旧交を温める
鷲の獣人バスラが、旧友アーデンの顔を見て感極まったようで、ばさりと翼を広げた。
風圧で書類が飛び散った。
宰相補佐が仕方なさそうに肩をすくめ、一旦休憩を挟もうと提案した。
俺は二人に駆け寄り、どうしてここにいるのかを訊いた。
当然のようにバスラも来た。
エドガーは俺の肩に手を置いた。
「トーマが無事でよかった。
ガルドたちとのこと……大変だったな。後遺症とかないか?」
「大丈夫です。倒れていた俺を保護してくれた人が、薬師を呼んで看病してくれたんです」
ああ、サァラと梟のお婆さんに改めて感謝だな。
続いて、エドガーの話を聞いた。
山猫亭に呼び出されて行くと、商人のふりをしたファルガン共和国の人がいた。
レスタール王国と冒険者ギルドの癒着と、ワイバーン討伐で冒険者を適切に扱わなかった疑いがあると説明された。
そのまま商売人を案内するふりをして村へ行き、アーデンを連れて国境を越えてきたそうだ。
かつて冒険者パーティーを組んでいたガルドたちも簡単に密入国できていたし、国境の管理がルーズだな。
その領地を治めるエリオットがここにいないのって、それが関係しているんだろうか。
「レスタール王国側に、邪魔されませんでした?」
自分たちに不利な情報を持っている人間を、簡単に他国に出すのは危険だと思う。
「私の顔など知られていないし、アーデンも筋肉が落ちたから第一印象が違うだろう?」
「まあ、俺を含めて冒険者の扱いに関しちゃ、そういうものかと思っていた。
だが、不当だったというなら、中抜きをしていた連中をとっちめないとな」
がははとアーデンが豪快に笑う。
「取り返しのつかない怪我じゃなかったはずなんだ」
何かに耐えるように、バスラがぎゅっと目を瞑った。
「……不測の事態を含めて、自己責任だ。
この義足の技術を教えてくれる人と出会えたし、まあ、悪いことばかりじゃないさ」
ホテルに泊まっていた外国人のことか。ワイバーン討伐の話を聞きたがって、代わりに義足の情報を教えてくれたんだっけ。
エドガーが、それをきっかけに村に義足の工房を作り、新たな産業を起こしたと笑顔になった。
出会いを「運がよかった」で終わらせないのは、さすがだ。
俺もいろいろな流行を作ると言われるが、ルーツはエドガーなんだよなぁ。心の中で師匠と呼びたい。
会議が再開された。
レスタール王国の冒険者ギルドのすべての支部に、本部から監査人を送った。半分以上の支部が不正に手を染め、冒険者よりも貴族に便宜を図るようになっていた。
新しいギルドマスターを据えられる支部はいいが、そのような人材がいないところもある。数が多すぎて、本部から常駐のギルドマスターを手配するにも限度がある。
レスタール王国は反省せず、冒険者ギルドの刷新にくちばしを挟もうとしてくる。
それに対する方針を決めないとならない。
これは、ファルガン共和国の国王に奏上する内容を詰めるための会議だった。
様々な立場の人が集まり、思い思いに意見を出した。
「外国から圧力をかけて、国王を交代させるのはどうだ? 責任を取って辞任するのは当然だろう」
「王家が全員腐っていることも考えられるぞ。諸外国が一斉に攻めて王家を潰して、臨時政府を立てる。王家の血を引く貴族の中から、まともな人物を選んでもいいんじゃないか」
「もしくは、この共和国の一部として統治する。その方が手っ取り早いだろう」
政治的な野心が顔を出した。冒険者救済の話し合いが、本筋を逸れていく。
「だが、レスタール王国は人族至上主義だ。獣人への反発や抵抗を考えると賛成しかねる」
かなり物騒な話になってきた。
エドガーは村長の息子とはいえ、平民だ。口を挟めず、顔をしかめている。
「Sランク冒険者を数名引き連れて、王城を制圧してもいいですけどね」
バスラが軽く言った。
「だって、我々の敵ですよ? アーデンとなら、災害級のモンスターとも戦えた。
それを、討伐参加という名誉がほしいだけの腰抜け貴族に……擦り傷に治癒師を使ってしまうなんて、国際的な犯罪です」
Sランクの冒険者を敵に回すということは、こういうことなのか。
アーデンを乱暴者だと思うことがあったけど、大人しい方だったのかもしれない。
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