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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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会議場

 しばらくして馬車が二台到着した。

 一台に俺が乗り、もう一台にフォンとオルドが乗った。


 そちらは魔塔に向かうそうだ。

 フォンの顔色がよくない。


「オルドさん。フォンのこと、よろしくお願いします」

 フォンが一人じゃなくて、本当によかった。「光牙の道標」のメンバーには、お世話になりっぱなしだ。


「トーマも気をつけるんだぞ。発言は慎重にな」


 そう言われても、高度なお貴族様たちの遠回しな話し合いについていくだけで精一杯になりそうな予感――。




 一人で乗る馬車は、不安をかき立てた。

 固くならされた土の道。

 土魔法で固めているのだろうか。石畳よりも滑らかで、馬車の揺れがない。

 適度に揺れてくれた方が、気が紛れるんじゃないだろうか……。


 馬車を降りると、使用人が待ち構えていた。

 丁寧に本人確認をされる。まるで領境の門のようだ。


 使用人の後ろをついて王宮の廊下を歩く。昨日とは違う通路だった。

 廊下の柱の影にソファが置いてある。歩き疲れたら休憩でもするのだろうか。

 ああ、女性は引きずるようなドレスに高いヒールで、長い廊下を歩くのも一苦労か。休み休み歩くのかもな。



 案内されたのは、またもや金ピカの部屋。

 謁見室ほど広くはないが、三十人くらい座れそうなテーブルが中央にどーんとある。

 壁際におつきの人たち――補佐官みたいな人が書類や分厚い本を抱えている。


 なんか、すでに怖い。

 使用人さん、案内する部屋を間違えていませんかね。もう立ち去ってしまったので、確認することもできないが。



「君の席はこちらだよ」

 エリオットが手を振ってきた。

 ああ、知り合いがいる。それだけで安心感が全然違う。


 急いでそちらに向かうと、トゥランが椅子を引いてくれた。

 うひゃ、なんで? こんな平民に……そういう場なのか、ここは。


「エリオット様がいらっしゃって、よかったです」

 もう、弱音を吐いてしまう。


「素敵な衣装を着ているじゃないか」


 エリオットの軽口にホッとする。

「衣装係の方々が整えてくださって……」

 来客が困った時用の衣装部屋に案内され、着せ替え人形にされた。

 つまり、俺は貴族のような格好をしているのだ。

 重い、動きにくい、飾りがチクチクする。


「こんな面子だと知っていたら、お祖父様に出席していただくべきだったな」

 エリオットが小声でそうこぼした。


「えっと、領主様ってことですか?」


「そう。だって、国際的な組織の人たちがずらりと座っているんだよ」


 誰が誰やらわからないが、貴族でも腰が引けるほどの面々らしい。

 うーん、困ったな。

 というか全員「偉い人」ということしかわからない。正直、見分けがつかない。

 すごさがわからない分、エリオットよりは気楽かも?


「ま、いいか。私は君の付き添いみたいなものだしね」


 は? なに、その無責任発言!

 わなわなと震えてしまうぞ。梯子を外された気分だ。


 騎士の服から貴族の装いに着替えたトゥランが、心配するなと後ろから話しかけてくれた。

「質問に正直に答えればいい。

 後の判断は、お偉方の仕事だからな」


 た、頼もしい。ありがとう騎士様。



 トントンと手元の資料を整える人がいる。

 こちらをちらりと見る人もいる。


 ザワザワとした中で、場違いというか居心地の悪さを感じていた。

 平均年齢、高いし……一人だけ若造が混じっている状態。

 エリオットも若い部類だ。だから二人並んでいるのは、とても目立つ。



 眼鏡をかけた、髪を撫でつけたお堅そうな人が入ってきた。


「本日は冒険者ギルド及び商業ギルドに所属しているトーマ氏が出席されます。

 現在の拠点、トゥルメルの領主一族エリオット・トゥルメル氏は、彼のサポートという形で参加していただきます。

 みなさまよろしいでしょうか」


 無言でうなずく人が多数いる。誰からも反対意見が出ない。


 ――これ、俺が中心なのか?


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