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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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四人部屋

 迎賓館では、四人部屋にルナたち三人と女性冒険者のメルティナが割り振られていた。いわゆる女子部屋だ。

 俺がそこに入るわけにはいかない。


 サァラが「フォンの抱き枕、あたいの役目かも~」と歌うように言いながら、部屋に入っていった。

 なんだよ。さっきの添い寝の話は、からかわれただけか。まったく、もう!

 ――いつもの俺たちの調子が戻って来たな。


 緩みそうになる顔を引き締めて、平静を保たなくては……。



 俺も四人部屋で、「光牙の道標」のダルグ、オルド、ベルーフと一緒だった。

 三人とも、領主が用意した制服を脱いで私服になっている。格式張った迎賓館に、ラフな冒険者の私服姿は違和感がある。

 でも、俺もこちら側の人間なんだよな。


「あ、お邪魔します」

 部屋に入るときに、思わずそんな言葉が出た。

 冒険者パーティーに別の人間が混じると、なんとなく異物感が生じる。きっと、女子部屋のメルティナは俺と逆だろう。


「おう。謁見、お疲れさま」

 リーダーで犬系獣人のダルグが、真っ先に返事をしてくれた。

「緊張して、疲れました」

 正直に答える。できることなら、二度とやりたくない。


「フォンのサークレットの話は出たのかな?」

 魔法使いのオルドが探るように訊いてきた。


 答えていいのかな。公開していい情報と秘匿しなきゃいけないものの区別がつかない。

 今後の予定なら、明日説明されるか。

「魔塔で調べてくれるそうです」


「おお、国の研究機関か。設備や資料が揃っているのだろうな」

 いかにも羨ましそうな声だ。そういえば、旅の間も、フォンのサークレットを調べたがっていたかもしれない。

 話題を変えるか。


「エリオット様から明日相談されると思いますが、皆さんはこの後どうするご予定なんですか?

 護衛任務を継続するか、本拠地に戻るか……とか」

 俺自身もどうなるかわからないけど。


「ああ、エリオット様の行動次第だな。本拠地をトゥルメル領に変えるから、一緒に戻った方が話が早いだろ」

 ダルグがそう言った。


 行きに隣の領主と揉めたときに、そんな話が出ていたな。

「本当に、変えるんですか」


「がははは。

 この護衛任務を受けるときに、もう移籍することは決めていたんだ。あの領の寂れ具合を見ただろ?」

 ドワーフのベルーフは、何か道具を磨きながら笑っている。

 こういうまめなところは尊敬できるのにな。


「どうやって切り出すかを考えていたから、ちょうどよかった」

 ダルグがそんな裏事情を暴露した。


 冒険者も政治的な駆け引きをするんだな。

 Aランク冒険者が領内にいるかどうかは大きい。そういう目も養わないといけないのか。


 それに比べると、Sランクのアーデンの無防備さは際立っていた。

 同じ村出身で、自分のクランを作った出世株だった。片足を失ってクランを解散するときに、クランのメンバーにもカモにされていたことが判明した。

 あの人は、人が好く、田舎の人間の距離感を持ち続けていた。裏表がないというのは長所でもあるが、自衛できないのに才能だけあるのは危険なんだな。



「メルティナと部屋を交換しなくていいのか?」

 ベルーフが、またもやデリカシーのない発言をした。


 聞こえないふりをしようかな。

 あれ? 光牙の道標って、逆ハーレムパーティーじゃないか。


「あの、メルティナとみなさんって、恋愛関係にあったりするんですか?」

 つい直球で訊いてしまった。疲れていて配慮できなかった。ちょっと踏み込みすぎたかも?


 一瞬キョトンとしてから、三人は腹を抱えて笑いだした。


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