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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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大人たちの冗談

 ある程度、事前情報が共有されていて、俺への質問は確認作業みたいなものだった。

 昨日、王城に着いた途端、エリオットが呼び出されていたもんな。


 レスタール王国の国王と冒険者ギルドの支部が手を組んで、国全体で冒険者を蔑ろにする雰囲気が定着している。

 冒険者ギルド本部への虚偽報告。本部からの支援を適切に配布せずに横流し。

 Sランク冒険者へ適切な治癒を施さず、廃業に追い込んだ罪。


 そんな、政治的な話が次々と出てくる。

 輸出入を制限して、経済的に追い詰めるという案が浮上した。

 それによって自ら反省するように、チャンスを与えたらどうかと言う。



「あの!」

 俺は思いきって手を挙げた。

「素人の意見で、あれなんですが……俺の個人的なお願いですけど。

 レスタール王国への経済的な圧力は、庶民に影響が出るのでやめてほしいです。

 武力の戦争よりはましだという話だと思います。

 だけど、たぶん王侯貴族は平民に無茶を言って、自分たちの暮らしを変えようとしないのではないでしょうか」


 以前ホテルのレストランで働いていたとき、お客様の会話が聞こえてきたが、はっきり言ってひどかった。

 特権意識が強く、平民を奴隷と勘違いしているような貴族もいるのだ。


「王族と暴利をむさぼっている者だけ排除して、いい感じの国にできないでしょうか?」

 要はそういうことだろ? 違うかな?



 そんなことを思いながら発言したら、目を丸くされた。


「……確かにそうだな」

「民が苦しんでもなんとも思わない連中には、制裁にならないか」

「もう、それだけで統治者失格ですよね。導くのではなく、搾取するだけなんて」

「だけど、現実問題、武力衝突の前にできることって、これくらいしかないだろう?」


 いろいろな人が雑談のように話題にしている。

 とりあえず、怒られなくてよかった。即、却下されてもいない。

 平民としては、日々の生活が大切なんだ。


「ははは。Sランクが五人もいれば、王城を制圧できそうだけどなぁ」

 鷲獣人のバスラが笑った。


「さくっと暗殺したり……ですか?

 国際的な組織ができる前なら、それですんだかもしれませんね」

 誰かが、お芝居のようなことを言い出した。


「ですから、我々が目を光らせて武力衝突を回避させているわけです」

 国際治安機構の人が、自己主張した。


「国際機関があるのは頼もしいですけど、時間がかかりますよね。

 何年もかけて審議している間に、アーデンさんのような被害者が出るかもしれない。

 レスタール王国は国際的に許されない罪を犯しているというのに……」

 王都支部のギルドマスターは、悔しそうだ。

 もしかしたら、アーデンと面識があるのかもしれない。


「国の主権は尊重するという原則がありますからね」

 国際治安機構の人が言い、誰かが「建前はそうでしょうけど」と苦笑している。



「これは雑談ですけど――国王を引きずり下ろしたとして、処刑か幽閉といったところでしょう?

 自分たちがやったことがいかにひどいか、見せつけたいです。

 非戦闘員の暮らしを守るために、冒険者たちがどんなふうにモンスターと戦っているか。

 戦うための環境を整備しなかった、自分たちの罪に向き合ってもらわなければ、納得できない。

 たとえ理解する脳みそがないとしても……」


 冒険者ギルドの本部から来ている人が、口角は上がっているのに笑っていない顔で言った。


「処刑なんて一瞬で終わるじゃないか。

 それなら、最前線で便所掃除させたらどうだ?

 あれは重労働だし、精神的にくるものがあるぞ。

 冒険者の討伐がいかに過酷か教えてやろう。そんな中で王位や爵位など、くその役にも立たないと」

 バスラは砕けすぎる口調になり、嘲るように言う。


 司会の宰相補佐が「やれやれ」というように苦笑いして、俺に話しかけた。


「トーマ君。腕力、魔力で多種族に劣る人族が、なぜ国の代表なのかわかりますか?

 力任せに押し通すのではなく、話し合って妥協点を見つけるのが得意だからです。

 勢いだけで動けば、どこかで計算外のほころびが生まれる。恨みの連鎖が始まります」


 他の人たちもしゃべるのをやめて、聞いている。


「だから、独裁者や偏った正義で暴走している国でも、内政干渉は好ましくない。

 冒険者ギルドは国から干渉されない代わりに、国への干渉も御法度なのです。

 戦争で傭兵ギルドに依頼を出すことは許されても、Sランクの冒険者を戦争に参加させることは禁止されています。

 ――だから、今の会話は質の悪い冗談です。本気にしないでくださいね」


 妙に迫力のある、笑顔だ。


「あ、はい」

 他言無用、ということですね。言いふらしたりしませんから、脅さないで。



「そうそう。ぬいぐるみを運搬する道中で襲ってきた中に、レスタール王国の騎士がいました。

 身辺気をつけてくださいね」


「国際機関が動き出したのだから、トーマ君を消したって遅いのにね」

 誰だかわからなかったが、物騒なことを笑って言った。


 おい、勘弁してくれ~!


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