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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十三章 過去と未来と

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201/210

お疲れ

 会議が終わり、迎賓館へ戻る馬車に揺られる。

 座席の上に手紙を置いた。


 かつてのパーティーメンバーの親からの、命乞いのような手紙なのだろう。

 エドガーは読まなくてもいいと言ってくれた。


 ガルドの両親は、十歳でスキルをもらうまでは普通に接してくれていた。

 俺が「下ごしらえ」だと知ってガルドに距離を置かれ、そのまま両親とも関わりがなくなった。


 ブルーノの家族とは、ほぼ思い出がない。ただ、同じ村というだけだ。

 あ、俺が祭とかでも端っこで、裏方を手伝っていたからか。

 そういえば「スキルがしょぼいと可哀想」とか、言われたことがあったな。

 ははは、立派なスキルをもらった息子さんは、犯罪者になりましたねぇ。そんな嫌味が浮かんでしまった。

 性格悪いな、俺。


 はあ、気が重い。



 夕飯まで部屋で寝転んで過ごしたい。

 貴族っぽい豪勢な服を脱ぐために使用人に声をかけた。腰にベルトがあるが、袖周りがぴったりすぎて破いてしまいそうだ。

 人手を借りること自体がお金持ちの証らしいが、本当に窮屈だ。


 バスラのクランに俺も行きたかったな。

 アーデンとの冒険も聞きたいし、エドガーと情報交換もしたい。


 何かあったとき、世話になった人なら助けたいけど、そうでもない人のことは面倒くさいな。

 サイドテーブルに放り出した手紙を、ちょっと乱暴に引き出しにしまった。なんとなく、視界に入れたくない。


 サァラだったら、「ほっとけにゃ」とか言うかな。

 ルナだったら「気になって眠れないなら、読めば?」とか……「代わりに読んであげよっか」とか?

 フォンは――今は、それどころじゃないか。


 ベッドの上でぐだぐだとしていたら、日が暮れていた。

 騎士団の訓練場に行って体を動かせばよかったと気付いても、もう遅い。



 食堂に行ったら、フォンとオルドもちょうど魔塔から帰ってきたところだった。


 今日は別の集団も食堂にいる。時々、知らない言葉でしゃべっている。


「彼らは妖精族の通訳だ。

 近いうちに妖精の国より魔導具に詳しい人物が派遣される。その準備をしているらしい」

 オルドが、そう説明してくれた。


「それじゃあ、進展があったんですね」

 希望を持てるとフォンを見たら、浮かない顔をしている。


「いいえ。進展がないから、外国に助けを求めたのよ」


「あ……そういうことか」

 最近のフォンは発言も後ろ向きで、ときどき投げやりだ。

 俺みたいに息抜きしていないし、サークレットが外せないことに不安も募っているだろう。


 なんだか、俺の方の話をするような雰囲気じゃないよな。

 もらった手紙を読むか読まないかなんて、些細なことだ。


 会話が途切れて、サラダをフォークでつついた。青い葉っぱのえぐみが喉に引っかかる。



「そうだ。今日、アーデンさんと会ったんだ。

 ワイバーン討伐の英雄バスラさんと二人揃って」

 そう話し出すと、オルドが興味津々といったふうに質問攻めにされた。


 フォンは静かに微笑んでいるが、とても頼りない風情だ。話しかけても、返事が返ってくるまでに間が開く。

 捕まえていないと消えてしまいそうな……。


 妖精族の関係者が、ちらりとこちらを見た。フォンが妖精族だと気付いたのだろうか。


 食事が終わったらフォンの部屋に行って、マッサージをしてあげよう。ルナに教わったし。

 俺がガルドたちに傷つけられて、立ち直るまで寄り添ってくれた。――あの借りを、今返す。


物語の終わりが見えてきました。

暗いお話が続いてしまいますが、お付き合いいただけると嬉しいです。


ハーレムものとして書き始めたのですが、三人のうち誰と結ばれてほしいとかご要望ってありますか?

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