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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十三章 過去と未来と

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王城内でバーベキュー

 数日後、俺は魔法の教師と子どもたちと王城の森に出かけた。

 遊びではなく、授業の一環だ。


 風魔法を使わずに枯れ枝を集める。

 火魔法を使わずに、火打ち石で火を起こす。


「僕たちは魔法が使えるんだ。こんなことやる必要はない」

 と、反発された。


 そんなの想定内だ。俺は年上というアドバンテージを使い、経験を活かして反論する。


「もし魔力切れ寸前まで追い込まれたら?

 次の作戦のために魔力を温存しろと言われたら?

 ダンジョンで魔力無効のフィールドがあったら?

 いくらでも魔法が使えない状況は考えられるぞ」


 魔法は最強だという奢りは、いざという時に生死を分けると思う。

 言い負かされると、文句を言いながらも手を動かし始めた。

 よし、何事も体験してみるのが大事だ。


 一人、どうしても手を出さない子がいる。


「どうした? 食べたくないのか?」

 声をかけた。

 昔、村から街に出る旅でも、食事や片付けをやりたがらない子がいた。

 あれは単なる怠け者だったが、顔を赤くして立っているからちょっと違うのかもしれない。


「やったこと、ないもん」

 小さな声でつぶやいた。


「失敗するのが恥ずかしいのか?」


 こくんとうなずく。


「失敗を恐れていたら、新しいことが出てきたときに挑戦できなくなるぞ。

 今はすでに確立した魔法を教わっているから、教わったとおりにできればいい。失敗も少ないだろう。

 だけど、大人になって研究職になったら、何かを作り出さないと認められないんじゃないか?」


 教師がそのとおりだと、俺の味方をする。


「未知の挑戦は、きっと失敗の連続だぞ。

 失敗してもめげずに繰り返して、ある日当たりを引き当てる。

 失敗とそれを改善する努力を身につけていないと、その日が来る前に折れてしまうんじゃないか」


「その発想はありませんでした」

 教師が感心している。


 お前、教育者だろうと言いかけて、ただ配属されただけの魔法使いだと思い出した。

 村長の息子エドガーのように、教えて導けるような人はそういないんだな。


 失敗したときに寄り添ってくれる人がいなくて、常に競争で上下を決める環境にいたらクソ生意気にもなるか。

 人が失敗したら喜んで、立ち上がれなくなるように嘲笑う――ああ、怖い。



 手で野菜を切り、魔法ではない火で焼く。

 みんなが初めてだから、上手いも下手もない。授業でのピリピリした雰囲気が嘘のように、みんな一生懸命だ。


 ふふっと笑みが浮かぶ。子どもが子どもらしくいられるのっていいよな。

 ただ、皮むきをもっと丁寧にとか、火からもう少し放して時間をかけた方がとか、口も手も出したくなってしまう。

 危険でない限り、本人にやらせる。本人が体験するための時間だ。


 そうわかっていても、見守っているのって、なんとなくキツいな。こっちも精神修行をさせられている気分になってきた。

 つい伸ばしそうになる手を、背中で組む。心の中で、手は出さないと念じる。

 あ~、自分でやった方が早いとか、考えないぞ。手を出したら負け、そういうゲームだと思え。


 見上げると空は青くて、風が気持ちいい。

 ……けど、子どもたちは、それを味わう余裕がなさそうだ。



 彼らは集団生活で、時間になったら料理が出てくる。皿に乗った状態しか知らなかった。

 魔塔をクビになってから冒険者になった人って聞いたことないけど、これじゃあ市井で生きていけないよな。


「脇目も振らずに英才教育っていうのは、効率的なんでしょうけど。

 視野が狭くなってしまうと、壁にぶつかったとき簡単に折れてしまう。

 せっかく技術を持っても、活躍できない人っているんですよ」

 ホテルの副料理長を思い出す。


 エリートだから壁を乗り越えられなかった。今思えば、壁を壊しても、脇に逸れても良かったんじゃないかと思う。

 彼は親に言われたとおり「ホテルの料理長」を目指して、今も自分に鞭打っているんだろうか。

 それ以外にも道があると気付かないまま……。


 不格好な野菜でも、焦げた肉でも、青空の下なら美味しいんだ。

 それを知っているだけで、人生は豊かになる――そんな気がした。


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