。


 村でもこういう子はいたけど、あまり仲良くなかった。「トーマはなんで親と仲良くできないの?」と、ずけずけと人の事情に踏み込もうとするのは勘弁してほしかった。

 今は、親のことを訊かれたら「独立してるんで」と躱すことができる。大人だから、穏便にやり過ごすんだ。



 教師にもお礼を言うと、そっと耳打ちされた。

「王女殿下がバーベキューのことを耳にされて、ご自分も参加したいとおっしゃっているそうです。

 もし、やることになったらご協力いただけますか?」


 問いかけるように言っているが、目は「お前が言い出してやったことなんだから」という圧を感じる。

 子どもたちが頭でっかちになっているからガス抜きさせて、居心地を良くしようと思っただけなんだが……。


 仕方ない。

「その時にまだ迎賓館にいたら、お手伝いしますよ」

 と、答えた。


「はっ、そうでしたね。お客様だったんだ」


 ええ、王城の職員ではないですね。ずるずると長期滞在していますが。



 そんなことを思い出しながら、騎士団の訓練場への道のりを歩く。慣れてくるとその都度馬車に乗るのも面倒くさい。


 体を動かすと、その間は悩み事が消える。体に意識を集中するからな。


 休憩時間に声をかけられた。

「おう、久しぶりだな。魔法の授業はどうした?」


「あはは、あまり才能がないことがわかりました」


「あの連中は特別だから、落ち込むなよ」


「ひどいこと言われなかったか? 小さい頃に親から引き離されて魔法、魔法で、人間味に欠けるんだよな」


 親と引き離されて……?

 腑に落ちた。

 大人を試すように挑発し、一度懐いたらベタベタとまとわりつく、妙な距離感。愛に飢えているんだ。


 ……今度、手作りのお菓子でも作って差し入れるか。いや、一緒に作るのもいいかもしれない。



 ふと、引き出しにしまった手紙が脳裏をよぎった。

 ガルドとブルーノの親からの手紙が――


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