お疲れ
会議が終わり、迎賓館へ戻る馬車に揺られる。
座席の上に手紙を置いた。
かつてのパーティーメンバーの親からの、命乞いのような手紙なのだろう。
エドガーは読まなくてもいいと言ってくれた。
ガルドの両親は、十歳でスキルをもらうまでは普通に接してくれていた。
俺が「下ごしらえ」だと知ってガルドに距離を置かれ、そのまま両親とも関わりがなくなった。
ブルーノの家族とは、ほぼ思い出がない。ただ、同じ村というだけだ。
あ、俺が祭とかでも端っこで、裏方を手伝っていたからか。
そういえば「スキルがしょぼいと可哀想」とか、言われたことがあったな。
ははは、立派なスキルをもらった息子さんは、犯罪者になりましたねぇ。そんな嫌味が浮かんでしまった。
性格悪いな、俺。
はあ、気が重い。
夕飯まで部屋で寝転んで過ごしたい。
貴族っぽい豪勢な服を脱ぐために使用人に声をかけた。腰にベルトがあるが、袖周りがぴったりすぎて破いてしまいそうだ。
人手を借りること自体がお金持ちの証らしいが、本当に窮屈だ。
バスラのクランに俺も行きたかったな。
アーデンとの冒険も聞きたいし、エドガーと情報交換もしたい。
何かあったとき、世話になった人なら助けたいけど、そうでもない人のことは面倒くさいな。
サイドテーブルに放り出した手紙を、ちょっと乱暴に引き出しにしまった。なんとなく、視界に入れたくない。
サァラだったら、「ほっとけにゃ」とか言うかな。
ルナだったら「気になって眠れないなら、読めば?」とか……「代わりに読んであげよっか」とか?
フォンは――今は、それどころじゃないか。
ベッドの上でぐだぐだとしていたら、日が暮れていた。
騎士団の訓練場に行って体を動かせばよかったと気付いても、もう遅い。
食堂に行ったら、フォンとオルドもちょうど魔塔から帰ってきたところだった。
今日は別の集団も食堂にいる。時々、知らない言葉でしゃべっている。
「彼らは妖精族の通訳だ。
近いうちに妖精の国より魔導具に詳しい人物が派遣される。その準備をしているらしい」
オルドが、そう説明してくれた。
「それじゃあ、進展があったんですね」
希望を持てるとフォンを見たら、浮かない顔をしている。
「いいえ。進展がないから、外国に助けを求めたのよ」
「あ……そういうことか」
最近のフォンは発言も後ろ向きで、ときどき投げやりだ。
俺みたいに息抜きしていないし、サークレットが外せないことに不安も募っているだろう。
なんだか、俺の方の話をするような雰囲気じゃないよな。
もらった手紙を読むか読まないかなんて、些細なことだ。
会話が途切れて、サラダをフォークでつついた。青い葉っぱのえぐみが喉に引っかかる。
「そうだ。今日、アーデンさんと会ったんだ。
ワイバーン討伐の英雄バスラさんと二人揃って」
そう話し出すと、オルドが興味津々といったふうに質問攻めにされた。
フォンは静かに微笑んでいるが、とても頼りない風情だ。話しかけても、返事が返ってくるまでに間が開く。
捕まえていないと消えてしまいそうな……。
妖精族の関係者が、ちらりとこちらを見た。フォンが妖精族だと気付いたのだろうか。
食事が終わったらフォンの部屋に行って、マッサージをしてあげよう。ルナに教わったし。
俺がガルドたちに傷つけられて、立ち直るまで寄り添ってくれた。――あの借りを、今返す。
物語の終わりが見えてきました。
暗いお話が続いてしまいますが、お付き合いいただけると嬉しいです。
ハーレムものとして書き始めたのですが、三人のうち誰と結ばれてほしいとかご要望ってありますか?




