会議は踊る?
そのあとの会議は紛糾した。
「バスラ殿。会議の雑談だとしても、あまりにも剣呑な発言はお控えください」
宰相補佐がたしなめた。
「奴らが冒険者ギルドの勧告を舐めているからだろう」
バスラは、自分の発言を撤回する気はないようだ。
「トゥルメルの国境を閉じて、レスタール王国を孤立させれば反省するのでは? 他国から冒険者が来なければ、待遇を改善せざるを得ないでしょう」
「都合よく、災害級のモンスターが出現してくれればいいですけど……そんなのは何年先になることやら」
「また冒険者が使い潰されるだけだ。レスタール王国にいる冒険者を見殺しにするな」
バスラが苛立ちを滲ませた。
「冒険者ギルドが政治不介入という前提を崩されるのは困る」
冒険者ギルドの本部の人間だろうか。バスラを諫めた。
「政治的には、介入するほどの大義名分はないんですよね。
冒険者は自己責任。どの国で活動するかも含めて……ですから」
突き放すような発言が出た。
アーデンからも苛立つ気配がした。
「腐った他国のために、我が国の兵士を一人たりとも傷つけさせるわけにはいかない」
軍の関係者が、一線を引くようなことを言う。所詮は他国で起きた問題であり、ファルガン共和国として関わるメリットはない。
領土拡大を目論んで戦争をしかけるならともかく……。
「それなら、ギルドニュースで、『レスタール王国では不遇の扱いを受ける』と注意喚起すればいいんじゃないですか?」
俺は手を上げて発言した。
緊張して震えそうだが、ここまできてレスタール王国の冒険者たちを見捨てられたら困る。
モンスターに対抗できる人がいなくなれば、平民たちの命が危ない。
あの国には山猫亭や顔見知りの冒険者、職人街でいろいろ教えてくれた人たちがいる。
「レスタール王国では長年そうだったから、冒険者たちは自分の権利を知らないだけです。
各国を渡り歩く冒険者に『不利益を被らないよう用心すべし』と情報提供する形にすれば穏便に周知できませんか」
臆病者と言われるかもしれないが、戦う以外の方法を模索すべきだと思う。
「冒険者がニュースなんて読みますかね?」
官僚から馬鹿にしたような発言が出た。
王城での居心地がよくないのは、こういう視線があるからだよな。なんか嫌な感じだ。
「俺……私は、一度ギルドニュースに『快進撃の若手パーティー』として掲載されました。レスタール王国にいたときです。
それだけなのに、こちらの国でも顔を知られていたんですよ」
冷静に説明するように、心がけた。これ以上馬鹿にされたくないからな。
ルナと初めて会ったときに、いきなり「下ごしらえ君」と叫ばれたことを思い出す。
ちょっと恥ずかしかったな。
あ、もう一つ思い出した。
「それにエルフの国がそれを読んで、逃亡者を発見しました。影響力はすごいと思います」
何十年も逃げ回っていたセリアが、ギルドニュースをきっかけにして捕まったんだ。
官僚たちが、ちょっと感心したような表情に変わった。
「知った後は、レスタール王国の冒険者が自分たちで考えるんじゃないですか?
当たり前と思い込んで、諦めているだけだから……」
俺の言葉に、アーデンが腕を組んでうなずいた。
「なるほど。……待遇改善を求めたり?」
冒険者ギルドの人が、顎に手を当てて呟くように言った。
「領主が、『自分の領内の冒険者ギルドはこんなにひどくない』と証明しないといけなくなったりしてな」
アーデンが悪役のような顔でニヤリと笑った。




