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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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怖い

 鷲の獣人がいる。背中に翼があるので、背もたれのない椅子に座っていた。



 冒険者ギルドの王都支部のギルドマスターがいた。

 商業ギルドからも偉い人が来ている。

 外交官とか宰相補佐とか……多分、貴族だよな。

 国際治安機構って、何? 聞いたこともないんだけど。


 目眩がしそうなくらい偉い人のオンパレードだ。

 鷲の獣人はSランク冒険者だって。


 ……俺、席を立って帰っていいですか?



 柑橘系の香りをつけた水が置かれた。

 配ってくれた駆け出しの文官らしき人に軽く頭を下げたら、微笑まれた。

 緊張して喉が渇いていたので、ありがたく飲む。


 はぁ……、何を訊かれるんだろう?



「トーマ君は冒険者ギルドがどんな存在か知っていますか?」

 司会の宰相補佐から質問された。


「え……モンスター討伐の依頼を受けて、冒険者に紹介する、とかですよね?」


「そうですね。

 一番の目的は、災害級のモンスターに対抗できるSランク冒険者の確保です」


「モンスター対策は初手を間違えると、そこがモンスターの縄張りになってしまいます。

 昨日、マーガレットさんが暮らしていた島がオークの領域になってしまった話を聞きましたね?」


「あ、はい」


「あれはきっかけを作った少女が魅了のスキル持ちで、村長たちも魅了されて隠蔽したため手遅れになったと言われています。

 今さら言っても仕方ないことですが、適切に救助要請が出されたとしましょう。

 Sランク冒険者が国に属していた場合、派遣に時間がかかります。

 国同士の利害関係、報酬の額や支払い方法――高額になるため分割で払いたいという場合も多いのです。

 そうこうしているうちに手遅れになるのは想像できますね?」


 話がどんどん大きくなっていく。俺はうなずくことしかできない。


「それをスムーズにするための冒険者ギルドです。

 ですから各国と協力関係にありますが、国が冒険者を独占したり利用したりしてはいけない」


 え……そんなこと知らない。



 鷲の獣人が口を開いた。

「俺はアーデンを掴んでワイバーンの上を飛び、彼を奴の方に放り投げた。

 アーデンは奴の翼を切り落とし、そのまま落下した。

 下っ端の風魔法使いたちが下から風を当てたが、地面に叩きつけられた。

 主力の魔法使いは、まだ生きているワイバーンと戦っていたからな」


 ああ、この人が共に戦ったバスラという人か。

 緊張していたせいか、何度も聞いた「鳥獣人」の話と、すぐには結びつかなかった。


「ひどい打撲だったろうが、すぐに治癒魔法を受ければ足を切断するほどではなかったはずだ」

 落ち着いて話しているが、殺気が漏れている。

 その迫力に手が震えそうだ。


 冒険者ギルドの王都支部のギルドマスターが、バスラの肩に手を置き、殺気をしまうように耳打ちしている。

「各支部で救護テントを張っていて、アーデンはエレッサ支部に運び込まれた。

 治癒魔法が使える神官は、Sランク冒険者を優先して治癒するはずだったのだ。

 申し訳ないが、戦力になる者を優先せざるを得ない」


「え? でも、領主と仲のいい貴族優先って……」

 確か、アーデンはそんなふうに言っていた。


「それが本当なら、大問題なのだ。

 カルディーネ領には、エレッサ支部の他にもいくつか支部がある。

 どこも、平民の高ランカーがワイバーン討伐で引退した」


 それって……同じことが起きているってことか?


「討伐現場のベルモーテ領でも、平民の高ランカーがいなくなった。

 それだけワイバーンの被害が大きいのかと思っていたが、治癒を後回しにされていたなら許されることではない」


 ああ、「平民だから後回し」で治癒してもらえなかったと言っていた。

 それを、俺も当たり前みたいに聞いていた。そうだよ、おかしいよな?


「これがそれぞれの領主の独断でなく、レスタール王国の方針であるなら、国際的に責任を問う必要があるのだ」


 ファルガン共和国の冒険者ギルドから、冒険者ギルド本部に働きかけてくれているそうだ。

 だから、この場に本部の人がいるし、国際なんたら機構の人もいる。


 アーデンさん、この人たちは功績を認めてくれている。

 あんな……ボロボロに使い捨てられたのは、間違っていたんだ。


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