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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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静かな昼食

 エリオットたちが去ると、迎賓館は静まりかえった。


 そういえば、賑やかなルナとサァラがいないんだ。

 部屋は四人部屋から二人部屋へ移った。

 俺はオルドと同室で、フォンとグレタ婆さんも二人部屋だ。



 昼食の場所は十人くらいでちょうどいい広さの部屋だった。

 しゃれているが、金ピカではなく落ち着いている。


 一つの皿に何種類もの料理が彩りよく盛られ、それが一人ひとりに配膳された。


 オルドが毒のチェックをするのを、給仕たちは無表情で見ている。

 だが微かに口元が引き締められた。疑われて不快なんだろう。



 食事が終わりお茶を飲んでいるところに、事務官がやって来た。

「午後に呼びに来るので昼食後は部屋にいてください。

 それから、ピュージェルの領主が来ているので警戒するようにとのことです」



「あの無作法なご令嬢を引き取りに来たのかい?」

 グレタ婆さんがお茶を飲みながら、事務官に質問した。


「そうです。ですがぬいぐるみ強奪の容疑者ですから、尋問も終わっていないのに引き渡せません」

 事務官は呆れたように言った。


「家門より娘が大事ということか。あんな出来の悪い娘でも愛しているんだな。

 いや、早々に引き取って自分たちで処分するのか? それよりも除籍した方が――」

 オルドが奇妙な動物の生態を観察するかのように、呟いた。


「何も考えていないんじゃないかしら。

 あとで家に罰則を科せられたら、『そんなつもりじゃなかった、見捨てるべきだった』と手のひらを返す可能性が高いと思うわ」

 フォンから刺々しい言葉が出る。


 驚いて顔を見ると、ハッとしたように口元を押さえた。

 いつも穏やかに、丸く収まるように話すフォンにしては珍しい。それだけ、まいっているのだろう。


 フォンの皿は半分以上残っている。

 デザートのプディングをフォンに差し出した。少しでも食べてほしい。


「お腹が空いて苛ついているわけじゃないわ」

 フォンが困ったような……笑顔を作ろうとして失敗したような表情になった。

 俺だって二つもデザートはいらないかもと思う。だけど、他にやってあげられることがないんだ。



「ルールを軽視し、自分勝手に振る舞っておいて、罰を受けたら被害者面する人はどこの世界にもいますよ。

 そんな連中はいつの間にか衰退していきますから、大丈夫です」

 商業ギルドのロイが、どこか遠くを見ながら言う。

 何かを思い出しているのか――それとも、そうであってほしいという願いかもしれない。


 ああ、ごり押ししてくる貴族や豪商から、商売を守るのもギルドの仕事なのか。



 そのときメイドが事務官を呼びに来た。

 この迎賓館の通信魔導具に連絡が来たと。


 戻ってきた事務官は、ロイたちに説明した。

「ぬいぐるみの会議が始まるので、私が乗ってきた馬車で向かってください」


「恐縮ですが、王城の配置がわかりません。

 どなたに案内を乞えばよろしいでしょうか」


「御者が一番近い出入り口までご案内します。

 そこに担当が出迎えに来ているはずですから、ご心配なく」


「資料を部屋に取りに行ってきます」

 商業ギルドの職員がバタバタと動き出した。



「俺たちはまだ、待機ですか?」

 事務官に尋ねると、肯定が返ってきた。


「いろいろと連絡調整に時間がかかっているようです。

 呼び出されたら質問攻めで大変でしょうから、今のうちにゆっくりなさってください」


 なんだか、不安になる言葉を残していった。

 ……大変になるのか。


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